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第7回 第6の現場力〜仕組み力(2008.03.31)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


前回は第5の現場力として、調整力を取り上げた。今回は、6番目の現場力として仕組みを作る力を取り上げたい。

◆マネジメントはリーダーシップと仕組み作り

さて、マネジメントとはリーダーシップと仕組みづくりである。リーダーシップは360度、すべてのステークホルダに対する影響を与えること、そして、仕組みづくりは管理の仕組み、コミュニケーションの仕組み、人を動かす仕組みなどさまざまな仕組みをつくることだ。プロジェクトマネジャーは仕組みづくりを軽視しがちだが、本来はリーダーシップよりはこちらの方が重要である。


◆なぜ、仕組みづくりが軽視されるか

仕組みづくりが軽視される理由は大きく分けると2つあるように思う。ひとつは仕組みはPMOがつくるものであり、プロジェクトマネジャーの仕事ではないと思っている人が多いこと。現実に、たとえば進捗管理の仕組みを取って見れば、組織のレビューからトップダウン的にやるべきことが決まってくるので、考える余地はないという意見もよく聞く。それからもう一つの理由は特にIT系プロジェクトに多くみられるのだが、行動重視の人が多く、仕組みをつくるよりも、リーダーやメンバーに直接コンタクトをして動かしていくことと好む人が多いことだろう。


◆プロジェクトの内部の仕組みを作るのはプロマネの仕事

まず、前者についてであるが、仕組みづくりはPMOの仕事というのはある意味であたっている。ある意味というのは、すべてのプロジェクトに共通のマネジメントの仕組みづくりはPMOの仕事である。たとえば、よく見かけるところでは、プロジェクトから上位組織への状況報告の仕組みとか、リスク識別の仕組み、変更管理の仕組み、品質保証の仕組みなどはPMOが作ることが多い。しかし、それ以外の仕組み、たとえばコミュニケーションの仕組みとか、パフォーマンス改善の仕組みとか、チーム内での協力の仕組みなどはプロジェクト内で作らないと誰も作ってくれない。

また、これらの組織的な仕組みに対応するプロジェクト内の仕組みは意外と決まっていないことが多い。たとえばプロジェクト状況報告を例にとれば、プロジェクトレビューに提出するプロジェクト報告を作るための日常活動の仕組みを決めているプロジェクトはあまり見かけない。レビュー日程が決まったときにプロジェクトマネジャーが慌ててつくるケースが多い。このように組織全体の仕組みに合わせたプロジェクト内の仕組みづくりもいうまでもなく、プロジェクトマネジャーの仕事である。


◆会議体について

ちょっと脱線するが、仕組み作りの中で位置づけの整理が必要なのがいわゆる「会議体」である。多くの組織では、PMOが会議体の設置のガイドラインを示し、プロジェクトはコミュニケーション計画で会議を計画している。しかし、会議体というのは仕組みではない。さまざまな仕組みを実現するための手段にすぎない。したがって、仕組みの中で会議体を使うのであれば、コミュニケーション計画として最低限、名称、目的(どの仕組みのための会議か)、開催頻度(スケジュール)、参加者、標準アジェンダ、会議としての意思決定レベル、会議に関わる情報配布、他の会議との関係については決めておくべきだ。ここまでできて初めて仕組み作りだといえる。


◆仕組みで人を動かす

次に、もう一つの問題について触れておく。この問題が最も起こりやすいのが、コミュニケーションの仕組みづくりである。たとえばこんなことを考えてみてほしい。プロジェクトマネジャーAがいて、メンバーB、Cがいる。コミュニケーションの仕組みというのはBとCのコミュニケーションの必要が生じたときに、Aが仲介しなくてもBがCにコンタクトし、コミュニケーションする、あるいはその逆が可能になるようなルールを導入することである。上に述べたようにここに入りたがるAが多いのだが、これはコミュニケーション実施に時間がかかるといった弊害の方が多いし、そもそも、これをやっている限り、コミュニケーションが活性化しない。また、チームビルディングもできないだろう。

僕の尊敬する学者の一人である一橋大学の沼上幹先生が、「マネジメントの基本は、内向きではなく、外向きでなくてはならない」と言っているが、コミュニケーションなどはまさにこれを考えるべきだ。プロジェクトを見ていると、チームコミュニケーションに力を注ぎ、外部とのコミュニケーションをその次にしているプロジェクトマネジャーは少なくない。チームコミュニケーションは仕組みづくりですませ、外部のコミュニケーションに時間を注ぐというのが現場力のあるプロジェクトマネジャーの行動である。

マネジメントとは人に関するものであるというのはドラッカーの有名な言葉だが、人が自然に動けるようにするものマネジメントであり、その意味で仕組みは非常に大切なものである。仕組みづくりの中核を担うようなプロジェクトマネジャーを目指してほしい。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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