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第69話:女性活用問題について考える(2013/07/05)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆ダイバーシティーは変わったか?

今回のPMスタイル考はダイバーシティの問題をすこし違った視点から考えてみたいと思います。アベノミクスの成長戦略の中に女性活用が示されていて、ダイバーシティーの問題がまた、議論されるようになってきました。

前に話題になっていたのはITバブルがはじけてから、リーマンショックのあたりまでだと思います。まあ、社会に閉塞感が出てくると女性活用という話は出てくるようですね。まあ、いろいろな意味で、元気を出すには使い易いテーマなのだと思います。

PMstyleの会員向けニュースレター「PMstyleプラス」でも、2007年に当時PMI(R)の東京支部の事務局長を務められていた永谷裕子さんにお願いして、

ITプロジェクトでのDiversity

という連載をしていました。この記事、今、読んでも面白いし、さすがに外資系の経験が長い方なので考えがよく整理されており、お薦めです。

それから5年以上たちますが、変わったような変わっていないような微妙な感じです。見えるところで変わったなと思うのは、ダイバーシティー研修をやる企業が増えてきたことくらいでしょうか。


◆管理職になりたくない女性社員という話

実は、もう一つ変わったな(浸透しつつあるな)と思うことがあります。それは、今回のアベノミクスの騒動の中で、「管理職にはなりたくない」という女性社員が目立つようになってきたことです。これは必ずしも、企業が管理職の半分は女性にするぞといっているのとは関係なく、現実に管理職になるという選択肢が身近になってきたことの表れだと思うのです。

ダイバーシティーの話は20世紀になってから始まった話ではなく、もっと古いです。総合職という制度を大手の企業が導入するようになったのが、1985年前後だと思いますが、最初に勤務した会社で、このころに大学院卒で総合職として入社してきた女性新入社員の指導員をしたことがあります。いまではなんでもない話ですが、当時は総合職という制度そのもののイメージがなく、せいぜい、転勤があるかないかくらいのイメージだったところに、初めての大学院卒総合職で、非常に困惑しました。

だたそこは大きな会社というのはよくできていて、指導員への指導というのがばっちりあり、今、女性社員のキャリア形成で言われているようなことは一通り教わりましたし、キャリアビジョンの話し合いもせよと言われていました。幸い(?)にも、育成の成果をみることもなく、僕は会社を辞めたのでその女性の今はしらないのですが、その女性は「管理職なんかになりたくない、ずっと技術的な仕事をしたい」と言っていました。


◆管理職になりたくないは女性の話か?

このことについてこの記事でどうこういうつもりはありません。っていうより、興味はありませんという方が正確ですね。なぜ、こんな話を持ち出したかというと、そもそも、この管理職になるならないの話は、男女とは関係ない話だと思うということを言いたかったからです。

総合職に限っていえば、管理職に女性が少ないのは元をただせば採用の問題で、一般社員の比率が違うのだから管理職の比率が違って当たり前です。なので、15年後に管理職の数を男女半々にするというのは分かるのですが、2020年とかいわれるとほんとかよと思ってしまうわけです。

プロジェクトマネジメントの仕事をするようになって気が付いたのですが、プロジェクトマネジメントの研修をやると20名のクラスで女性はせいぜい、1〜2名です。会社にもよりますが、何年か研修をやらせていただき、結局、女性はいなかったという会社もあります。逆に、弊社が公開講座でやっているプロジェクトマネジメントオフィススタッフ向けの研修には女性がかなり受講されています。多いときには半分近いこともありました。


◆女性は適材適所、男性は無理やり

これが適材適所なのかどうかは分かりません。ただ、一つ言えることは、プロジェクトマネジメント研修に出てくる女性はプロジェクトマネジャーに向いている人ばかりです。男性は半分くらいはこの人にプロジェクトマネジャーをやらせるのかという人がいるにも関わらずです。

ここが女性活用問題の一つのポイントで、上に述べたように採用の段階で男女比が違うとは思いますが、それを抜きにしても、男性は無理にでも、女性は適材適所というマネジメント(人事)が行われているように思います。そこにもってきて、女性活用の議論は女性も無理にでもというマネジメントをすると宣言しているに等しいので、当然、反発は出てきて当たり前でしょう。

つまり、管理職の問題はそもそも、男女の問題として考えると話がおかしくなるわけで、管理職にふさわしい人を管理職にするというだけの話であるべきです。


◆男女という抽象化レベルについて

一般的にいえば、男女というのは一つの抽象化レベルです。このレベルで考えるべきことも当然あります。ただ、このレベルで考えると本質がわからなくなることもあります。管理職への登用の問題はそういう問題です。

考えるべきことは過去はともかく、これからは能力のある人を管理職にするように変えていくことであって、男女比が半々になるか、今の通りになるかは結果にすぎません。つまり、できる人かどうかというレベルに抽象度を上げてものごとを考えるべきなのです。

また、キャリアとしても僕が指導員をしていた女性のように男女関係なく、自分のキャリアビジョンというのがあるわけで、それを実現させるという考え方をすべきでしょう。


◆会社からみた育児と介護の問題

男女問題の原点になっている問題に、出産と育児の問題があります。この問題にしてもそうです。確かに出産は女性しかできません。しかし、出産することと仕事は直接は関係ありません。出産することによって、一定期間は働きたくても働けないという問題が起こります。だからといって、これを特別なことだとは考える必要はないように思います。

もう少し、抽象度を上げて問題を考えると、一つは社員の体調面の問題で思ったように働けない状況が出てくること、もう一つは社員の家庭環境の問題で会社が標準的に求めるような働き方ができないことの2つの問題があります。

このレベルで問題解決をしないと、会社としての問題は解決できません。原因が育児であろうが、介護であろうが会社や組織にとって起こる問題は同じで、併せて解決しないとどこかにひずみが生じるだけです。

実際に聞いた話ですが、育児休暇も介護休暇もある会社で、部下が育児休暇を申請したために、自分の介護に支障がでたとぼやいていた管理職がいました。こんなことが起こるわけです。授かった命を育てることと、自分を育ててくれた親の命を守ることと比較できるはずはなく、結局、組織の中の立場という理不尽な要素で判断せざるをえなくなるわけです。

直面した現実だけで解決しようとするとこうなるわけです。一旦、「社員の家庭環境の問題で会社が標準的に求めるような働き方ができない」ときにどうするかという問題として考えて、そのルールを現実に落とすことが必要です。


◆本質から考えると、、、

2つの例を挙げましたが、このように男女の問題は、本質的にはどういう問題かということを一度、考えてから判断をすべき問題です。

フェイスブックの最高執行責任者(COO)を務めるシェリル・サンドバーグさんが「経済成長のためには、まさに今男女の平等性を確保するよう社会の仕組みを変えることに取り組まなくてはならない」とし、以下の3点が重要だと指摘しています。

(1)男性、女性がこうあるべきというステレオタイプを取り払う
(2)企業の運営方針・実務を女性も働きやすいように変える
(3)家庭の中で夫婦が家事を分担する比率をバランスよくする
(日本経済新聞2013年7月2日)

まさに、そういうことでしょう。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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