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【PMOコラム52】PMOの3つの価値(2008.04.14)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆はじめに

前回は、詳細ビジネスケースの項目

1.ビジネスケースの作成に当たっての前提
2.課題解決と機会の概要
3.PMOの役割、責任、組織
4.初期のPMOの目標と評価指標
5.予想されるコストと期待されるリターン
6.スタートアップロードマップ
7.PMOの承認

の中の4.について述べたが、ここで、評価指標の背景になる価値について触れておきたい。それが5.の期待されるリターンにつながってくる。

このコラムで、別の流れの中で議論している「PMOのバリュー」は何かという議論が止まっているが、そちらもおいおい、続けることにして、ここでは、少し、全体像を議論しておきたい。


◆PMOの明示的価値

PMOの価値は以下の3つに分けることができる。

・明示的価値
・暗黙的価値
・知的資産

明示的価値は、結果が生み出す価値で、PMOが直接的に影響を及ぼすことのできるものである。逆にいえば、PMOが責任を持つべきことという言い方もできる。代表的には
(1)プロジェクトコストの削減
(2)プロジェクト収益の向上
の2つであるが、中間的な可視化をしたいのであれば、ここに、マネジメントプロセスに対する価値を入れてもよいと思われる。たとえば、
(3)無駄な(管理)業務の削減
といったものである。特に、プロジェクトマネジメントの導入時や、プロジェクトマネジメントの改革をしていく際には、いろいろなルールやプロセスを加えることが多く、削減をしない。これにより無駄な管理が生まれていることが少なくないので、(3)の視点は価値視点として意味のあるものだ。ただし、これはあくまでもプロセスであり、結果に直結するものではないことを意識しておく必要がある。ここだけを切り出して議論すること空理空論になるので、(1)や(2)にどのような影響をもたらすかを検討しながら議論していくことが望まれる。


◆PMOの暗黙的価値

二番目の暗黙的価値は、PMOが直接的に影響を及ぼすものではなく、PMOの施策の結果として間接的に生まれるものである。これは組織によってさまざまだと思われるが、まず、共通的に価値だと考えることができるのは「プロジェクトマネジメント文化の定着」だろう。それ以外では、たとえば、プロジェクトマネジメントとして業務改善を行い、成果を得たといったことがある。

この中で特に注意してほしいのは、間接業務のコスト改善である。プロジェクトマネジメントの導入をしたときに、ライン業務の価値観である品質ありきでコスト最優先という価値観が変わることが多い。プロジェクト目的に合わせて、ケースバイケースになる。これに対応するために、たとえば調達活動のコストがずいぶん膨らんでしまっているようなケースが見られる。オペレーションそのものは従来の機能組織で実施すればよいが、その前裁きのところで、PMOがプロジェクトと機能組織の間に入って調整をすることによってコスト削減に大きな効果がある。これを徹底的にすべきだろう。


◆知的資産

3つ目の知的資産がある意味でもっとも重要かもしれない。知的資産として考えられるのは

(1)プロジェクトマネジメントノウハウ
(2)プロジェクトマネジャーの成長
(3)組織のプロジェクト運営のノウハウ

などである。知的資産は組織にとって長いレンジでの価値である。ここで注意しておきたいことは、明示的価値のみを追いかけると一旦効果がでるが、長続きしないということだ。特にIT業界ではPMOが徹底的にプロジェクトの合理化をやり始めた企業が少なくないが、見ていると、踊り場がきて、そのまま停滞してしまう企業と、踊り場を作らずにうまくいく企業がある。その違いがどうもバランスのようだ。

たとえば、ある企業はプロジェクトマネジャーの育成をあきらめ、PMOによる徹底的なプロジェクト管理を始めた。結果として、3年間で赤字プロジェクト数7割減、納期遅れプロジェクト数4割減を達成したが、4年目、5年目でほとんど元に戻ってしまった。

原因についてはここでは述べないが、いずれにしてもそんなに単純な構造の問題ではないことだけは確かだ。この点をよく認識しておく必要があろう。

ということで、PMOの取り組みでは、3つの価値のバランスが極めて重要であることを覚えておく必要がある。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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