◆標準化の分野
まず、最初にプロジェクトマネジメントの標準を行う分野について考えてみよう。大きく分けると以下の4つがある。
(1)プロジェクトマネジメント実践
プロジェクトマネジメントの実行をガイドするための標準を作る。例としては、PMI(R)のPMBOK(R)がそうである。
(2)プロジェクトマネジメント成熟度
組織としてプロジェクトマネジメントに熟達するために必要な取り組みのガイドをするための標準である。例としては、同じく、PMI(R)のOPM3(R)を挙げることができる
(3)技術標準
プロジェクト作業に関連する技術標準である。これはプロジェクトの分野によってさまざまなケースが考えられる。いわゆるテクノロジーにかぎらない。プロジェクトが対象とする業務の業務標準と考えてもよい
(4)プロジェクトマネジメントコンピテンシー
プロジェクトマネジメントに必要なコンピテンシーとスキルの標準である。例としては、同じくPMI(R)のPMCDF(R)(Project Management
Competency Development Framework)を挙げることができる
◆標準化の対象
次に、このような分野において、何を標準化するのかについて考えてみよう。
(1)プロジェクトマネジメント実践
まず、最初はプロジェクトマネジメント実践分野の標準であるが、真っ先にでてくるのが、プロジェクトマネジメントメソドロジーと手順である。この方法には前回述べたように、WBSやプロジェクト憲章のようなコンピテンシーとして標準化する方法と、リスクマネジメントプロセスのようにプロセスとして標準化する方法がある。また、プロジェクトマネジメントツールの標準化も必要である。
これらを標準化する意味は、
・一貫性のあるプロジェクトライフサイクルプロセスを再現できるメソドロジーを確立する
・プロジェクトマネジャーに組織としての要求するアクティビティを実行させる
・ステークホルダがプロジェクトマネジャーの行動を理解する助けになる
などである。特に標準化として本質的な意味があるのは、2番目の項目である。これが標準化の目的だといっても過言ではないかもしれない。
(2)プロジェクトパフォーマンス
次にプロジェクトパフォーマンスの標準化も必要である。パフォーマンスの標準化に当たっては、
・プロジェクトがいつ始まり、いつ終わるかの定義
・満足な進捗の定義
・プロジェクトの成功の定義
・警戒すべき状態の定義
・プロジェクトの選定の妥当性の定義
などを行うことが必須である。実は標準化を行っている組織でも、パフォーマンスの標準化をきちんと行っているケースは稀である。せいぜい、満足な進捗の定義と警戒すべき状態の定義を行っている程度である。また、プロジェクトの始まりは明確であっても、終了が不明確なケースが多いのは、謎である。
(3)個人のパフォーマンス
同時に、個人のパフォーマンスの標準化も重要である。個人のパフォーマンスの標準化には
・プロジェクトマネジャーのパフォーマンス
・個々のプロジェクトメンバーのパフォーマンス
などが考えられる。後者はプロジェクトマネジメントの標準化の範囲ではないので、説明は省略するが、プロジェクトマネジャーのパフォーマンスの標準化はほとんど行われていない。スキルレベルの標準化は行われているが、パフォーマンスとして「実際にどういう行動をしているか」を評価している組織は極めて稀である。しかし、個人パフォーマンスの標準化においては、ここまで考えておく必要がある。
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好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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