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状況を既成事実化し、「○○だから仕方ない」という論理で意志決定をせずに済ませようという姿勢が見受けられる

第19回 ゲートコントロールの目的と実際(2010.11.08)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆機能しないデシジョンゲート

前回はプロジェクトマネジメントにおける意志決定のイメージを共有するために、リスクマネジメントに焦点をあて、意志決定をするとはどういうことかを説明した。今回は、前々回のライフサイクルにおける意志決定の議論に戻る。

意志決定の観点から重要なことはデシジョンゲートであることは、前々回に述べたとおりだ。ゲートと意志決定の関係をもう一度、整理しておく。ゲートとは意志決定が適切に行われているかどうかは判断するものであり、ゲート通過時点で必要な意志決定が行われていない、あるいは不適切であると判断すれば、プロジェクトはストップして意志決定を行わなくてはならない。

従来、プロジェクトの運用においては、(プロジェクト)マネジメントより作業が重視されてきた。ほとんどの管理は、作業の(品質)管理として行われ、全体のマネジメントは行われてこなかった。その名残は今でもある。それが、ゲートの位置づけである。

ゲートがゲートとして機能していない。これがいろいろな弊害を生んでいる。

◆ゲートが機能しない理由

組織がプロジェクトを統制するために、プロジェクトには2つの大きなゲートがある。計画のゲートとコントロールのゲートである。計画のゲートは組織がプロジェクトに権限委譲する最後のゲートである。統制のゲートは、権限委譲したプロジェクトの進捗管理と、終了予測の鍵になるゲートである。

これらのゲートが機能していない。つまり、意志決定が行われなくてもプロジェクトを前に進めていくことができるようになっている。例えば、計画ゲートを設定している企業で、ゲートを通過していなくても、プロジェクトを前に進めてよいことをルール化している企業がある。これをゲートというかどうかは若干疑問だし、これは論外だとしても、ゲート通過の前にプロジェクトの作業に着手しても特に問題視しない企業の方が圧倒的に多いのだ。

指摘すると、かえってくる反応には以下のようなものが多い。

(1)納期が厳しいので作業を止めてしまうと納期に間に合わなくなる
(2)顧客はすぐに作業を始めて欲しいといっているので、着手せざるをえない
(3)作業者のスケジュールを確保しているので、どうしてもその時期にやらなくてはならない
(4)レビュー会議の参加者の予定が合わず、現実的な時期にレビュー会議を開けない

ここでも無計画なやり方で、状況を既成事実化し、「○○だから仕方ない」という論理で意志決定をせずに済ませようという姿勢が見受けられる。日本型の組織は意志決定をしないという指摘を受ける原因になっているやり方である。

あるいは、進捗管理において、監視すべき情報の入手方法をあまり検討せず、すべてのメンバーからの報告ということで済ませているようなケースをよく見受ける。この指摘であれば、かえってくる反応としては、
(1)そんなデータを取ると作業の妨げになる
(2)顧客に対応してもらうわけにはいかない
といった意見が多い。これまた、仕方ないのでメンバーの知り得た情報を集めて対処しているという話だ。

◆ゲートを機能させるために

このように、ゲートが機能しなくてもプロジェクトがうまく進んでいるのであればまあ、それも一つの考え方という評価もできるが、結果としてプロジェクトの終盤になって、○○が抜けていたとかいう事態になることの方が圧倒的に多い。だとすれば、看過できる問題ではないのだ。

ゲートとするのであれば、どのような事情があろうと、ゲートとして機能させるべきだ。最低でも、指摘への対応のコミットメントをさせ、破られた場合にはプロジェクトを止めるくらいの処置をすべきである。

もっといえば、特に計画のゲートの問題はプロジェクト定義の問題である。遅くともプロジェクトの定義を始めたときには、いつ計画を作り、いつレビューをするかを確定している。上の(1)〜(4)を見れば分かるが、「○○だから仕方ない」とはならないはずだ。むしろ、意志決定を中心にどのタイミングで何を決めるということを「決めて」しまえば、後は粛々と決めていくだけである。そして、今度は決まらないことは仕方ないのではなく、決めるための努力が不足していた以外の何物でもなくなる。すると、(1)〜(4)はすべて言い訳になり、プロジェクトを止めないことの妥当性はなくなる。

日本的なマネジメントにおける、全員で決めるというやり方はすばらしいやり方だと思う。ドラッカーも絶賛しているように、グローバルに理解が得られるやり方である。

しかしながら、それは明示的に決めた場合の話であって、決めないで良い状況を作っておいて、みんなが合意するというのはグローバルな世界では理解されることはないだろう。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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