第3回 プロジェクトの目的・目標は誰が設定する?(2008.11.11)
◆質問
前回、プロジェクトスポンサーを押さえ、また、影響を受けるステークホルダを探すという話をした。記事を読んでいただいた方から
プロジェクトを立ち上げるときには、プロジェクトの目的・目標の設定というのは先ではないか?
という質問を戴いた。第3回は、この質問に答える形で話を進めていく。多少、文章が堅苦しくなるが、ご容赦願いたい。
◆組織の目的・目標、プロジェクトの目的・目標
確かに、プロジェクトが立ち上がるときには、組織としての目的・目標は決まっていることが多い。売り上げ、収益、シェア、ブランディングなどであることが多い。また、ITのプロジェクトでは、ビジネスプロセスの関係で仕様(こんな仕様のシステムを○○月までに○○万円で作る)といった目的・目標の立て方をしている組織もある。しかし、プロジェクト(現場)からみれば、組織が目的・目標として考えているものは「課題」であることが多い。「この仕事(課題)やってくれないか」とくるわけだ。
ここで問題は、プロジェクトとしては何を目的に行うのか?ということだ。プロジェクトで課題を解決すると考えれば、課題そのものは目的にはなりにくい。商品開発のプロジェクトを考えてみてほしい。
◆商品開発の場合
メーカの商品開発プロジェクトに対して、経営組織の目的・目標が、事業戦略から
目的:新製品の投入で当該分野での競争力を高める
目標:全市場の3%のシェアを取れる商品の投入
と定められたとする。すると、プロジェクトへの指示は「3%程度のシェアを確保できる商品」を開発してくれとなる。現実には、前提条件や制約条件として、商品ビジョンが付随したり、活用する技術が付随したりする。組織の目標はプロジェクトの目標はイコールではない。プロジェクトは商品を開発すれば役割を終える。そして、プロジェクトで開発した商品は経営組織が展開していくことになる。商品開発を引き受けた組織ではなく、製造販売は別組織が行うことが多い。その際には3%は重要な目標になるわけだが、それは商品の出来だけで決まるわけではない。営業やチャネル政策、マーケティングなどの総力で決まってくる。
つまり、組織が作っている目標を達成するための一つの活動に商品開発(プロジェクト)があるに過ぎない。3%のシェアをとるというのは組織が抱えている課題であり、プロジェクトに対しても当然、要求があるわけだが、プロジェクトとしては、この課題にどのようにして、どれだけコミットするかが問題で、それが目的・目標になる。
たとえば、ユーザが商品の優位性を判断できる商品の開発という目的を設定し、従来比10%の性能アップ、○○機能搭載とかいう目標設定をするわけだ。
◆SIプロジェクトの事例
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さて、もう一つの例として、SIプロジェクトの例を考えてみよう。SIプロジェクトはこの構図が見えにくい。
あるプロジェクトに対して、経営組織の目標が
目的:当該顧客との継続的な取引と、基盤技術の確立
目標:受注した仕様、売り上げ5千万円、収益率10%
だったとしよう。この場合も組織の目標がプロジェクトの課題になるのだが、分かりにくいのは組織の目標ができる経緯にある。すでにこの目標の中に、営業活動をはじめとする組織の活動は折り込まれており、それを受けた目標になっている。つまり、これは組織の目標であるようで、プロジェクトの目標にもなっている。したがって、組織の目標をそのまま、プロジェクトの目標として計画を作ることが多い。
このやり方の是非はともかく、上位組織の目的・目標が課題となり、プロジェクトの目的・目標が策定されるというのは同じだ。
◆目的・目標の設定と合意形成はプロジェクトの仕事
冒頭の質問に戻るが、このようにプロジェクトらしいプロジェクトでも、目的・目標の設定はプロジェクト側の問題である。日常業務のプロジェクトでは組織の目的・目標と仕事のリンクが明確でないもの指示も少なくない。
そのような認識に立つと、まず、プロジェクトや仕事を任されたら、スポンサーやステークホルダとコンタクトし、プロジェクトや仕事としての目的・目標の落とし処を探した上で、プロジェクト憲章などのツールを使ってドキュメント化し、合意形成をしていくことが重要である。
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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