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【PMOコラム24】プロジェクトマネジメントの定着化(2007.07.02)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆問題を複雑に考えていないか?

仕事柄、多くのPMOとお付き合いをしている。その中で常々感じているのが、プロジェクトマネジメントの導入という問題を複雑に考えすぎているのではないかということだ。

導入した手法や標準が使われないという問題と、マネジメントとして何をすればよいかという問題を混乱していため、どんどん深みにはまっているようなケースをよく見かける。

典型的パターンに

 手法を導入した
   → なかなか実践されない
     → 原因を分析すると確かに一理ある
       → では、その原因を解消する手を打とう

というパターンがある。例えば、

 見積もり標準を作った
   → あまり使われていないようだ
     → 精度がイマイチだというのがプロマネの評判
       → もっと精度の高い方法を取り入れよう、ツールも準備しよう

というような感じ。


◆確認すべきこと

このパターンは山ほどあるのだが、だいたい、この手の話を聞くと、プロマネに以下の2点を確認することにしている。

・標準を知っているか
・標準の使い方(内容)を知っているか、あるいはマニュアルの存在を知っているか

最初の方はだいたい、60〜70%は知っているというケースが多い。ところが、後者の方はせいぜい30%である。最近、ちょっとかかわりのあったある企業などは10%に満たなかった。だから、いくら標準の質を上げたところで、使われないという状況が変わるはずがないのだ。

これはある種の思考の罠みたいなところがある。問題分析の仮定で、デリバブルズ(PMOとしての成果物、標準など)の品質にしか、関心が行っていない。標準の質がよければみんなが使ってくれるという仮定を持って展開している。だから、そのような問題解決思考に入ってしまうのだ。


◆仮定の間違い

これは明らかに仮定が間違っている。いくらよいものを作っても、その存在が知られない限り、その標準は使われることがないという自明の理を前提にしなくてはならない。

そうすると、「使われない」という問題の分析として上のような分析を真っ先に行うだろう。仮に、使い方を知っているにも関わらず使われなかったら、これはデリバブルズの問題である。あるいは、一度、使って二度と使わないというのも同じ。

速やかに改善しなくてはならない。しかし、知らなければ、まず、知らしめるために何をすればよいかを考えなくてはならない。次に、今のものを使わせるために何をしなくてはならないかを考えなくてはならない。当たり前の話である。問題は単純なのだ。

この単純な問題を、「知らない」という単純な事実を無視して、こねくり回して複雑にしている。こんなことが起っているのではないかと思う。ストレートにいえば、単純な問題を複雑にしている。


◆プロジェクトマネジメントの導入は難しくない

こんな言い方をすれば、投げやりに聞こえるかもしれないが、プロジェクトマネジメントの導入が難しいのは、マネジメント手法そのものが難しいからではないし、また、何をすればよいかが難しいからでもない。ほとんどのケースはそれ以前の問題で引っかかっている。「知られていない」という問題だ。この問題をプロジェクトマネジメント手法の問題に転嫁している点に最大の問題がある。

これをやっている限り、どんな手法を入れようと定着しない。これは、チェンジマネジメントの問題の中核である定着化の問題だ。

よいプロセスを作ればみんなが使う。みんなが使えば、よい製品ができる。よい製品ができれば顧客が買ってくれる。今、買ってくれない顧客も製品を改善すれば買ってくれるだろう。

こんなマーケッティングレスな発想から早く抜け出したいものだ。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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