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プロジェクトを実施する契機になった問題は何か、プロジェクトを実施することによって生まれる機会は何かを分析し、プロジェクトのミッションは何かを明確にし、それをクリアする

第9回 プロジェクトの成功基準を明確にする(2009.03.03)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆プロジェクトの立ち上げですべきこと

前回解説したように、プロジェクトリクエストの形で要求を与えられると、いよいよ、プロジェクトの立ち上げに入る。

プロジェクトの立ち上げですべきことは、

・成功基準を明確にすること
・成功を左右するリスクを抑えておくこと

の2つである。


◆成功基準の明確化の第一歩はプロジェクトリクエストからのミッションの読み取り

成功基準を明確にするためには、プロジェクトリクエストを理解し、自分たちのプロジェクトのミッションに展開する必要がある。これは以下のような手順でやっていくとよい。

まず、最初に、プロジェクトリクエストから自分たちのミッションを明確にしておく(読み取る)必要がある。自分たちのミッションは最終的には自分たちで決めるのだが、この段階では、特にプロジェクトリクエストを出したステークホルダが期待するミッションが何かを読み取らなくてはならない。

そのためには、プロジェクトリクエストを以下のような視点で分析してみるとよいだろう。

・プロジェクトを実施する契機になった問題は何か
・プロジェクトを実施することによって生まれる機会は何か

問題については、おおむね、プロジェクト憲章に書かれていると思うが、機会は洞察しなければならないことが多い。もし、機会がきちんと定義できないようであれば、そのプロジェクトは実施する意味がないことになるので、注意する必要がある。

例えば、こんなことである。プロジェクトリクエストに

この商品開発は、今までの商品が若年層への訴求が弱いことを受けて、単に若年層ビジネスマンに訴求するだけではなく、従来の顧客である中堅ビジネスマンにもより魅力的な商品にしたい

とあったとする。問題と、その問題を解決することによって生まれなくてはならない機会は何であろうか?(次回、もう一度、触れるので考えておいて欲しい)

そして、これらの分析を踏まえて、

「プロジェクトのミッションは何か」

という問題を明確にしていく。プロジェクトの成功とは、プロジェクトリクエストに応えることではなく、ミッションをクリアすることである。


◆ステークホルダの持つ価値観の理解

次に行うべきことは、そのミッションの中でのステークホルダの理解である。ステークホルダの理解のためには、

・だれがステークホルダか
・どのような価値観を持っているのか

という2点を明確にする必要がある。

ステークホルダは単純に捉えると2種類ある。顧客とパートナーである。それぞれについてどのような人がいるかを考えてみる必要がある。そして、それらのステークホルダがプロジェクトに対してどのように感じているかを理解するとともに、そのような感じ方の背景にあるステークホルダの価値観を洞察する必要がある。

例えば、営業部長はとにかくプロジェクトを納期通りに終えて、予定通りに商品を出荷することに重きを置いているが、開発部長は中途半端な商品を出すことはよしとせず、競合に対して技術的な優位性のある商品にして世に出したいと考えている。これはプロジェクトに対する理解であるが、この背景には、商品の価値は顧客が決める vs 商品の価値は機能にあるといった価値観の違いがあったりする。ステークホルダをうまく説得していくには、彼らが持つ価値観をしっかりと理解することが重要なのだ。

ここで注意を要するのは、プロジェクトリクエストを作っている人はプロジェクトのスポンサーであっても、もっとも影響力を持つステークホルダとは限らないということだ。例えば商品開発のプロジェクトだと、スポンサーになっている開発部長より、その商品を実際に販売していく営業部長の方がプロジェクトに対する影響力があるというケースは少なくない。

ここまでで、プロジェクトリクエストの読み取りは一応終わりで、次にこれをプロジェクトに展開していく必要がある。

(次回へ続く)

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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