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第151話:コンセプチュアルスキルがマネジメントのクオリティを向上させる(2019/05/27)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆習熟度、コンピテンシー、ヒューマンスキル、センスといった説明

マネジャーとして同等な知識を持っている人のマネジメント行動が大きく違うことは珍しいことではない。なぜだろうか?

マネジャーとしての知識というのは非常に多様なので、プロジェクトマネジャーに限定して議論しよう。こちらは知識は明確だ。米国、欧州、日本など、地域によっていくつかの流儀はあるが、体系は違うが内容はほとんど同じだ。たとえば、、PMBOK(R)を知っている人、もっと限定すればPMP(R)の資格を持っている人と限定してもよいが、プロジェクトマネジャーとしての行動は異なるし、当然のことながら成果も違っている。

この違いを表すのにさまざまな説明がされている。たとえば、習熟度、リーダーシップ、コンピテンシー、ヒューマンスキル、センスなどほんとうにさまざまだ。それぞれの範囲も曖昧なのである要素の概念はあいまいであるが、いずれも妥当な要素であるし、ある程度違いの説明にもなっている。


◆PMstyleの事例

PMstyleではコンピテンシーを採用して、プロジェクトマネジャーの独自のコンピテンシーモデルを創り、強化を展開している。これは、PMI(R)のコンピテンシーモデルとは異なるものだ。実は、PMstyleとしては同じ考え方で、

・マネジャー
・エンジニア(設計)
・エンジニア(開発)
・エンジニア(セールス)
・マーケッタ
・研究開発者
・起業家
・・・

などさまざまな切り口のコンピテンシーモデルを提供しており、その一つとしてプロジェクトマネジャーのコンピテンシーモデルを位置付けている。これらは母体とする64種のコンピテンシーの中から必要なコンピテンシーを10〜20個抜粋し、モデル化して作られている。

ちなみにプロジェクトマネジャーのコンピテンシーモデルについてはこちらのページを参考にしていただければと思う。

PMstyleが考えるPMコンピテンシー(簡易診断は休止中です)


◆コンセプチュアルスキルが高い人はコンピテンシーも高い

PMstyleのプロジェクトマネジャーのコンピテンシーモデルで、コンピテンシーの高い人と低い人の違いはどういうものかを研究していた時期がある。その結果、思い当たったのが、コンセプチュアルスキルなのだ。

プロジェクトマネジャーでいえば、知識がある人(PMBOK(R)を知っている人)に限れば、コンピテンシーが高いことがより適切な行動ができる条件であるが、コンピテンシーが高い人に共通しているのが、コンセプチュアルスキルの高さである。ただし、これは必要十分k条件かどうかは今のところ分からない。少なくともコンセプチュアルスキルが高い人はコンピテンシーも高いことは確認できているが、逆は分からない。

PMstyleのコンセプチュアルスキルのモデルで説明すれば、

・知識→テクニカルスキルの高低に影響する
・コンピテンシー→ヒューマンスキル+マネジメントスキルの高低に影響する

という関係になっており、これら全体に影響を与えているのがコンセプチュアルスキルだと説明することができるだろう。

つまり、

・同じテクニカルスキルを持つ人
・同じヒューマンスキルを持つ人
・同じマネジメントスキルを持つ人

の実際の判断や行動に大きな影響を与えているのがコンセプチュアルスキルだといえる。


◆コンセプチュアルスキルが行動に与える影響の例

プロジェクトマネジャーを例にとると、たとえば、見積もりをするというテクニカルスキルがどれだけ優れているかは一般には経験だと言われるが、実は経験だけではない。大局的なものの見方をし、全体をいかに把握し、分析していくかによって見積もりの優劣が決まってくる。これは見積もり方法という知識(テクニカルスキル)に、コンセプチュアルスキルが加わることによって可能になる。

ヒューマンスキルについても同じだ。たとえば、分かりやすく説明するということを考えてみよう。誰もが分かるような言葉を使って、具体的に、丁寧に、かつ論理的に説明することはヒューマンスキルの問題である。しかし、もっとわかりやすくするには、一言でいえばどういうことかを示した上で、具体的にどういうことが考えられるのかを丁寧に説明していくともっとよく分かる。これは、ヒューマンスキルにコンセプチュアルスキルを加えることによって可能になる。

あるいは、メンバーの動機づけをするというマネジメントスキルを考えてみても、計画やスケジュールを示し、説得するというマネジメントスキルで動機付けできる。しかし、それぞれのメンバーの行っている作業がプロジェクトにいかに貢献しているかを具体的に示すことができる方がより強く動機づけできることは間違いない。これもマネジメントスキルにコンセプチュアルスキルが加わることによって可能になる。


◆行動のクオリティ向上にはコンセプチュアルスキルが必要

ここで注意しておきたいことは、コンセプチュアルスキルが低くても「それなり」のことはできる。それは業務を遂行するにも、コミュニケーションをするにも、人を動かすことにおいても同じだ。

しかし、エクセレントな行動をするには、コンセプチュアルスキルが高い必要がある。言い換えると、コンセプチュアルスキルが、テクニカルスキルによる業務、ヒューマンスキルによる業務、マネジメントスキルによる業務のクオリティを向上させるのだ。

これがコンセプチュアルスキルの位置づけである。最後にマネジメントスキルにコンセプチュアルスキルの強化がどのような影響を与えるかを考えてみよう。


◆コンセプチュアルスキルによるマネジメント行動のクオリティ向上例

マネジメント行動を構想、計画、問題解決、意思決定、対人行動、イノベーションの6つをとって考えてみるとそれぞれ以下のように変化する。前がコンセプチュアルスキルが低い場合のマネジメント行動、後がコンセプチュアルスキルが高い場合の行動だ。

<構想>
特定の部分に目が行き、部分最適な構想をする(コンセプチュアルスキル低)
 →状況を大局的に把握し、全体最適な構想をする(コンセプチュアルスキル高)

<計画>
成果が曖昧なままで計画をするため、網羅的な計画をする
 →成果を明確にし、成果に直結する計画をする

<問題解決>
目先の問題の解決に終始するので、類似の問題が再発する
 →問題の本質をとらえ、概念レベルで問題解決を行うため、再発しない問題解決ができる

<意思決定>
意思決定の方向性を見いだせず、情報収集に明け暮れ、決定できない
 →決めるべきところを明確にし、迅速な意思決定ができる

<対人行動>
人間関係に注意が集中し、結果として相手に影響を与えることができない
 →コミュニケーションを構造的に捉え、構造を活用した対人影響を与える

<イノベーション>
現場の課題解決に終始し、改善にとどまる
 →課題の本質を見極め、解決することにより、画期的なソリューションを生み出す

というクオリティの変化が起こる。


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 ※Youtube関連動画「コンセプチュアルスキルとは(前半)」「コンセプチュアルスキルで行動が変わる
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  【カリキュラム】                           
   1.コンセプチュアル思考のイメージ(アイスブレーク、講義)
   2.コンセプチュアル思考を実践してみる(個人ワーク)
   3.コンセプチュアル思考の原理を学ぶ(ワークの振返り、講義)
   4.コンセプチュアル思考の実際(講義)
   5.コンセプチュアル思考で変化に対応する
    (個人ワーク、グループディスカッション)
   6.コンセプチュアル思考で不確実性に対応する
    (個人ワーク、グループディスカッション)
   7.コンセプチュアル思考を応用した活動(まとめ)
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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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