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戦略マネジメントとは目標を明確にし、目標に向けてマネジメントをすることであり、目標到達までには乗り越えなくてはならない障害もある。障害を乗り越える鍵を握るのが「支援」である。

第6回 プロジェクトを巡るフォーメーション(2009.03.02)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆上位組織の本来の役割

前々回、前回と兵站(ロジスティクス)にたとえて支援の話をした。

戦略マネジメントとは目標を明確にし、目標に向けてマネジメントをすることである。当たり前のことかもしれないが、目標到達までには乗り越えなくてはならない障害もある。障害を乗り越える鍵を握るのが「支援」である。

問題は、戦略をプロジェクトとして実行するときに、この「障害」を誰が解消していくかだ。あまり前だが、組織が解消すべき障害と、プロジェクト(現場)が解消すべき問題がある。そして、この区別は一般論ではなく、組織がプロジェクトにどこまで権限委譲をしているかによって決まる。

プロジェクトマネジメントのあり方として、「ありえない」くらいおかしいのをよく見かけるのは、リソースの配置というか、供給の考え方である。プロジェクトに課題実行の責任を落として、プロジェクトへのリソース供給を「権限」だと勘違いしているマネジャーが少なくない

もう一度、兵站を例にとっていえば、「兵隊は現地で調達してくれ、困ったときは相談してくれ」といって隊長と何人かの補佐を送り出すようなことを平気でやっていることになる。

「プロジェクトという部隊」をビジネスの現場に送り込むことによって戦略を実行するのが本来の組織の役割である。

かつ、それでも現場では思ったようにビジネスが展開するわけではないので、現場からの要請に応じて、戦略実行上必要だと判断すれば追加のリソースや調達資源を供給する。これが支援という行為だ。


◆なぜ、本来の支援が行われないのか

なぜ、このような支援が行われないのだろうか?プロジェクトを成功して欲しいと思わない組織はないだろう。その意味では、戦隊の本部と同じだ。異なるのは、責任の感じ方ではないかと思う。もうプロジェクトマネジメントのコンサルティングの仕事もずいぶん長くなったが、プロジェクトの失敗を真剣に自分の失敗だと考えている上位組織のマネジャー(例えば部長)というのをほとんど見かけない。数えてみると、片手で十分だ。

一番、多いのはプロジェクト(マネジャー)が悪いと言い切るマネジャー。まあ、プロジェクトマネジメントの導入自体を、自分たちは日々、経営努力をしているのに「現場が動かない」という問題意識で行っている組織が多いのだからある意味、当たり前かもしれない。中には、プロジェクトマネジャーにすべての権限を与えているのだから責任を持つのが当たり前と言い切るマネジャーもいる。

ここまでではないとしても、やっぱり、最終的な責任はプロジェクトマネジャーにあるというマネジャーも少なくない。

前者については、ほぼ、100%、そのような権限を与えていない。本当の意味で、プロジェクト「のみ」で上位組織(戦略目標)を達成するには、おそらく上位組織の部長の権限では足らない部分がある。もう1レベル上の権限か、あるいは他部門との戦略的な提携が必要である。SIプロジェクトなどでは一つの部の売上額に相当するようなプロジェクト(プログラム)があり、それを部長級やあるいはもう少し上の職位のマネジャーがプロジェクトマネジャーをやっているケースもある。あるいは全社上げての変革プロジェクトのプロジェクトマネジャーに役員レベルの権限を与えたりするようなケースがなくはないが、一般的にはそんな権限をプロジェクトマネジャーに与えるというのは考えにくい。


◆日本型組織はタテの関係が不明確なところに強みがあった

というよりも、日本の組織というのは上下の関係が良い意味でいい加減である。

最近はグローバル経営と内部統制で90年代よりは遙かに厳しくなってきたが、それでも多くの企業は緩い。例えば、権限を越えた判断をしても、うまくいっていればあまり問題にならない。そして、一方で、決定権者も自分の一存では決めれないということを平気で言っていた。「担当者の意見を聞かないと答えられない」と曰う部長なんていう存在があったわけだ。

このようなDNAがあるので、上位組織のマネジャーはやればできるという傾向があるが、このような考えは良いか悪いかは別にして、プロジェクトマネジメントのスキームには馴染まない。

このように考えていくと必要な権限を与えていくという考え方は無理があり、強みを残したままで、プロジェクトに対するスタンスを変える必要がある。


◆フォーメーションを球団に喩えてみよう

まず、大前提としてプロジェクトにどのように動いて欲しいか、つまり、戦略を明確に与えることだ。

あなたの組織を球団にたとえてみて欲しい。

フロント(GM)
監督
キャプテン

のそれぞれに誰が入るだろうか?PMBOK(R)は

フロント(GM):上位組織
監督:プロジェクトスポンサー
キャプテン:プロジェクトマネジャー

という想定になっている。ところが、組織を見ていると

フロント(GM):プロジェクトスポンサー
監督:プロジェクトマネジャー
キャプテン:プロジェクトマネジャー

となっている組織が少なくない。実は、まだ、これはましな方で、最悪なのは、

フロント(GM):上位組織
監督:プロジェクトマネジャー
キャプテン:プロジェクトマネジャー

となっている組織である。これでは支援は期待できないし、現場と経営が乖離し、経営の意図(戦略計画)が現場に伝わりにくくなる。この変形として、PMOを設立し

フロント(GM):上位組織(PMO)
監督:プロジェクトマネジャー
キャプテン:プロジェクトマネジャー

としている組織も多い。これはこれで問題がある。また、PMOということでいえば


フロント(GM):上位組織
監督:PMO
キャプテン:プロジェクトマネジャー

としている組織もある。それぞれに組織の事情を抱えているのでどれがよいとか、悪いとかいえない部分はあるし、それぞれのフォーメーションの中で「支援」をいうことを考えていくべきなのだが、最低限、役割を明確にすることは必要だろう。上に述べたように、プロジェクトマネジャーが全部やる、必要があれば「ケースバイケース」で支援するという上から目線では動かないことだけは目に見えている。

とりあえず、自組織の

フロント(GM)
監督
キャプテン

を洗い出してみて、誰が何をすべきなのか整理してみて欲しい。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「プロジェクトマネジャー養成マガジン」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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