◆成果の出せないメンバーをリスペクトするのか
一番最初にプロジェクトマネジメントの研修のテキストを作ったときに、チームマネジメントには、ダイバーシティとリスペクトという2つのキーワードを書きました。体罰がいろんなところで表にでてきて、その中でリスペクトという言葉が注目されるようになってきましたが、たまたま、PM養成マガジンの10周年記念のイベントで持論発表会をやったところ、リスペクトというキーワードがでてきて議論になったので、今回はリスペクトについて考えてみたいと思います。
持論発表会でのやりとりは、
メンバーをリスペクトするが、モチベーションを上げることはしない
という持論に対して、
モチベーションが低く、成果の出せないメンバーをリスペクトするのか
という質問が出てきました。
この議論が体罰の本質です。成果を出せない奴は尊敬に値しない、だから殴って分からせるのだ。少し乱暴ですが、体罰をする指導者の思いはそんなところだろうと思います。日本人が誰かを尊敬するというときには、尊敬に値する理由が必要なのです。スポーツではこれが勝利至上主義につながっていると思われます。
◆リスペクトとは
リスペクトというのはそういうものではありません。柔道でたまたまトップレベルの選手が訴えたので社会問題になりましたが、彼女らのように強い選手だけがリスペクトの対象というわけではありません。コーチは柔道に真剣に取り組んでいる選手は小学生であれ、すべてリスペクトすべき対象なのです。
つまり、何事においても成果を上げるかどうかと関係なく、真摯な態度で何かに向き合っている人たちはリスペクトの対象になります。何かは、スポーツかもしれないし、一生懸命生きていることかもしれません。
◆プロジェクトチームにおけるリスペクト
プロジェクトにおいても、一生懸命プロジェクトのゴールに向かって協力しているメンバーはそれだけでリスペクトに値します。大げさにいえば、メンバーの一人一人は一生懸命生きていて、その中でプロジェクトの仕事をしてくれているわけです。メンバーをリスペクトすることは、相手のプロジェクトにかける想いや人生を理解することになります。
リスペクトと評価は違います。評価は真剣にやっていようといまいと、どのような成果を上げたかでされるべきです。プロジェクトであれば、ゴールの達成にどれだけ貢献したがか評価の対象になります。評価が低いからといって、リスペクトできないというのはリスペクトの本質に反することです。
また、この話はプロセスを評価するという話ではありません。プロセスにしろ、結果にしろ、評価は評価であり、リスペクトするかどうかとは関係のない話です。
なぜ、プロジェクトではプロジェクトリーダーとメンバーやメンバー間のリスペクトが重要なのでしょうか?
◆リスペクトはコミュニケーションの基本スタンス
この問題はコミュニケーションに通じます。コミュニケーションがプロジェクトの基本であることは誰もが感じていることです。そこでいうコミュニケーションとは、単にホウレンソウのことだけを言っているわけではなく、相互理解を意味しています。相互理解がない限り、チームは機能しないからです。
そして、相互理解をするためには、相手をリスペクトする態度が不可欠です。相手をリスペクトしない限り、自分の目からみた捉え方しかできないからです。相手をリスペクトすることにより、相手の一挙一動の意味を理解でき、チームが機能するコミュニケーションが可能になります。
たとえば、期待に応えるような成果が出せないメンバーがいます。このままでいくと、チームとしての目標が達成できません。そんなときに、リスペクトがあれば相手の抱える問題を理解することができ、自然にそのメンバーの問題の解消の手助けができるでしょう。
たとえば、日本は女性が働きにくい国だと言われます。長時間残業など、組織に合せた働き方に一因があります。生活上の制約で、そのような働き方ができない人は「使えない」と言われます。ところがこれはおかしな話で、プロジェクトリーダーやメンバーがリスペクトしていれば、その女性の人生を受け入れることができるわけで、受け入れた上で、どのように仕事を分担しようかという話になるわけです。こういうコミュニケーションや問題解決がチームには必要になります。
その源泉がリスペクトというわけです。
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好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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