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第33回 プロジェクトマネジャーを育てる(1)(2007.03.19)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆プロジェクトマネジャー育成の現実

以前、

プロジェクトで戦力になる人材を育てよう!

ということで、プロジェクトマネジャーの育成の具体的な方法を体系的に解説したことがある。ただ、現実を見ていると、プロジェクトマネジャーの育成はあまり機能しているとはいえない。

この問題に対しては、いくつか言いたいことがあるが、ひと言で言えば、「リソースインテグレーション」ができていないということに尽きる。これから何回かに分けてこの意味をいろいろな視点から述べてみたい。

まず、最初に取り上げたいのは、組織としてプロジェクトマネジャーを育てる責任がどこにあるかである。これは、ある意味で、前回まで議論してきたガバナンスの話に通じる部分がある。

多くの組織に見られるのは、勝手に育ちなさいというスタンスである。最近、目立つスタイルは、年1回の目標設定のミーティングで目標を決め、個人にトレーニングを受ける予算を与えて、あとは自力で育ってくれというスタイルである。これが目標管理制度の導入をした中での望ましい姿だと思っている組織も少なくないし、このようなスタイルでの人材育成をもって当社は人材育成に力を入れているといっている企業も少なくない。


◆プロジェクトスポンサーの機能の一つは「教育的指導」

プロジェクトの編成形態にもよるが、プロジェクトマネジャーの組織上の上司はプロジェクト活動の中ではプロジェクトスポンサーになるケースが多い。プロジェクトスポンサーの仕事については

PM養成マガジン 戦略ノート110回
 プロジェクトマネジメントはどこに向かうのか(その4)〜スポンサーの仕事

PM養成マガジン 戦略ノート111回
 プロジェクトマネジメントはどこに向かうのか(その5)〜続・スポンサーの仕事

に整理しているので、参考にして戴きたい。

これを見て戴ければ分かるが、プロジェクトスポンサー(あるいはシニアスポンサー)の重要な仕事のひとつは、プロジェクトマネジャーの「教育的指導」である。多くの組織で「権限委譲」の名のもとにこの機能が放棄されている。権限委譲と「まるなげ」の違いは、この部分、つまり、「教育的指導」をするかどうかにあるといってもよい。権限委譲とは意思決定権を委譲することであって、指導義務を放棄することではない。むしろ、権限委譲をするということは指揮命令が緊急避難的な処置になることを考えると、指導、あるいは支援を強化し、プロジェクトマネジャーが適切な意思決定ができるようにしていくことが必要である。

そして何よりも重要なことはこの指導、支援、教育プロセスによってプロジェクトマネジャーのコンピテンシーが開発されることだ。極論すれば、プロジェクトマネジャーの自己啓発によって知識は習得できるが、ものごとを適切に判断する能力や、あるいは、行動力を開発することは難しい。

言い換えると、プロジェクトスポンサーが今のようにあまり機能していない状況で、コンピテンシーの高いプロジェクトマネジャーが育つことは極めて難しい。個人の資質頼みになるだろう。


◆プロジェクト憲章にスポンサーの指導義務を明記する

プロジェクト憲章を作っている企業では、プロジェクトメンバーの育成について記述する組織が少なくない。ところが、プロジェクトマネジャーの育成について記述する組織は決して多くないのが現状である。PMBOKのようにプロジェクト憲章が(シニア)プロジェクトスポンサーがプロジェクトマネジャーの任命を行うための書類だと位置づけるなら、この中に、プロジェクトスポンサーがプロジェクトマネジャーの育成にどのようにコミットするかが書かれていないのは不思議であるといわざるを得ない。同時に、プロジェクトマネジャーの育成目標も明記されるべきだろう。

PMOとしてはまず、この点を明確にしていきたい。ただし、注意を要することがある。ガバナンスの明確化を先に行うことである。このような育成スキーム作りを今のようなガバナンスがあいまいな状況で行うと、「指導と称した命令」が横行することは疑う余地もないからだ。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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