◆クイズ
(1)コミュニケーション
(2)ネゴシエーション
(3)リーダーシップ
(4)セールス
の4つのうち、性質が違うものはどれでしょう?
多くの人が(4)と答えられたのではないでしょうか?そして(4)と答えた理由は、(1)〜(3)が人間行動を示すのに対して、(4)は業務を示すというものだったのではないかと思います。セールスというのは、そういうイメージの言葉であり行為でした。英語でsalesというとおもに車の販売を意味します。
ところが、いま、その概念が変わろうとしています。
◆ダニエル・ピンクの示した方向性
フリーエージェント時代、ハイ・コンセプト、モチベーション3.0と2000年になってから続々と新しいコンセプトを提唱し続けているダニエル・ピンクが昨年、「To Sell is Human」という本を出しました。直訳すれば、人とは売る存在であるとでも訳せばいいのでしょうか?この本で言っているのは、ビジネスマンは「売らないセールス」をしており、それが自分たちの仕事をする上で極めて重要だと考えているということです。
日本でも今年の6月に
ダニエル・ピンク(神田 昌典訳)
「人を動かす、新たな3原則 売らないセールスで、誰もが成功する!」、講談社 (2013)
というタイトルで翻訳出版されました。
フリーエージェントはまさにいま、注目されていますし、ハイ・コンセプトもそろそろ注目されるようになってきました。モチベーション3.0も注目されるようになってきています。ダニエル・ピンクは米国の状況を分析して、一歩先を示していますが、そこから5〜10年後に日本でも同じムーブメントが起こっています。今回のセールスもそんな感じがするテーマです。
◆肩書きが通用しなくなる時代
このテーマが重要な理由は、この本の訳者である神田さんが指摘しています。いわくあなたが○○商事、○○銀行に勤めているというと、肩書きがあなたを売り込んでくれるので、周りが持ち上げてくれた。ところがそんな時代は終わった。3年後にはそんな肩書きは役に立たなくなるだろう。その中で、外からの力を借りて自分が社会的に安定するのではなく、自分の中にある才能を活かして自分自身が社会の安定になることが求められるようになる
と指摘しています。
たとえば、多くのマネジャーが部下の自立を願っています。指示待ちではなく、自発的に考えて行動をしてほしい。実はこのような話は今に始まったことではありません。僕が新入社員として会社に入った当時から言われていたことです。にもかかわらず、今でもしっかりと問題として残っています。なぜでしょうか?
◆売込みができないと自立などできない
これを精神論だと思っている人が多いですが、自立するには不可欠な「活動」があります。それがセールス(売込み)です。売込みの活動をしない限り、自立などできません。
神田さんは企業の肩書きについての指摘をしていますが、これは企業だけの話にとどまりません。たとえば、あなたがマネジャーでプロジェクトからリアルタイムの報告を挙げてほしいと願っているとします。ちょっと前なら課長としてある種の尊敬をされていて、黙っていても報告をしてくれていたかもしれませんが、いまはまず期待できません。
ここでルールを作ってもあまり意味がありません。ルールを作って守るようなら、言われなくても報告をしてきます。しかし、ルールを売り込まない限り、報告してくれません。ルールだからと報告をしてくれても、意味のある報告にはならないでしょう。
こんな話は山ほどあります。ところが、売り込むにはどうすればよいかは意外とわかっていません。報告の問題であればルールを守れといったことをいうのが関の山です。
売込みの問題はいろいろな効果があります。本質は神田さんのいうように自分自身が安定になることです。すでに述べたようにそれが自立をもたらします。
◆ロール&レスポンシビリティを機能させるには売込みが不可欠
二つ目に挙げたいのが、ロール&レスポンシビリティの問題です。いうまでもなく、フラットな組織では不可欠な概念です。
肩書きのある中で、ロールという考え方を機能させるのは難しいものがあります。ひとつの例として年下の部下という話があります。外資系ではロール&レスポンシビリティという考え方が徹底していますので、年齢は関係ありません。ところが日本の企業では職位が上でも年下の部下は使いにくいという感覚があります。プロジェクトマネジャーのように、職位が上で、年齢も上の人をコントロールしなくてはならないというのは非常に難しいものがあります。
売込みはこの問題の解決になります。年齢や職位が上の人が使いにくい理由は、上に述べたように上の人のいうことは黙っていても聞くという発想があるからです。つまり、職位が上であればやれと言えばやるのが当然だという発想です。これをそのまま、ロール&レスポンシビリティに持ち込むと動けなくなります。そこで、発想を変えて、職位が上であろうが下であろうが、年齢が上であろうが下であろうが、やってほしいことを売り込むという発想を持つわけです。
◆売込みの本質は人を納得させること
売込むということは、人を動かすことにもっても近い行為です。人を動かすためには、説得したり、影響を与えたりするだけではなく、最終的に「納得させる」ことが大切です。
モチベーションの話と関連してきますが、よく相手を納得させないと、パフォーマンスが出ないという話があります。納得するということは、受動的な行動から、能動的な行動に変わることです。これがモチベーション3.0の話です。
セールスという行為をうまく行うことができれば、相手を納得させることができ、コミュニケーションやネゴシエーション、リーダーシップなどの行動で達成したいことはたいてい達成できます。
セールスや売込みという言葉から、ゴリ押し、押し売りといった言葉を連想する人は少なくないと思います。しかし、ダニエル・ピンクによると本当の売込みをしているセールスマンはそんなことは間違ってもしません。具体的にどうするかは紹介した本に書かれていますので、ぜひ、読んでみてください。
◆売込みは一人称
さて、お気づきの方もあると思いますが、売込みと言うのは一人称の行為です。部下を売り込む場合も、売込みを行うのはあなたです。
自分が売込んだものは自分で責任を取ることになります。実は売込みが苦手は理由はここにあるのではないかと思います。しかし、売込みができれば、他人に依存することなく、安定し、それがあなたの周囲を安定させます。
社会的立場を超えて、売込みをすることは抵抗がある人が多いと思います。しかし、売込みができれば、他人に依存する立場から自立することができます。売込みということを真剣に考えてみましょう。
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主催:プロジェクトマネジメントオフィス、共催:PMAJ
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1.コンセプチュアルスキルとは
2.本質を見極める
3.洞察力を高める
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好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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