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第4回 心理的な現実に対決する(2009.06.23)

インフルエンス・テクノロジーLLC  高嶋 成豪


 前回は「過去の不愉快な経験を克服する」考え方と方法をご紹介しました。相手が敵に見えるのは、過去の経験に左右されていることが少なくありません。しかし、過去の経験に縛られる必要もない、相手から得たいものを明確にし、対応を考えようという趣旨でした。今回は、心理的な現実を乗り越える、がテーマです。

 心理的な現実、とは、思い込みの世界のことです。相手が敵に見える、そのほとんどは思い込みといっていいでしょう。出会って間もない時期から、敵か味方かわかないときから、とりあえず相手を敵と考えておく。
 ところが、残念ながら身構えたぶんだけ、相手への対応はぎこちなくなります。「この人は、きっと自分を貶めようとするだろう」などと考えます。表情が険しくなったり、言葉に刺があったり。すると、相手も身構えるものです。
 もちろん、本当の敵はいます。ですから、敵か味方か区別がつかないうちは、どうしても身構えてしまう。これは誰でもごく自然の反応です。とはいえ、この思い込みに縛られていると、良い結果にはならないものです。

 カウンセリングを専攻していたときに私が学んだ「論理療法」では、"非論理的な思い込み"が心理的な混乱の原因とされています。"非論理的な思い込み"とは、「○○は××すべき。それができないのは許せない」というものです。たとえば、上役が自分の立場を理解しないと腹が立つものです。そんなとき非論理的な思い込みがうごめきます。「上司は部下の気持ちを理解すべきだ。私を理解しようとしないのは、許せない。上司として失格だ」などと。

 このどこが非論理的かというと、まず「・・・すべき」という点。上司が部下の気持ちを理解できるに越したことはありませんが、現在の超多忙な職場の現実の中で、上司がすべての部下の気持ちを理解するのは奇跡のようなものです。本当は「上司には部下の気持ちを理解してほしい。私の気持ちを知ってほしい」なのではないでしょうか。しばしば、「・・・してほしい」が「・・・すべき」に飛躍してしまうのです。

 次に、「・・・は許せない」というところ。上司が部下の話を聴かないのは、望ましいことではないし、残念なことです。とはいえ、それを「許せない」のは、むしろ許せないこちらの問題でもあります。問題行動を「許さない」のは正しい姿勢だと思います。ですから、相手が行動を正せるように働きかけたらいい。しかし「許せない=許すことができない」と考えたとたん、何が何でも許せない、できることは何もないのだと思いがちです。また「失格」などと相手を評価したら、そこで建設的な思考がストップしてしまう。

 よって、論理療法では、このような思い込みは、非論理的であるだけでなく、非合理的であると考えます。誰も幸せにならない、というわけです。ただ、論理療法の創始者アルバート・エリス博士は、このような非論理的で非合理的な考え方を、人は誰でもしがちだ、だからこそ、より論理的で合理的な考え方を繰り返し自分に言い聞かせるとよい、といっています。それによって、怒り、絶望、恐怖、不安など、強い否定的な感情から解放されるのだと。

 ここで申し上げられるのは、まず自分の思い込みをチェックしてみよう、それが不適切だと思うのであれば、挑戦しようということです。

 相手が敵に見えるのが思い込みであるのは、仏教でも述べられています。貪(貪り)・瞋(憤り)・癡(愚かさ)は、自分に執着する、自分の思い通りにならなければ許さない、そして無知であるゆえに引き起こされるのだと。こちらの思い込みが、望ましくない行動や感情につながる、というわけです。つまり、古今東西を問わず、思い込みによる敵意を戒めているのですね。

 ではどう対応するか。ひとつは自分の思い込みにチャレンジすること。人間、誰でも自分に都合のいい思い込みをしているものです。まず発見、次いで挑戦。

 次に、なるべく早く、相手が受け入れやすいカレンシー(価値)をどんどん手渡していきます。新しく一緒に仕事することになった人ならなおさら、早期にカレンシーを渡しておきましょう。それほど難しいことでなくていいのです。心のこもった挨拶、礼儀正しい自己紹介だけでも、相手を尊重していることを伝えられます。相手の話を親身に聴く、オープンで正直に接する、相手がほしがる情報を提供するなど、誠意をもって接すると、相手もこちらに否定的な態度で接することはなくなるでしょう。
むしろ、協力的に接してくれる可能性が高まります。そこで互いに協力的に仕事を進めるよう求めやすくなるのです。

まとめ 自分の思い込みをチェックしよう。誰でも非論理的、非合理的な考えを抱えている。それに気づければチャレンジしよう。早めにカレンシーを渡しておけば、相手は早く協力的になる。相手が喜ぶものをどんどん渡そう。

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6.まとめ
 ・(演習6)カレンシーを再考する
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著者紹介

高嶋 成豪    インフルエンス・テクノロジーLLC マネージング・パートナー

人材開発/組織開発コンサルタント。インフルエンス・テクノロジーLLC.マネージング・パートナー。ゼネラル・モーターズ、ジョンソン・エンド・ジョンソンなどで人材開発に従事。現在リーダーシップ、コミュニケーション、チームビルディング、キャリア開発のセミナーを実施し、年間約1000名の参加者にプログラムを提供している。ウィルソンラーニング・ワールドワイド社によるリーダーシッププログラム、LFG(Leading for Growth:原著はコーエン&ブラッドフォード両博士の共著“Power Up”)のマスター・トレーナー。2007年『影響力の法則 現代組織を生き抜くバイブル』(原題“Influence without Authority”)を邦訳。コーエン&ブラッドフォード両博士から指導を受け、「影響力の法則」セミナー日本語版を開発。日本で唯一の認定プロバイダー。筑波大大学院教育研究科修了 修士(カウンセリング) 日本心理学会会員 ISPI(the International Society for Performance Improvement)会員 フェリス女学院大学講師

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