◆PMOに戦略性は必須
日本にはPMOの書籍はあまりないが、米国では日本で出版されているプロジェクトマネジメントの書籍点数くらいはあるのではないかと思う。その中で、最近、目立つようになってきたのが、"Strategic"という形容詞をつけたプロジェクトマネジメントオフィス、あるいはプロジェクトオフィスの本が目立つようになってきた。プロジェクトマネジメントセンターオブエクセレンスとしてのPMOのキーワードも、エクセレンスの獲得のための戦略性であることは間違いない。
◆戦略性とはなにか
この戦略的とは何を意味しているのだろうか?戦略的という言葉が使われるときにはその意味を定義して使われることが多い。このくらい、多様な意味のある言葉だ。著者は以下のような意味で使うことが多い。
「主体的立場」に立つ時に、環境を広い視野のものに認識し、「長期的な目的と成果」の観点に立って「システム的」に対処しようとする意識と行動の形成のスタイル
キーワードは主体性、目的と成果、システムの3つである。プロジェクトマネジメントオフィスの場合であれば、自らを含む組織において、プロジェクトマネジメントという活動の目的を明確にし、自らが主体的に目的を達成できるように、体系的に取り組んでいくことである。
◆戦略的なプロジェクトマネジメントオフィスの役割
もう少し、平たくいえば、まずは、組織としてプロジェクトマネジメントで何を達成したいかを決める(目的と成果)。そして、それを達成するために、現在のプロジェクトマネジメントにどのような問題点、あるいは不足点があるかを明確にする。その上で、目的と成果を達成するためにの改善活動に対して、体系化した上で、「集中させる」、「偏らせる」、「重点化する」、「優先順位をつける」といった方法で取り組んでいくことが戦略的なプロジェクトマネジメントオフィスの役割であるといえる。
◆戦略性を持つためにはミッションとビジョンが必要
このような活動をしていくためには、いくつかのポイントがある。この後、そのポイントを順次、見ていく。まず最初のポイントは、組織のミッションを明確にするとともに、そのミッションをプロジェクトマネジメントの理念に落とし込んだビジョンを策定することである。
当然のことであるが、プロジェクトマネジメントに絶対的な役割はない。プロジェクトマネジメントの役割は組織の使命によって異なる。たとえば、組織の役割が顧客が満足するスピードでサービスを提供することであれば、プロジェクトマネジメントの最も大きな役割はプロジェクト実施のスピードアップである。これに対して、例えば、組織の役割が最先端の技術を以って社会に貢献することだとすれば、プロジェクトマネジメントの役割は、創造性を発揮できるチーム作りとか、リスクのマネジメントとかいった辺りが主要な役割になるだろう。
◆プロジェクトマネジメントのあるべき姿は組織で異なる
つまりは、プロジェクトマネジメントのあるべき姿がどのようなものであるかは、組織によって異なる。ここをしっかりとするのがまず最初のポイントだ。プロジェクトマネジメントは一国一城の主なので、プロジェクトマネジメントをどのようにするかはプロジェクトマネジャーに任せるという組織、あるいはPMOをよく見かける。これはあまり感心しない。このような考え方では、いくら思いを持って、メソドロジーやテンプレートを導入してみても、きっとプロジェクトマネジャーには使われないだろう。プロジェクトマネジャーの考えるあるべき姿からすれば、邪魔になるかもしれないからだ。
メソドロジーやテンプレートを普及させ、有効に使っていくためにはまず、組織のプロジェクトマネジャー(さらには、プロジェクトメンバー)が共感できるビジョンを創り上げることが先決である。
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好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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