第1回 プロジェクトマネジメントオフィスのメリットと効果(2007.05.28)
■PMOの3つのタイプ
プロジェクトマネジメントオフィス(PMO)のタイプは大きく分けると3つあります。
図:PMOの種類
一つ目は企業のプロジェクトマネジメント戦略を背景に、その戦略実現を目的としたサービスを全社に提供することをミッションとするPMOです。このPMOの主な役割は、プロジェクトマネジメントの手法を導入する、ツールを導入する、標準化を行う、ポートフォリオを導入する、といったもので、コーポレイトPMO(CPMO)、エンタープライズPMO(EPMO)などと呼ばれます。
二つ目は組織内の特定の機能を果たすPMOです。最もよく見かけるのはリソースインテグレーション機能を果たすPMOですが、このほかにも品質マネジメントや、調達マネジメントなどの機能を果たすことも多いようです。このタイプのPMOは機能型PMOと呼ばれることがあります。
このようなタイプのPMOの実現方法はさまざまです。
もっとも多いのは、事業部やリージョンなどの特定の組織において、CPMOの戦略実行の際に、戦術を担当する組織として作るケースです。このようなPMOは、CPMOの戦略の自部門での展開のプラニング、標準やツールのカスタマイズなどを行います。また、部門でのベストプラクティスを作って展開しているケースも多く見受けられます。いわゆるPMOという言葉はこのタイプのPMOを指すことが多いようです。
もっと現場に密接したPMOとしては、手法や標準、あるいはツールを使ったプロジェクトマネジメントのオペレーションの支援をするPMOがあります。支援の仕方も、コンサルティングの形もあれば、計画やプロジェクトのレビューといった形で行うこともあります。また、プロジェクトマネジメントの監査を行い、標準どおりにプロジェクトマネジメントが行われていることを確認するような役割を果たすケースもあります。このようなPMOはプロジェクトサポートオフィス(PSO)と呼ばれます。
さらにもっと現場密接型としては、プロジェクトに参加してプロジェクトマネジメントの一部を担当するようなPMOもあります。プロジェクトオフィスという言い方をするPMOがこれです。このタイプのPMOの場合、計画書の作成などのドキュメントワーク、コミュニケーションマネジメントなどを担当するケースが多いようです。
三番目のタイプは、顧客など、外部組織のコントロールやコミュニケーションの推進を促進するPMOです。例えば、SI企業などが、同じ顧客と複数のプロジェクトを実施していく場合に、テンポラリーな組織としてプロジェクトマネジメントオフィスを設置します。このタイプのPMOは多いようです。このタイプは外部PMOと呼ばれます。
一口にPMOといっても上のような種類があることを考えてみますと、PMOの設立に対してどのようなメリットがあるかということも少し整理して考える必要があります。ここでは、現場レベルの話と経営レベルの話しに分けて考えて見ましょう。
■現場レベルのPMOのメリット
まず、現場レベルの議論です。現場レベルで、PMOが効果が出るかどうかは、現場の抱えるプロジェクトマネジメントの問題に対して、PMOがどれだけ適切な問題解決手段になっているかに尽きると考えられます。一般的に期待しているのは
・プロジェクト計画の高品質化
・リソース確保の迅速化
・経験を踏まえた問題解決
・コミュニケーションの活性化
・リスクの早期発見
などです。
■経営レベルのPMOのメリット
経営レベルで共通的に見られるメリットには以下のようなものがあります。
・プロジェクトマネジメントオペレーションの標準化
・企業として全体最適を実現できる意思決定
・リソースの有効活用
・品質の保証されたプロジェクト情報への早いアクセス
・エグゼクティブ(マネジメント)サポートの軽減
・現実的な業務プライオリティの運用
・リーダー人材、および、将来的な経営人材の育成
などをあげることができるでしょう。
逆にいえば、効果的かどうかというのは、これらのメリットが自社の経営、あるいは現場マネジメントとして大きなメリットになるかどうか次第だといえます。
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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