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第135話:コンセプチュアルスキルの高いプロジェクトマネジャーとは(2018/08/10)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆コンセプト力でプロジェクトを動かす

PMstyleでは、コンセプチュアルプロジェクトマネジメントという名称で、イノベーションなどのように、オペレーションの範囲に留まらず、経営的な意思決定を伴うプロジェクトをコンセプチュアルに進めていくための方法論を提唱している。具体的な内容については、昨年日経BP社から出版した

コンセプト力でプロジェクトを動かす

を参考にしていただきたいと思うが、この本を読んで頂いた人からコンセプチュアルプロジェクトマネジメントではプロジェクトマネジャーにどのような資質を求めているのかと訊かれることがある。

今回のPMスタイル考はこの問題について述べてみたい。


◆連載「PMスタイル考」を始めた理由

そもそも論になるが、この連載を始めた理由は、当時(2010年)主流になっていた、とにかくQCDを管理するというプロジェクトマネジメントのスタイルに違和感があったことだった。もう少し、正確にいえば、プロジェクトの範囲として現場のオペレーションだけを考えるオペレーションマネジメントだという方向性に違和感があったのだ。

それから10年近くになるが、だいぶ世の中の認識が変わってきたように思う。プロジェクトでは重要なのはオペレーションだけではなく、その上位にある経営的、あるいは事業的な意思決定が、オペレーションに大きな影響を与えると考えられるようになってきた。

この背景にあるのは、ビジネスの不確実性が大きくなってきて、一方でスピードが求められる中で、現場(オペレーション)と経営・管理の疎通がうまく行かなければ、プロジェクトも事業もうまく行かないいう認識が強くなってきたことがある。

これはポートフォリオマネジメントであったり、プログラムマネジメントで解決しようとされているが、これらのマネジメントを導入しようとすると、プロジェクトのマネジメントのアプローチを変えなくてはならない。その方向の一つがコンセプチュアルにすることだと考えている。


◆WHYを重視したマネジメントとそれを遂行するマネジャー

このような考え方でプロジェクトをマネジメントしていくには、、何をやるか(WHAT)という従来のプロジェクトマネジメントの中心課題と同じくらい、なぜそれを行うのか(WHY)を重視する必要がある。そして、WHYからプロジェクトの本質を捉えて、本質からぶれないように常にWHATを変更していく必要があるのだ。

言い換えると、プロジェクトを概念的/構造的に捉えて、マネジメントをしていかなくてはならない。

問題はこのようなマネジメントを行うために、プロジェクトマネジャーはどうあるべきかということだ。このようなプロジェクトの進め方ができるプロジェクトマネジャーをコンセプチュアルなプロジェクトマネジャーと呼ぶことにする。

コンセプチュアルなプロジェクトマネジャーの在り方を考えるために、プロジェクトマネジャーの仕事の主要業務の中から

・要求定義
・プロジェクト定義(憲章)
・プロジェクト計画
・トラブル対応
・進捗管理/変更管理
・コミュニケーション

の6つを取り上げ、従来のプロジェクトマネジャーとの比較をしてみたい。


◆コンセプチュアルなプロジェクトマネジャーと従来のプロジェクトマネジャー

(1)要求定義
従来のプロジェクトマネジャーは、できるだけ精密に成果物(製品、システム)に対する顧客の要求を構想することが求められた。これに対して、コンセプチュアルなプロジェクトマネジャーは、
「顧客や組織の要求の本質を把握し、真の要求を見抜く」
ことを求められる。

(2)プロジェクト定義(憲章)
従来のプロジェクトマネジャーは、正確に把握した要求に対して、成果物に落とす方法を詳細に考え、プロジェクトとして定義することが求められた。これに対して、コンセプチュアルなプロジェクトマネジャーは、
「顧客や組織の要求を実現するために何が必要かをさまざまな視点から考え、プロジェクトの目的を決める」
ことを求められる。

(3)プロジェクト計画
従来のプロジェクトマネジャーは、成果物の開発を合理的に行う計画をすることが求められた。これに対して、コンセプチュアルなプロジェクトマネジャーは、
「プロジェクトの目的(本質)を考え、目的の実現を最優先した計画をする」
ことを求められる。

(4)トラブル対応
従来のプロジェクトマネジャーは、問題現象を明確にし、素早く問題の解決に努めることが求められた。これに対して、コンセプチュアルなプロジェクトマネジャーは、
「問題の本質をとらえ、概念レベルで問題解決を行い、トラブルを再発させない問題解決を行う」
ことを求められる。

(5)進捗管理/変更管理
従来のプロジェクトマネジャーは、情報収集を徹底し、素早く判断し、プロジェクトを進めていくことが求められた。これに対して、コンセプチュアルなプロジェクトマネジャーは、
「プロジェクトの目的(本質)を実現するために計画変更を常に意識し、迅速な意思決定をする」
ことが求められる。

(6)コミュニケーション
従来のプロジェクトマネジャーは、人間関係に注意を集中し、相手との良好な関係を構築することができない。これに対して、コンセプチュアルなプロジェクトマネジャーは、
「コミュニケーションを構造的に捉え、構造を活用した対人影響を与える」
ことが求められる。


◆兼用できない

このように、オペレーションの範囲を超え、経営的な意思決定までを対象とする不確実性の高いプロジェクトを進めて行くためにプロジェクトマネジャーに求められるものは従来とは異なる。この違いは、表面的にはちょっとした違いだが、本質的な違いであり、どちらか一方で兼用できるものではない。

従って、実施するプロジェクトがどのような性格のものか、どのような範囲のものかをきちんと見極め、適切なプロジェクトマネジメントを行う必要があるといえる。


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   3.コンセプトを実現する目的と目標の決定
   4.本質的な目標を優先する計画
   5.プロジェクトマネジメント計画を活用した柔軟なプロジェクト運営
   6.トラブルの本質を見極め、対応する
   7.経験を活かしてプロジェクトを成功させる
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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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