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第1回 ミドル・アップ・ダウン(2008.08.26)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆ミドルマネジメントとは

ミドルマネジメントは、トップマネジメントが示した経営方針や経営目標に対して、自部門の目標を設定し、ジュニアマネジメント(現場管理者層)を通じて一般社員に実行させる役割を持つマネジメントである。

欧米では、マネジメントの重要性として

(1)トップマネジメント
(2)ジュニアマネジメント
(3)ミドルマネジメント

の順になっている企業が多い。これに対して、日本企業は

(1)ミドルマネジメント
(2)ジュニアマネジメント
(3)トップマネジメント

の順になっている企業が多く、非常に重要な役割を果たしている。また、プロジェクトにおいても、ミドルマネジメントの役割は重要で、ミドルマネジメントの活躍ひとつで、プロジェクトが成功したり、失敗したりする。


◆ミドルマネジメントとプロジェクト

ミドルマネジメントがプロジェクトにかかわる方法を典型的には3つある。プロジェクトマネジャー、プログラムマネジャー、プレイングマネジャーである。

プロジェクトマネジャーは単独のプロジェクトのマネジメントを担当するケースである。一般的には重要度の高いプロジェクト、複雑性や難易度の高いプロジェクトなど、エグゼクティブマネジャーがプロジェクトをスポンサーであるようなプロジェクトを担当することが多い。ボトムアップ的な役割である。

二番目のプログラムマネジャーはプロジェクトマネジャーの上司として、自部門やプログラムにおけるプロジェクトの管理をする役割である。管理の対象はプロジェクトマネジャーである。これはトップダウン的な役割である。

三番目はプログラムマネジャーと部下にプロジェクトマネジャーを担当させ、管理すると同時に、自身も重要なプロジェクトについてはプロジェクトマネジメントを担当するような位置づけである。最近、このような形を示す言葉がでてきた。ミドル・アップ・ダウンという言葉だ。これこそが、今のプロジェクトマネジメントに必要なのではないだろうか?


◆なぜ、プロジェクトでミドルマネジメントが必要か?

PMI(R)のPMBOK(R)がその典型であるが、プロジェクトマネジメントは任されたプロジェクトを「正しく実行をする」ために存在する。つまり、トップマネジメントが業務を直轄するために非常に便利な方法である。ゆえに経営にとって重要な業務はプロジェクトとして行われる。

トップマネジメントは、プロジェクトスポンサーとして、プロジェクトの目的や目標を定義し、プロジェクトマネジャーに依頼する。プロジェクトマネジャーはその目標を達成する方法を考え、実行することを期待されている。

ところが日本では、このようなマネジメント方法はあまり浸透していない。長年、ボトムアップで経営してきたため、形は作っても、トップダウンという魂が入っていないケースが多いのだ。

だから、もう一度、ボトムアップでというのはナンセンスである。ボトムアップで経営をしている限り、優秀な技術と優位な国内市場を持つ企業が海外では全く通用しないという現実がある。グローバル展開をするには、戦略的な経営、つまり、トップダウンなマネジメントというのは不可欠である。

将来はひょっとすると、米国型の強いトップによる戦略経営という姿があるのかもしれないが、少なくとも、今はあまり期待できない。そこで出てくる姿が、ミドルマネジメントのリーダーシップ連鎖を中心にしたミドルアップダウンの経営である。

ミドルマネジメントがトップマネジメントのすべてを再現することは難しい。しかし、ここにリーダーシップ連鎖があれば、ミドルを中心にした戦略と現場の結びつけは可能である。

かつて、ミドルマネジメントは「連結ピン」として機能することにより、全体のパフォーマンスが高くするという重要な任務を果たしていると考えらていた。トップの動きを忠実に現場に伝えるピンである。今度は、トップの動きを現場に伝えるととにも、トップに対して現場の動きをくみ取った影響を与えていく、双方向のピンである。

プロジェクトを成功させるには一方向のピンではなく、双方向のピンが必要なのだ。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「プロジェクトマネジャー養成マガジン」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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