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第3話:変容を求められるリスクマネジメント(2009.10.30)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆リスクマネジメントの目的はリスクに強くなること

リスクマネジメントは、多くのプロジェクトマネジメント導入企業がもっとも重視しているマネジメント活動です。しかし、最近、よく何のためにリスクマネジメントをやっているのだろうと感じることがあります。

リスクマネジメントは、初期においてはプロジェクトマネジャーだけではなく、体系的な分析のできるPMOや、経験の豊富なステークホルダが一緒にリスクの分析を行うことにより、プロジェクトのリスク対応能力を上げることに目的があります。

そして、このような「経験」を通じて、プロジェクトマネジャーやプロジェクト、ひいては、組織がリスクに強くなることを目指すものです。


◆リスクに強いという意味は

「リスクに強い」という意味は、リスクを早期発見して、早期対処をするという方向にどんどん進んでいます。これ自体が悪いことだとは言いませんが、考えるべき点はあります。何でしょうか?

問題はコストにあります。リスクに対してきちんと対応しようとすればするほど、コストが大きくなります。一方で、プロジェクトのコスト(原価)への制約はどんどん厳しくなってきています。

このような中で、リスクマネジメントのゴールは徹底的にリスクをつぶすことではなく、トラブル予防的なリスク対策とコストのバランスを適切なものにし、その中で、リスクの被害を出さないことだと考える必要があります。

◆リスクに対する頑強さを持つには

このような考えを実現しようとすると、予防と同時に、リスクに対する頑強さ(ロバストさ)を持てるようにしていく必要があります。

リスクに対するロバストさを持てるようにするには

・失敗から学ぶ
・単純化を許さない
・現場を重視する
・専門性を尊重する
・復旧能力を高める

の5つにポイントがあります。

一番目の失敗から学ぶことは、よく言われることです。具体的な方法は割愛しますが、もっとも重要なことは、「失敗を失敗として認める」ことです。これが難しいところです。

単純かを許さないというのは、いろいろな行動ルールに対して、きちんとその意味や目的を理解し、例え、効率がよくなるとしてもそれを崩さないことです。例えば、あるプロジェクトはプロジェクト作業の繁忙さを理由にして、コミュニケーション計画で決めていた定例のミーティングを電子メールによる報告に変えました。この結果、あるチームの段取りの変更情報を見落とし、1週間ほどの手空きを作ってしましました。これなどは、典型的な単純化の弊害です。

三番目は現場の情報=事実に基づいてものごとを考えることです。これは平時は当たり前で誰でもできることですが、トラブルのような緊急時には以外と難しいものです。

四番目は、緊急時はマネジメント的な判断をせずに、できるだけ専門的な意見を尊重します。よくトラブルが起こると、組織ガバナンスの立場から上の人間が動こうとするケースが多いですが、これはトラブルを増幅する可能性がありますので、気をつける必要があります。

最後はリカバリーの能力を高めることです。これは説明の必要はないでしょう。

◆変容を求められるリスクマネジメント

冒頭に述べたようなトラブル予防的なリスクマネジメントをあまり長期にわたって組織的に取り組んでいると、やがて、プロジェクトマネジャーの思考停止を生み出す危険があります。一時もはやく、トラブル予防的なリスク対策とコストのバランスを考えたリスクマネジメントに変容させていく必要があります。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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