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プロジェクトリーダーシップはステークホルダに対する影響力であり、そのレベルには、権限、コミュニケーション、成果、チーム育成、人間性による影響の与え方がある

第2回 プロジェクトリーダーシップのレベル(2006.10.30)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


第1回で述べましたように、プロジェクトリーダーシップをステークホルダに対する影響力だと考えますと、リーダーシップにはいくつかのレベルがあることに気がつきます。


◆地位に頼る影響から、コミュニケーションによる影響に変わる

最初のレベルは、プロジェクトマネジャーという立場(地位)に頼ってプロジェクトメンバーやステークホルダに影響を与えようとするレベルです。もちろん、これが悪いわけではありません。ただし、限界があります。よくプロジェクトマネジャーには十分な権限が与えられていないという人がいますが、その通りです。ただ、プロジェクトマネジャーの権限は組織のガバナンス(統制)上の理由から設定されていますので、ここで権限闘争をしてみても何も始まりません。むしろ、プロジェクトリーダーシップを高めていくべきなのです。

次のレベルは、メンバーやステークホルダと理解しあうことによって影響を与えようとするレベルです。このレベルではプロジェクトマネジャーは「メンバーやステークホルダが義務だと思わなくても、自分のために仕事をしてくれる」状況を作ろうとするわけです。これは地位に頼るよりははるかに進歩です。このレベルになると、メンバーはプロジェクトマネジャーの権限の範囲を超えてついていく傾向があります。その意味で、現場のリーダーとしては一つの到達点だといえるでしょう。

話は変わりますが、最近、ITの分野で、ファシリテーションやコーチングなどのヒューマンスキルを身につけようとするプロジェクトリーダーやプロジェクトマネジャーが増えてきましたが、このような人たちがイメージしているのはこのような影響の与え方だと思われます。

このような方法で影響を与えるようになることはそんなに難しくはありません。リーダーシップとしてはまだまだ、上のレベルがあります。


◆成果を伴う影響とは

次のレベルは、メンバーやステークホルダがそのプロジェクトマネジャーを認めることによって動くようなレベルです。メンバーは、そのリーダーは組織に十分な業績上の貢献をしていると認め、だからついていこうとする状況です。プロジェクトマネジャーでもこのような人はいます。担当するプロジェクトがことごとく成功するようなプロジェクトマネジャーの場合、メンバーはその実績を認め、プロジェクトマネジャーのために働こうとするわけです。

このレベルを前のレベルの違いをよく理解しておいてください。前者は極端なことを言えば現場のボスに心情的に共感しているに過ぎません。このような共感は意外ともろいものです。プロジェクトマネジャーが成果に執着するようになると気持ちが離れていき、影響力も弱くなったりするものです。これに対して、後者はリーダーの下で成果を出すということを受け入れてついていくわけですから、そんなことはありません。つまり、このレベルまでくると、初めて、プロジェクトマネジャーの目標(つまりはプロジェクトの目標)がメンバーの目標として理解され、受け入れられることになります。そして、成果が増える、うわべだけではなく本当の意味でプロジェクトの士気が上がるといった現象が見られるようになります。

IT系の組織では、プロジェクトリーダーとプロジェクトマネジャーを使い分けているところが多いようですが、このレベルのリーダーシップを持って初めて(一人前の)プロジェクトマネジャーだといえると思います。


◆できるリーダーは常に業績の高い人やチームを育てる

ここで終わりかというと、そんなに浅いものではありません。次のレベルがあります。これまではプロジェクトリーダーが業務に対して直接的な影響を与えるという前提の話でしたが、プロジェクトマネジャーの理想は、自分がなしもしなくてもメンバーがきちんとやってくれることです。組織であれば、どれだけ自分の部下の育成ができているのかという話になりますが、プロジェクトではチーム育成を通じてメンバーに影響を与えるレベルがあると思われます。これが次のレベルです。

実はこのレベル感はリーダーシップの大家であるジョン・マクスウェルが提唱したものを参考にプロジェクトマネジャーの特殊性を考えて設定しているものです(もともとのレベルを知りたい人は、こちらをご参照ください)。

ジョン・マクスウェルのレベル設定では、第5レベルに人間性というレベルがあります。部下から全人格的に尊敬され、プロジェクトや組織のガバナンスを超越してついてくるというレベルがあります。このようなレベル感が成立するのはかなり特殊なプロジェクトだと思います。概念としてはプロジェクトリーダーシップの中でもありうるレベルだと思いますので、第5レベルとして入れていますが、どのように育成するかという議論の対象からは外したいと思っています。



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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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