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【PMOコラム31】PMOマーケティング(2007.10.15)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆定着化サイクルのコラムに戴いた意見

7月9日のコラムでプロジェクトマネジメントの定着化サイクルとして

通知 → 教育 → 奨励

というサイクルが必要だという話をした。この中で、プロジェクトマネジメントの定着化にマーケティングの手法を持ち込んで話をした(実際に、弊社はそういうコンサルティングを行っているのだから当然!)。これに対して、この3ヶ月くらいの間に何人ものPMOの方から懐疑的な意見を戴いた。このメルマガは読者数は2000名弱と少ないのだが、しっかり読んで戴いている方が多く、うれしかった。実は、このような状況に対する偽りのない第一印象はこれ。ただ、僕にも思うところがあるので、今回は意見を整理し、それに対する意見を書いてみたい。

戴いた意見を整理するとおおよそ、以下の3点に集約される。

(1)まず、PMOの顧客は、プロジェクトマネジャーなのか、組織なのか

(2)プロジェクトマネジャーを顧客だと考えた場合、組織としてこうしてほしいというのが入ってくるので、100%顧客のニーズにこたえるということにはならない

(3)組織のニーズの入った標準やツールである限り、彼らがもろ手を挙げてそれを使うということにはならないし、プロジェクトマネジャーにとってのメリットも出しにくい。


◆そもそも、プロジェクトマネジャーとはどういう立場か

まず、基本的な認識として、プロジェクトマネジャーは経営組織の中でどういう立場なのかを考えてみる必要がある。9月7日にブログに以下のような記事を書いた。

プロジェクトマネジャーになるということ

この記事に書いていることが著者の考えである。一口でいえば現場を代表するリーダーではなく、経営を代表するリーダーである。

もちろん、これが一致するのがもっとも望ましいし、このような認識をすることはあまり望ましいものではないという考えも同時にもっているが、現場の立場でものを考えればよい立場ではないということを明確にするために、敢えてこういうものの言い方をしたい。

と同時に、プロジェクトマネジャーの標準やツールありきで、このサイクルを回していっても効果は薄く、自分たちがプロジェクトマネジャーの立場で彼らでは発想できない標準やツールを提供していくことが成功の秘訣であることを述べた。

ただし、現場にいて、現場を取りまとめていくという立場はある。したがって、マネジメントだけではすまない部分もあり、リーダーシップの発揮が求められる部分もある。

まず、これが一点目。


◆PMOにとってはプロジェクトマネジャーも組織も顧客

次にそのように考えた場合、プロジェクトにおいては、プロジェクトマネジャーが経営側の利益代表であり、そもそも、顧客がプロジェクトマネジャーか、組織かという命題の立て方そのものがおかしいのではないかと思う。顧客はいうまでもなくプロジェクトマネジャーであり、その背後には顧客としての組織があると考えるのが正しいだろう。

言い換えるとこの命題は、プロジェクトマネジャーを現場の利益代表だと考えているので発想するわけで、PMOはそこを改めていくべきだ。

さて、そこで、どうすればつかってもらえる標準やツール(以下、サービス)が提供できるかという話だ。7月9日のコラムで書いたマーケティングの話になる。このコラムで3つのサービス開発の方法があると説明した。プロダクトアウト、マーケットイン、マーケットアウトである。


◆PMサービスにおけるプロダクトアウトとは

説明が不十分だったようなので、具体的な例で説明する。プロダクトアウトという方法は、PMOが普段の活動の中で必要だと感じているサービスを提供していくという方法である。組織側の立場に立っていろいろなサービスを提供していくというのはほとんどプロダクトアウトになると思われる。これでは、ほとんど、受け入れられるサービスができないと思われるが、PMOのサービスというのは本質的にそういうものだと思っている人も少なくない。

つまり、自分たちは組織の代理人であり、組織の代わりにプロジェクトマネジメントに関するガバナンスを持っており、それを行使することが使命だ。要するに、ごちゃごちゃ言わずにいうことを聞けという考え方。

これは一理あるのだが、必ずといってよいくらい、事業ガバナンスとのコンフリクトが起こる。つまり、言うことを聞くのはよいが、もし、それで儲からなかったら誰が責任と取るのかという議論の中で、いろいろな問題が起こる。


◆PMサービスにおけるマーケットイントとは

次に、マーケットインという考え方。これはプロジェクトマネジャーのニーズを十分に聞き、それに対して、応えていくことを基本としたサービスの提供方法である。これは一見正しいように見えるかもしれないが、プロジェクトマネジャー自身が現場の利益代表であるとそんなに話は単純ではない。当然、ニーズに応えることができないケースが出てくるだろう。


◆マーケットアウトがすべてを解決する

最後がマーケットアウト。実は、申し訳ないことにこのコラムで次回説明するといってしないままになっている。マーケットアウト戦略は、PMOがプロジェクトマネジャーの立場でプロジェクトマネジャーが発想しない手法や標準を創り、それをサービスとしてプロジェクトマネジャーに提供していくことを意味する。

実は、上に述べたいろいろな問題を一挙に解決する秘訣はここにある。PMOがマーケットアウト戦略をとり、プロジェクトマネジャーの立場で、組織が満足する方法を考案し、サービスとして提供していくことこそが、PMOの成功要因である。

弊社ではこのようなマーケティングをPMOマーケティングと呼んでいる。PMOマーケティングができれば、(1)〜(3)の問題が一挙に解決するだろう!


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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