◆ルールを作らなければエンパワーメントは精神論
前回まで、エンパワーメントの考え方や難しさを述べてきたが、今回からは具体的にどのような制度(ルール)に落とし込んでいくのかを考えてみたい。
この連載では最初からプロジェクトマネジメントをプロジェクトだけの問題にするなといっているわけだが、それを支えるルールや制度がない限り、それは精神論に過ぎない。
我々のプロジェクトマネジメントのコンサルティングでは、プロジェクトマネジャーへのインタビューと併せて、必ず、プロジェクトスポンサーへのインタビューを実施している。ところが、スポンサーへインタビューすると、9割くらいの人は、プロジェクトマネジャーへの注文や問題を尋ねたいのだと思う傾向がある。プロジェクトマネジメントは現場の問題だと思っているし、「自分たちは任せる立場」だと思ってい
る。
◆前提:プロジェクトの責任者はプロジェクトスポンサー
この連載でおわかりいただけたと思うが、プロジェクトの実施責任者はプロジェクトマネジャーではなく、プロジェクトスポンサーである。したがって、プロジェクトスポンサーにインタビューする意味は、半分は彼らが考えているとおり、プロジェクトマネジャーの問題を聞くためだが、半分は彼らがプロジェクトマネジャーにプロジェクトスポンサーとしてきちんとした対応をしているかどうかを聞き出すためである。
そのような内容のインタビューに入ると、多くのマネジャーは怪訝な顔をするし、まれに怒り出す人もいる。そこまでではないとしても、勘違い発言が目立つ。
たとえば、
プロジェクトマネジャーは○○プロジェクトの経営的な背景をきちんと理解していますか?
と聞くと、必ず、ある返事に
A君は目の前の仕事に追われているのもあるんでしょうけど、そういうことに関心を持ちません。もう少し、経営的な視点を持ってくれると私も楽なんですけどね
という返事がある。
◆任務を果たしているといえるスポンサーは5人に1人
○○課長、それは理解するまで説明するのはあなたの仕事です!
この問題も含めて、現状で、プロジェクトマネジメントを導入して数年になる企業だと、プロジェクトマネジャーであるレベルでできているのが3人に1人くらいのところが多いが、これに対してプロジェクトスポンサーがきちんと機能しているといえるのは、せいぜい、5人に1名くらいだと思われる。
これを何とかしないと、プロジェクトは変わらない。
◆プロジェクト成功の定義を明確にする
これを何とかするためのポイントになるのは、「プロジェクト成功の定義」を明確にすることである。
世の中で、プロジェクトが成功だといっているのは3つに分けることができる。
(1)最低限のことをクリアした(失敗しなかった)
(2)期待通りである
(3)期待以上である
(1)はQCDSを定められた通りに行ったということだ。ただし、ここで気をつけなくてはならないのは、DとCは明確なものであるが、QやSはかなり、解釈的要素が入っている。言い換えると、QやSに対して決定権を持っているステークホルダの満足がどの程度かという問題になる。満足の対象はQについては検査仕様、Sについてはユーザビリティなどのインタンジブルな機能が重要な要素になる。
組織の論理で、目標というのは常に低めに設定される運命にあり、故に
失敗しなかった=期待通り
だということを言うプロジェクトスポンサーが多いが、仮に、どれだけ厳しい要求があったとしても詭弁である。なぜなら、上に述べたようにQとSを本当の意味で定量化することは難しく、従って、客観的にみて失敗しなかったかどうかという判断はできないからだ。
◆成功を定義するドキュメント
そこで、制度として何が必要かということになるのだが、まずは、(1)と(2)を明確にドキュメント化することである。
このあたりで使われるドキュメントには、
(1)プロジェクトリクエスト
プロジェクトに対する顧客、最終ユーザ、および、上位組織の要求をプロジェクトスポンサーがまとめたドキュメント。
(2)プロジェクト憲章
プロジェクトリクエストを実現するにあたって、プロジェクトステークホルダへの依頼をまとめたドキュメント。
(2)プロジェクトプロポーザル
プロジェクトリクエストに対して、プロジェクト憲章で指名されたプロジェクトマネジャーとプロジェクトが、どのように対応していくかをまとめたドキュメント
の3つである。
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好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「プロジェクトマネジャー養成マガジン」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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