◆計画は管理のために作るのではない
前回はプロジェクトの計画の体系について説明した。その最後に、ガバナンスの話をしたが、今回はこの議論をもう少し深めてみよう。
いつの間にか、計画は管理のために作られるようになってきたが、いうまでもなくこれは、正しい考えとはいえない。計画は、目標や目的の達成のための手段である。手段であるとはどういうことかというと、目標や目的の達成のための合理性のある範囲で、計画は自由に変更されるべきだということだ。たとえば、今日、作業が計画通りに進まなかったとする。すると、明日、あるいは、明日から数日分は、その遅れを吸収するような計画を作って、その計画に従って、作業を進めていく必要がある。ここで、「計画を変えないままで、今週末までには挽回しておきます」のでというのは認められるべきではない。というよりも、そもそも何を以て認めるべきかという議論がある。
◆目標達成と管理の両立
一方で、組織がプロジェクトに対してガバナンスを効かせる手段としても、計画の管理が合理性がある。求められるのは、この両立である。
この両立が難しいのは、進捗を「管理」するという発想をするからだ。進捗を管理しようとすると、計画がやたらと変わってくると評価ができなくなって困る。たとえば、10日の仕事で1日遅れているので、計画を11日にしたとする。そうすると、ジャストスケジュールなのか、遅れているのかわからなくなる。もっと細かくいえば、それを11日したときに、どこにどのような影響が出てくるかということまでがきちんと考えないと評価できない。
管理すべきなのは、進捗ではない。計画である。つまり、遅れているアクティビティも含めて、明日から、どのような計画で行うのかがわかれば、一目瞭然である。あるいは、CCPMのように、計画の代わりに、計画が集約された情報としてプロジェクトバッファーに注目することもある。また、いなずま線のように計画の軸を読み替えることによってオリジナルの計画をそのまま使うというやり方もある。
いずれにしても、プロジェクトマネジメントの教科書にあるように、いまどうかではなく、最終的にどうなりそうかを管理せよという話である。
◆変更された計画の妥当性
ここで問題は、変更された計画でよいかどうかをどのように判断すればいいかということだ。ここに目標の設定の意味が出てくる。スケジュールでいえば、この目標はマイルストーンである。つまり、その時点でのスケジュール計画で、マイルストーンまでに当初入っていたアクティビティがすべて入っていればスケジュール的にはOKということになる。
このようにマイルストーンをクリアしている限り、作業者レベルで計画をどんどん動かしていってもかまわない。というか、常に、目標を達成するためには計画をどのようにしておけばよいかを常に可視化しておけば、ガバナンスの手段と、目標達成の手段の両立が可能である。これはダイナミックスケジューリングと呼ばれる手法である。
これと同じ構図が目標と目的の間にもある。目標というのも一種の計画であるが、上と同じ論理で、目的を達成するためであれば目標を変更してもかまわないわけだ。たとえば、最近、政権交代の影響を考えて、システム構築のプロジェクトをサスペンドしているという話を聞いた。目的として収益性とビジネスの継続を掲げていたので、目標を動かしてもよかったわけだ。政治や法令のように、従わざるを得ない環境要因の変動がある場合にはこういったケースは珍しいことではない。
しかし、プロジェクトの目標まで目的実現の手段だとして変更してしまうと、影響が大きい。そこで、ガバナンスを維持するために変更管理として、組織の承認をはさむような形にする。
◆目標の変更は管理する
プロジェクトの変更管理は、一般には、プロジェクトの目標、目標達成の基本的なアプローチがその対象になることが多い。これらが変わるときには変更管理のプロセスを走らせ、組織が目標の変化が目的実現に与える影響を評価し、目標の変更が、目的の実現に影響を与えない、あるいは、よい影響を与えることを確認して承認するわけである。
目的と目標の関係には定性的な部分が多々あるので、このような形になっていることが多い。
一方で、目標と作業の関係はそんなに複雑なものではないので、動的スケジューリングのような管理方法をとることを前提に、すべてをプロジェクトにかませてしまってもかまわない。
このように計画は何をマネジメントしているかをよく考え、手段としての使い方と部分と統制としての使い方をよく考え、うまくバランスをとっていく必要がある。
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