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第40回 大は小を兼ねない?〜プロジェクトの区分(2007.06.25)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆プロジェクトの区分のガイド

戦略ノート30回で、ガバナンスマネジメントの一貫としてプロジェクト区分の話を
した。

 プロジェクトガバナンスマネジメントのポイント(前) 

ガバナンスマネジメントの標準を定めるに当たって、プロジェクト区分がたいへん重要な問題になることは言うまでもないが、区分の議論はガバナンスに限らず、プロジェクトマネジメント標準に大きな影響を与える。そこで、今回は、プロジェクトマネジメント標準の視点から、プロジェクト区分について議論してみたい。

あまり知られていないが、PMIから

Project Categorization Systems: Aligning Capability With Strategy for
Better Results


というプロジェクト区分のガイドブックが出版されている。プロジェクトの区分はプロジェクトマネジメントの導入の際の大きな問題になっている。


◆区分しないと何が起るか?

プロジェクトマネジメントに関する問題分析の際に、議論はしても、プロジェクト区分をきちんとして、問題の整理をしている組織はあまり多くない。ここにきて、これが問題になっているケースが少なくない。典型的な問題は

 ・プロジェクトマネジメントワークが重い
 ・上位管理者の見なくてはならないプロジェクトが多すぎる

といったようなものだ。

プロジェクトマネジメント標準を決める際にもっとも配慮すべきことは、コストパフォーマンスである。といっても、プロジェクトマネジャーが生産をするわけではないので、あくまでもマネジメントのコストパフォーマンスである。例えば、計画書をどのくらいの詳しさ、精度で作るかという問題がある。あるいは、上位管理者への報告をどのくらいの頻度で行い、どのような報告書を作るかという問題がある。

これはそれぞれのマネジメントアクティビティの目的に対して、計画を作ることがどのくらいのコミットメントになるか、上位管理者への報告をすることがどのくらいのコミットメントになるのかということを考えて決める必要がある。


◆区分の例

一般的に言えば、大きなプロジェクトになればなるほど、構想、計画の重要性が大きくなり、小さなプロジェクトの場合には、コントロールや実行のマネジメントの重要性が大きくなるということがいえる。

第30回では、ガバナンスの視点からのプロジェクトを区分する際の視点として、

 ・規模
 ・プロジェクト編成組織のスパン
 ・ステークホルダの数
 ・リスクの大きさ

があると述べたが、プロジェクトマネジメント標準の策定の視点からもこれが大きく変わることはないだろう。ただし、マネジメント標準の視点からは、例えば、ステークホルダ数が多い場合と少ない場合、リスクが大きい場合と小さい場合では、必要なマネジメント計画が異なってくることを考慮しておく必要がある。これがガバナンスの標準を作るのとは異なる点である。

ひとつ事例をご紹介しよう。ある、メーカの事業部が定めた製品開発プロジェクト区分の例である。

区分  予算規模      期間(月)      組織
 1  予算なし      特に規定なし     部門内
 2  〜2000万円     3ヶ月未満      部門内
 3  〜1億円      〜6ヶ月       バーチャル
 4  〜3億円      〜12ヶ月      部門横断
 5  3億円〜      12ヶ月〜      グローバル

区分1はちょっと分かりにくいかもしれないが、スカンクワーク(予算がつかず、こっそりと行う仕事)である。この組織は改良、(大規模な)不具合対応などの小さなプロジェクトはラインで実施することになっているので、プロジェクト区分を設定する際にスカンクワークもプロジェクトして目標設定をして実施することになった。

このようなパターンを作ると、当然、はまらないものが出てくる。その場合には、

 予算規模>組織>期間

のプライオリティでプロジェクトの区分が決められることになっている。


◆区分の使い方

このような区分を決め、区分ごとに

 ・作成すべき計画と計画項目
 ・上位組織への報告周期

が異なるような仕組みになっている。また、ガバナンスの標準に対してもこの区分が使われており、

 ・プロジェクトマネジャーの職位
 ・計画の承認者
 ・上位組織の報告者と報告内容

が異なるような仕組みになっている。

区分ガイドを作る際に、重要なことは、あまり、ルールを複雑にしないことである。あまりやりすぎると、神学論争の趣を帯びてくるからだ。できれば、上の事例のようにガバナンスマネジメントのために決めた区分を、標準としても使えることが望ましい。しかし、実際問題として、リスク計画書の要否、ステークホルダ分析の要否などを考える際には、ステークホルダ数とか、リスクスコアといったメトリクスを取り入れて、作成に関する標準的なルールを決めていかざるを得ないだろう。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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