「ひとつ上のプロマネ。」にもっとも必要なものは、高い倫理性であり、倫理性こそが「ひとつ上のプロマネ。」のアイデンティティである。
「ひとつ上のプロマネ。」が倫理性を持つことの意味はよく考えてみる必要がある。
自身のマネジメントするプロジェクトが提供するサービスや商品、あるいはサービスや商品を提供する顧客に対して倫理性が必要なことはいうまでもないだろう。顧客の期待に反しないサービスや商品の品質を実現することが「ひとつ上のプロジェクト。」の最低条件である。
これは、顧客からは見えない部分においても同様である。顧客のいかなる視点にも耐えうるだけの品質を実現する必要がある。倫理性は絶対的な存在であり、その意味でいかなる手抜きもしないのが「ひとつ上」の証であるといえる。
一方で、顧客やサービスに対する倫理性にもまして重要なことは、自らへの倫理性である。「ひとつ上のプロマネ。」は自らへの高い倫理性を持っていなくてはならない。このことは上に述べたように人的サービスの実現において倫理性を重んじることであるとともに、常に全力を出し切り、その力を顧客やサービスへ注入できる状況を維持することを意味している。このことが何より重要である。
特に「ひとつ上のプロマネ。」が組織の一員として組織の規律に従う場合には、組織の規律と自らの倫理性の間でジレンマに陥ることが多い。このジレンマは克服しなくてはならないが、克服のためには自分自身に対して高い倫理性を持ち、常に全力を出し切れることが重要だ。
自分自身への倫理性を持つためには、
・自分の持っているスキルや知識を点検し、自分を知る
・自分の持っている能力を出し切る方法を知っている
・取り組む仕事や時間の使い方についてセルフコントロールをする
・自らの健康についてセルフコントロールをする
などが必要になるが、同時に、プロジェクトマネジャーとして、自分の専門領域においては常にどのような問題にも対処できる状態を維持しなくてはならない。
現在のような世の中で、常にどのような問題にも対処できるためには、まず、学習を怠らないことが重要である。自分の専門領域に新しいものが登場してきたら常にすばやく吸収する必要があり、そのためには、高い好奇心を持ち、客観的な目でものごとを眺め、高い学習能力を維持しておく必要がある。
この学習に対する意欲こそが「ひとつ上のプロマネ。」が持つべき倫理性の正体であり、「ひとつ上」であり続ける限り、持ち続けなくてはならないものである。
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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