◆なぜ、コミュニケーションの調査
前回、ステークホルダを動かすことがプロジェクトコントロールには不可欠であることを述べたが、今回はもう一つのポイントであるコミュニケーションについて考えてみたい。
プロジェクトコントロールにおいて、進捗報告や問題の報告をはじめとしてコミュニケーションが重要な役割を果たすことは間違いない。そして、コミュニケーションには気を配るが、依然としてコミュニケーションの不適切さによりプロジェクトがトラブルに陥ることがままある。なぜだろうか?
多くのプロジェクトがコミュニケーション計画を作るようになってきた。PMBOKの功績だろう。にも関わらず、コミュニケーションの問題は多い。ひとつにはコミュニケーションが計画されているにもかかわらず、実施されていないことにある。
5年くらい前になるが、ある企業でコミュニケーションマネジメントの導入を行い、その後の調査でこんな数字が出てきた。
○全プロジェクトに対して、
・コミュニケーション計画を作っているプロジェクト 93%
・会議体をきちんと計画しているプロジェクト 93%
・進捗報告の計画をきちんとつくっているプロジェクト79%
・進捗報告、会議体以外のコミュニケーションについて規定をしているプロジェクト 45%
・コミュニケーションのトラブルがなかったプロジェクト 11%
○計画のあるプロジェクトに対して
・進捗報告が計画通りに実行されているプロジェクト 88%
・会議体が計画通りに実行されているプロジェクト 67%
・会議体以外の計画が実行されているとプロマネが認識しているプロジェクト 23%
・コミュニケーション計画の実行をフォローしているプロジェクト 6%
◆なぜ、コミュニケーションが円滑にできないのか
そこで、コミュニケーション計画を分析したところ、5W1Hが明確になっていないケースが目立った。また、5W1Hが明確になっていても、一つの計画(ルール)の解釈をプロジェクトマネジャーとメンバー、あるいはメンバー間で異なる解釈をしているケースが目立った。
特に目立ったのは以下の4点である。
・コミュニケーションのタイミングのあいまいさ
速やかに・・・
・コミュニケーションの基準のあいまいさ
問題があれば・・・
・コミュニケーション経路のあいまいさ
連絡すべき人に・・・
・コミュニケーションの内容のあいまいさ
必要な事項を・・・
代表的な表現を書き出してみたが、これはほとんど計画しているとはいえない次元のものである。この点を追及すると、プロジェクトマネジャーからは判で押したように、それはメンバーが「ケースバイケース」で判断するからという答えが返ってきた。
◆コミュニケーションは統制する必要がある
「ケースバイケース」ができないから、コミュニケーション計画を作るのだ。その点を理解せずに作ったコミュニケーション計画はまず使えない。これがコミュニケーショントラブルを大量発生する仕組みである。
プロジェクトコントロールの中で、もっともコントロールすべきはコミュニケーションである。PMBOK(R)では進捗報告以外のコミュニケーションは実行プロセス群に入っているが、進捗報告以外のコミュニケーションは性善説ではなく、統制しなくては実行されない可能性が高い。
ただし、首に縄をつけて「さあ、コミュニケーションしろ」というものではないので、統制には工夫が必要だ。その工夫とは何か。コミュニケーション監査である。これについては、次回述べる。
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好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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