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第7回 プロジェクトはエンパワーメント(2009.03.07)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆プロジェクトはエンパワーメント

前回のフォーメーションの話にもう少し、踏み込んで考えてみたい。

これまでも触れてきたように、支援の話と表裏一体であるのが「権限委譲」である。権限委譲を何のためにするのか?という問題があるが、権限委譲と「丸投げ」という言葉の区別がついていないケースが少なくない。

ここで、エンパワーメントという概念があることに注目したい。エンパワーメントとは、与えられた業務の目標を達成するために自律的に行動するパワーを与えることだ。エンパワーメントは単に権限委譲することではなく、「自律性を促す」、「支援する」の2つの要素がある。

具体的には、

(1)目的・目標の合意
(2)自由度の供与
(3)補完的な支援

などを行う。

プロジェクトはプロジェクト(マネジャー)に対する「エンパワーメント」である。


◆エンパワーメントのポイント

そのように考えると、組織がプロジェクトに対して行うべき支援が見えて来る。その具体的な検討に入る前に、もう少し、一般的なエンパワーメントのポイントを整理して置こう。まず、最初の目的・目標の合意である。これがもっとも重要なポイントかもしれない。

ここでは現実の中では「できること」だと考えられているが、実は自律性を促すという点でいえば、適度にストレッチされた目標である方が望ましいとされる。図らずも現実に行われていることが、エンパワーメントの原則にかなっているわけだ。


◆目的・目標の明文化

そして、もっと重要なことは、目的・目標がきちんと明文化されていることだ。そしてポイントは、シンプルであること。例えばこういう話がある。納期、原価、品質の目標をそれぞれ、与えた。一見、単純そうに見えるが、実は、目標としては非常に複雑である。トレードオフがでてくるからだ。

このように目的や目標の見えない部分を徹底的に排除することが重要である。そのことによって、エンパワーメントする側とされる側のイメージを併せることができる。


◆権限委譲しても介入する

二番目のポイントも結構重要である。権限委譲ではダメだと言っている理由のほとんどはここにある。つまり、権限を委譲しているのに、自由度を与えていないというケースが多いのだ。例えば、作業分担は任せるといっておいて、育成上の観点からいろいろと介入するラインマネジャー。この是非は別にして、これをやった瞬間にエンパワーメントではなくなってしまう。


◆権限を使うにはスキルが必要

実は権限委譲と言う言葉にはトリックがある。権限を与えることと、権限を使うことは別なのだ。上の一旦権限を与えておいて、別の職務権限を持って介入して、使えなくするとか、人事権をちらつかせて与えた権限を自分の意のままに使わせるラインマネジャーなどは論外だが、そんな問題はなくても意外と権限を使うというのは難しい。特に、委譲された権限というのは通常自分が使っている権限より上位の権限で、未経験なものが多い。

例えば、こんな例がある。プロジェクトマネジャーに自分の部のメンバーのプロジェクト配置を自由にやらせた部長がいた。裏話をすればプロジェクトマネジャーの愚痴に切れてしまっての行動だったのだが、どこまで作為的にやったのかは定かでない。

結果として半年で、プロジェクトマネジャーにメンバー配置の調停を頼んでくるようになり、1年後に、元の姿に戻った。配置以外にも評価の権限も与えたのだが、これがまた、プロジェクトマネジャーの悩みのネタになった。

このように人事権などの権限は与えられたからといって、おいそれと使えるものではない。権限を使うにもスキルが必要なのだ。その点において支援は不可欠である。

同じ意味で情報の解釈がある。権限について回るのは情報である。普段は目にするようなことがない情報を目にすることになる。そこで、情報の解釈の仕方、使い方などを指導する必要がある。

これらの支援・指導を、自由度を損なわないように行うのは難しいというか、丁寧な対応が求められる。エンパワーメントのためにはこれを辛抱強く行っていく必要がある。

さて、エンパワーメントのポイントは以上のようなものだが、では、これをプロジェクトの活動に当てはめるとどうなるのだろうか?次回はこの議論をする。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「プロジェクトマネジャー養成マガジン」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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