◆はじめに
前回は一般的なサービスの品質として、
・待ち時間/タイムリーさ
・即応性
・完全さ/正確さ
・礼儀
・一貫性
・利便性
・知覚品質
があることを述べた。今回からは、PMOサービスにおいて、これらをどのように実現していけばよいかを考えてみたい。
◆PMOのサービス待ち時間には重要な意味がある
まずは「待ち時間」について考えてみよう。一般的なサービスでの例としてコールセンターの接続時間を上げたが、PMOサービスにおいて待ち時間が問題になるものはなんだろうか?
真っ先に思いつくのは、コンサルティングである。特に標準の適用におけるコンサルティングの待ち時間が非常に長いPMOが少なくない。
ある企業のPMOでは、PMOが標準として準備しているMS Projectテンプレートの適用コンサルティングの平均待ち時間(6ヶ月の平均)が20日を超えていた。PMOに要請をしたら、忘れたころに対応してくれるという感じだ。
結果として、MS Projectは使われなくなっていた(同期間の使用率30%)。待ち時間の遅くなっていた理由は明白で、PMOの人手不足。すべてのスタッフは担当を持っており、MS
Projectテンプレートのコンサルティング業務は導入を担当したスタッフ2人が自分の仕事の合間にやっていた。
◆標準化を推進したければ、知覚品質を上げる
このように待ち時間の長さは、標準の定着化に影響を及ぼすケースが多く、改善していく必要がある。ちなみに、上の組織では、2人のうちの1名のスタッフを担当とし、時間を確保。それによって、3ヶ月で待ち時間は3日以下になり、その様子を周知することで1年後の使用率は80%を超えた。
みなさん自身がPMOを探してみると、このような改善部門は結構たくさん見つかると思う。理屈(現実)を考えれば、上の3日と10日という差は、実務上、あまり大きな違いはないかもしれない。コンサルティングをしてもらえなくても、それなりの問題解決ができると思われるからだ。ただ、知覚品質という部分では非常に大きな差があることは明らかである。また、知覚品質のところでまとめて述べるが、PMOサービスの知覚品質は活動の生命線といってもよいだろう。
◆プッシュ型のサービスではタイミングも重要
もうひとつ、タイミングの問題に触れておきたい。タイミングの問題は重要である。上の事例で、改善活動を展開する前のアンケートで、テンプレートの存在を知っているかどうかをたずねたところ
(1)使い方も含めて知っている:10%
(2)存在は知っているが使い方はわからない:65%
(3)存在を知らない:25%
(数字は5%きざみで丸めています)
という結果であった。
この結果を見る限り、存在は知っているが使い方はわからないというプロジェクトに使用させなくてはならない。実際に、改善活動の中でこのプロジェクトから自ら尋ねてきた割合は50%に満たない。また、存在を知らなかったプロジェクトに至っては、1プロジェクトのみであった。
これらのプロジェクトでは待っていても何も起こらないので、PMO側からサービスを配達するプッシュ型のサービスを展開する必要がある。問題はこのタイミングだ。これについては、とても意外な結果が出た。立ち上がりと予想する人が多いと思うが、実はプロジェクトの佳境に差し掛かっているときに投げるのがもっとも効果的だということがわかった。
サービスはひとがひとに提供するものであることを痛感させられる結果である。
サービスは難しい。。。
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好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
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