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第126話:プロジェクトチームがコンセプチュアルであるとはどういうことか(2017/08/10)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆プロジェクトは具体化してできる

プロジェクトマネジメントでは、やらなくてはならない作業の大枠をプロジェクトとして決め、実際の作業をどのように行うかは担当のチームや担当者が決めて行うという方法で計画をつくり、作業を進めていく。

さらに遡れば、プロジェクトの目標となる予算やスケジュール、あるいは品質基準はチームで共有され、ここからプロジェクトの計画に展開して行く。

そして目標は目的を具体化する形で決められ、目的は戦略から決まってくる。

つまり、戦略、目的、目標、プロジェクト計画、作業計画の間には

戦略
 → (具体化) →目的 
  → (具体化) → 目標
   → (具体化) → プロジェクト(マネジメント)計画
    → (具体化) → 作業計画


という関係があり、最終的にはプロジェクトで行っている作業は何らかの意味で戦略実行のための作業になっている。これがプロジェクトマネジメントの原理だ。

これから分かるように、プロジェクトは戦略を具体化してできているわけだ。

この記事では、上位にあるものを上位概念と呼ぶことにする。目的の上位概念は戦略、目標の上位概念は目的、計画の上位概念は目標ということになる。

さて、以上を前提にしてコンセプチュアルなチームの話を進めていきたい。


◆ほかにもさまざまなやり方がある

以上のようなプロジェクトマネジメントの原理を機能させるには、上位下達で、上位組織が決めた上位概念をプロジェクトチームにしっかりと伝え、プロジェクトチームが遵守していくことが不可欠だと考えられている。

ただし、ここで注意する必要があるのは、既に述べたように、目的から作業計画まですべては戦略から具体化して作られていることだ。具体化しているということは、選んだ意外にも進め方があることを意味している。

例えば、あるメーカーが戦略として「10年先につながる顧客との関係構築」を掲げている中で、新商品開発のプロジェクトに取り組んでいるとしよう。このプロジェクトでは、10年後にも受け入れられる商品の開発を目的とした。

これがこのプロジェクトなりの戦略の具体的な行動化になるわけであるが、これが絶対的に正しいというわけではない。例えば、

・顧客との関係維持に重点をおいた商品の開発
・ライフサイクルを重視した商品の開発

なども戦略にかなった目的だといえよう。つまり、上位概念を具体化して展開するということは、さまざまな答えがあるわけだ。これは作業計画に落とし込むところまで、すべての関係でいえる。


◆上位組織と合意する意味

そこで、通常は階層を分けて合意をしていく。戦略から目的、目的から目標であればプロジェクトマネジャーとプロジェクトスポンサーが合意をした内容に定められる。同様に、目標からプロジェクト計画への落とし込みはプロジェクトマネジャーとチームリーダー、プロジェクト計画から作業計画はチームリーダーとメンバーの間で行われるのが一般的だ。

重要なことはこれらの合意はあくまでも権限移譲を前提としたものであり、基本的には下位側が決定したものを「確認」するための行為だということだ(実際には「承認」としている組織もあるがが、これは組織文化の問題だ)。

このように考えると、プロジェクト成功のポイントになるのは、上位概念を具体化して考えられる複数の案の中から、如何に適切なものを選ぶことができるかだといえる。このためには、直接の上位概念の意図を考えるだけではうまくいかない。

例えば、作業計画を作る際にどういう優先順位で行うかを考えるにはプロジェクト計画以外に目標設定や目的の設定根拠を考え合わせる必要がある。

そこで問題になってくるのは、「本質」である。コンセプトといってもいいだろう。


◆本質を共有するコンセプチュアルなチーム

プロジェクトの本質がどこにあるか、何なのかを把握することよって、初めて上位の概念に適した目的/目標/計画を適切に選択することができる。言い換えると、プロジェクトを成功させるには

プロジェクトや業務の成果の本質をチームの全員が共有し、それぞれのメンバーがそれを実現するために自分のすべきことを考え、行動していく

ことが不可欠なのだ。このようなことを実現しているチームはコンセプチュアルなチームと呼ばれる。

もう一度、上の例に戻ってみよう。まず、問題になるのは

「10年先につながる顧客との関係構築」

という戦略の本質は何かということだ。

プロジェクトマネジャーがこれをどう考えるかによって設定される目的が変わる。例えば、「展開する商品の機能にある」と考えるなら、「10年後にも受け入れられる商品を開発する」ことを目的とするだろう。「顧客とのコミュニケーションにある」と考えるなら「顧客との関係維持に重点をおいた商品の開発」にするだろう。

同じように、目的から目標に落とし込んでいく際にも戦略の本質を考慮する必要があるし、目標から計画に落とし込んでいく際にも同様だ。商品の機能にあると考えれば、目標として品質が重要になってくるし、計画としてテストが重視されるだろう。


◆上位概念を本質を考えながら具体化していく

このようにプロジェクトは本質を考えながら上位概念を具体化して定義する。

プロジェクトは権限委譲で成り立つが、権限移譲をするためには、このようにチームがコンセプチュアルであることが前提になるわけだ。そのために重要なことは

・プロジェクトの本質を共有する
・コミュニケーションにより常に具体的な計画が本質と整合していることをチェック
する

の2点にあると言える。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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