ラテラル・シンキングの第10回目です。最終回です。
今回は、視点や思考を含んだ自分の立場を変えることで、新たな発想を生み出す方法を見ていきましょう。
視点や思考を自分の立場からを変えることで、思考は大きく飛躍します。
会社などの組織でビジネスをやるときに、自分の立場を変えて思考できれば、さまざまなヒントを得ることができるのです。
たとえば、新商品の投入プロジェクトにおけるミーティングの場面を考えてみましょう。ここでは、話をわかりやすくするために、登場人物を会社の経営者、マネージャー、実務を担当するスタッフの三つに絞ります。
同じ会社の人間であっても、三者はそれぞれ別々の立場にあります。
もちろん企業理念や社是等の企業として全員で共有するものがあり、その観点からは立場は一緒であると言えるかもしれません。
しかし、現実には立場によって考え方や動き方が大きく変わってきます。
たとえば次のような具合です。
経営者: 赤字決算を避けるためにコストはできるだけ絞りたい
マネージャー: プロジェクトを失敗させないよう従来通りで進めたい
スタッフ: 自分のスキルが上がるような、やりがいのある仕事をした
ちょっと極端な例ですが、
経営者: コストを削減するために、プロジェクトメンバーを減らせ
マネージャー: 手堅くやるために、従来のメンバーで従来通りやりたい
スタッフ: 新しい方法がおもしろそうだ。それを試したい
同じことであっても、立場が変われば、どれもが「正しい」とも「正しくない」とも言えるのです。あるものに対して、人が評価や判断を行う場合には、それぞれの立場や考え方によって「正しい」と思う思うモノが違ってくるのです。
ラテラル・シンキングでは、そのような部分にも注意を向けていきます。
思考を飛躍させるためには「自分とは違う立場」で考えることも有効なのです。
そのひとつとして、相手の立場で考えてみよう、発想しようとするのが「当事者発想」です。
たとえば、プロジェクトにおいて、相手の立場に立って考えてみるのです。
すると
「確かに、自分が、その当事者の立場だったら、同じように行動する」
「自分が相手の立場にいたら、同じように発言する」
というようなことが感覚的にわかる場面が出てくるはずです。
自分の立場にとどまっていたら見えていなかった思考が、また問題解決のヒントがみえてくるのです。
これを発展させ、相手の上司の立場、部下の立場など想像できるようになると、より深い思考につながります。
「上司から、こんな感じの指示を受けているので、このような反応をするのだろう」
「部下との関係が○○なので、今回の要望がでているのかもしれない」等々です。
これを少し発展させれば、いろいろな思考を生み出すことができます。
たとえば、自分が扱っている商品やサービスになって思考を飛躍させるのです。
壁紙を販売するある企業の社長は、自分が壁紙になることにしました。
そして、次のような自問を続けました。
「壁紙に話ができたら、私に何と言うだろうか?」
「壁紙の関心事とはいったい何だろうか?」
「壁紙は何を心配しているだろうか?」
「私が壁紙であったら、どんな気がするだろうか?」
彼はこの問を毎日続けることで、壁紙の気持ちになるように努めました。
その結果、壁紙は、火事のことを心配しているだろうという想像が生まれました。
燃えやすく、燃えると有害物質を発生させてしまうという心配です。
その欠点を解消させるべく、耐火性があり毒性のない壁紙を開発し、大きな成功につなげたのです。
気持ちを想像させるだけでなく、実際の当事者になってしまうよう努めることで、思考を飛躍させるのです。
******* ラテラル・シンキング力を鍛えるクイズ その10 ******
PM養成マガジンの好川哲人です。
全10回にわたる、山下さんの「思考を飛躍させるラテラル・シンキング」はいかがでしたでしょうか?僕自身読んでいて、今まで感覚でやっていたことが整理できたように思いますし、また、新しい気づきも多くありました。
また、みなさんから応募していただいたクイズへの回答も、意表をつくものも多く、楽しみに拝見させていただいておりました。
ぜひ、このような柔軟な発想を、「体系的に」、プロジェクトマネジメントに持ち込んでいただけることを期待しています。
ということで、最終回のクイズは、好川の方からプロジェクトマネジメントをテーマにして出題させていただきます。
仕事の話になると、突然、ロジカルになって、「情報がないのに考えられない」と思わないでください。これまで9回のクイズと同じように、自由に考えてみてください。できれば、今までの記事を読み直してみて、一つつづ、試して見られると、ラテラルシンキングを業務に使っていく手がかりがみつけるでしょう!
なお、今回のクイズは最終回記念ということで、
賞品は著名なラテラルシンキングのクイズ集
「ウミガメのスープ」
第1巻〜3巻をセットでプレゼントします!
(4巻までありますが、4巻は版元品切れになっているので、3巻までのプレゼントになりました)。
ふるって応募ください。なお、今回のラテラル賞もこれまで同様、出題者が「好きな」ものを選びます。
それでは、クイズです。
S社では、重要プロジェクトの失敗が目立ち、3年前からPMOを設立し、全社的にプロジェクトマネジメントの強化に取り組んできました。その中でもっとも力を入れたのは、PMOによるリスク計画のレビューでした。
4年目を迎えるにあたってPMOマネジャーが交代することになりました。新しいPMOマネジャーAさんはリスク計画のレビュー制度の廃止方針を打ち出しました。プロジェクトの現場では、計画書や進め方の形は整いだしたものの、内容的には十分とはいえず、予期しなかったリスクでプロジェクトが窮地に陥ることもあります。
なぜAさんはそのような方針を打ち出したのでしょうか?
クイズへの回答はこちら ※終了しました。
よりご応募ください。締切は来週末、9月11日(金)24:00です。
選ばれた方の答えや、「惜しい!」という方の答え何点かは、当選者発表の際にご紹介します。本名はちょっという人は、ニックネームで応募してください。
山下貴史
マーケティング戦略コンサルタント。大学卒業後、大手シンクタンクへ入社。システム開発やコンサルティング業務を経て、戦略系コンサルティング会社に転職。リサーチ部門で、主に流通系をテーマに取り扱う。現在はコンサルティングファーム「IVC」でラテラル・シンキングを活用したコンサルティングやセミナーを展開。フィールドワークを分析が得意で、「人生はエンターテイメント」をモットーに、日々精進している。「世界一わかりやすいマーケティングの本」、「買う気にさせるメッセージマーケティング」、「あやしい商品が売れる、ごくまっとうな理由」など、著書多数。
本連載は終了していますが、PM養成マガジン購読にて、最新の関連記事を読むことができます。
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日時・場所:【Zoom】2024年 12月 10日(火)9:30-17:30(9:20入室可)
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講師:鈴木 道代(株式会社プロジェクトマネジメントオフィス,PMP,PMS)
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【講義】ステークホルダーを多面的に分析する
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