◆はじめに
また、ずいぶん、間が空いてしまった。本論の方で展開している人材育成の話題に戻りたい。前回は、商品のライフサイクルが短くなり、投資が小口化し、これらによって、メーカも、メーカの投資に対応しているベンダーも、プロジェクトの数が増え、これによって従来の考え方であった
ライン 人材育成、キャリアマネジメント
プロジェクト 人材活用
という図式がとりにくくなってきたという話をした。今回は、ではどうするかという話をしていきたい。
まず、PMOが関わる人材育成のスコープだが、企業によって若干異なる。プロジェクトマネジャーの育成だけをPMOの人材育成のスコープとしている会社と、それ以外のメンバーについてもスコープとしている会社がある。このあたりは、企業全体の人材育成の仕組みを汲んだ事情があるので、どちらがよいとかいう議論ではない。
ただ、PMOの活動の枠組みとして考えなくてはならないことは、最近の傾向として「チーム育成」のミッションは不可欠になってきている。チーム育成をチームビルディング的な活動を中心に考えるか、もっと根本の個人の育成まで考えるかは難しいところだ。プロジェクトに規模や期間にも関わってくる問題である。
このような認識の元で、ここでは、ひとまず、プロジェクトマネジャーの育成をスコープに考えたい。
◆問題はスポンサーシップの欠如にある
プロジェクトマネジャーの育成を考えた場合に、多くの組織での最大の問題点はスポンサーシップの欠如であろう。それを痛感するのが、リーダーシップ開発であり、コンピテンシー開発である。
極論であるが、プロジェクトマネジメントスキル開発というのは一人でできる。例えば、トレーニングを受ければ開発できるし、中には独学で学ぶという人も少なくない。また、それをプロジェクトに適用するに当たって、プロジェクトマネジャー自身の責任で何とか経験をしながら、強化していける。
もちろん、スキル開発においてもスポンサーシップは必要である。この場合のスポンサーシップというのはトレーニング費用など、経済的なスポンサーシップである。
◆リーダーシップ開発はプラクティスの積み重ね
ところが、リーダーシップ開発やコンピテンシー開発をこれと同じ次元で進めようとしても極めて難しい。スキルと違って、知識はあまり役に立たない。体系的な知識があるに越したことはないが、基本的にはプラクティスの習得の積み重ねである。
もちろん、プラクティスの一部がトレーニングで習得できることはある。例えば、CCL(Center for Creative Leadership)というグローバルなリーダーシップの開発機関があるが、ここのトレーニングは実践的なことで有名で、年間2万人以上の人が利用している。
http://www.ccl.org/leadership/index.aspx
ただ、基本的な部分はトレーニングによって開発可能であるとしても、リーダーシップには組織文化が密接に影響をしてくる。リーダーシップが組織文化を創るし、また、組織文化がリーダーシップを創る。すると、フィールドでのトレーニングは不可欠である。
この開発ができるのはプロジェクトスポンサーである。シニア、エグゼクティブなど、いろいろなレベルのスポンサーシップがリーダーシップを開発する。にも関わらず、どのような開発の活動はほとんど行われていないのが現状だ。
◆プロジェクトマネジャーの育成にはプロジェクトスポンサーの指導体制が不可欠
プロジェクトの中でプロジェクトマネジャーを育てる仕組みを作るには、プロジェクトスポンサーが指導する体制を作ることが不可欠だ。
ここで気になる仕組みがメンタリングである。プロジェクトマネジメントのメンタリング制度を持っている企業は少なくない。ただ、メンタリングでできることとできないことがあることをよく認識しておく必要がある。この議論は次回にする。
※1 CCLはCenter for Creative Leadershipの登録商標
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2.プロジェクトに対するマネジャーの役割と責任
3.組織の方針をプロジェクトにより実現する
4.管理下のすべてのプロジェクトを成功させるために
5.現在の成果を上げながら、将来への投資をする
6.プロジェクトに適した人材育成と風土づくり
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好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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