◆管理はプロセスでできるが、マネジメントはできない
前回、組織的なプロジェクトマネジメントを実現しようとすれば、
(1)プロジェクトスポンサー(ラインマネジャー)は自分の計画を見える化
(2)プロジェクトマネジャーはプロジェクト状況を見える化
(3)お互いに状況を考え、自発的に動く
の3つを実現する必要があるという話をした。そして、(3)として、プロジェクトリクエスト、プロジェクト憲章、プロジェクトプロポーザルというドキュメントが重要な役割を果たすという話をした。
今回は、本筋の話からは多少脱線するが、(3)を如何にして実現するかという議論をしてみたい。
まず、最初に述べていきたいのは、管理はプロセスで実現できるが、マネジメントはプロセスでは実現できないということである。これは勘違いしている人が多いのではないかと思う。たとえば、情報の伝達をプロセス化することはできても、コミュニケーションをプロセス化することは不可能だと言ってもよい。
同じ理由で(3)を実現しようとしたときに、プロセスを設定したがる組織が多いが、これはあまり意味のあることだとは思えない。
◆プロセス、コンピテンシー、ケイパビリティ
そのような組織は「標準化」という言葉からプロセスを連想するような組織であるが、標準化にはもう一つの意味がある。それは、コンピテンシーの標準化である。コミュニケーションを例に取っていえば、プロジェクト関係者すべてが同じコミュニケーションのリテラシーを身につけることである。
実は、この議論にはもう一つの要素がある。組織能力、つまり、ケイパビリティと呼ばれる要素である。ケイパビリティの学習が進行すると、組織文化になる。プロジェクトマネジメントでもそうだし、一般的にマネジメントの成熟度モデルは
・プロセス
・コンピテンシー
・ケイパビリティ
の3つの要素で表現される。問題はこの3つのバランスであるが、管理であればすべてをプロセスで実現してしまうことはできる。最近はそこまでやると、過剰管理と呼ばれる。しかし、マネジメントをプロセスだけで実現することはできない。そこで、コンピテンシーをそろえたり、ケイパビリティの構築を試みたりして、何とか均質なマネジメントをしようとする。
実際に、多くの企業が、マネジメント(リーダーシップ)においてはコンピテンシーに注目しているのはそんな理由によるものだ。
◆コンピテンシーの標準化ツール
話が大きくそれたが、結局のところ、プロジェクトマネジャー(プロジェクトチーム)、組織、ステークホルダが状況を考えて自発的に動く組織的プロジェクトマネジメントの実現のためには、最低限のプロセスの標準化とともに、コンピテンシーの標準化を行い、そして、ケイパビリティを向上させていくことが不可欠である。
プロジェクトリクエスト、プロジェクト憲章、プロジェクトプロポーザルはコンピテンシーの標準化のツールとして位置づけられるものである。
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好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
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