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No8. プロジェクトマネジメント計画策定《一般》(2011.05.25)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人

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【目的】プロジェクトの制約をマネジメントし、計画を最適化する

【用途】プロジェクトの計画と、ステークホルダへのプロジェクトの周知

【効用】プロジェクトの当事者意識を高める
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◆計画の2系統のプロセス

よくプロジェクトマネジメント計画策定が「形骸化している」という指摘をする人がいる。これはどういう意味だろうか?このKitでは、プロジェクトの計画策定プロセスのあり方と、形骸化の問題を考えてみたい。

プロジェクトマネジメントの計画作業は相当にシステマティックである。おそらく、ほかの分野では類を見ないくらいシステマティックで、その功績はPMBOK(R)にある。

計画のゴールは、プロジェクトマネジメント計画を策定すること、あるいはベースラインを設定することである。ここに向かって、大きくは2系統のプロセスがあり、プロジェクト計画という形で統合されている。一つのプロセスはプロジェクトの制約のマネジメントと計画の最適化をするプロセスである。もう一つはリスクを識別し、対応策を準備するプロセスである。

両者のプロセスの始まりは「プロジェクト要求の収集」である。プロジェクト憲章での要求事項はもちろん、ステークホルダの要求事項を収集し、整理する。そして要求に基づき、「プロジェクトスコープ定義」を行う。そして、WBSを作って、スコープを具体化する。スコープが具体化されたところで、上記のようにプロセスが分岐する。


◆制約のマネジメントと計画の最適化のプロセス


制約のマネジメントと計画の最適化のプロセスで、最初に行うのは、WBSに基づいてアクティビティの定義をすることである。アクティビティが決まったら、アクティビティに基づいて3つすべきことがある。

(1)「アクティビティの実行順序」を決める
(2)「アクティビティの所要期間」を見積もる
(3)「アクティビティの所要資源」を見積もる

の3つだ。(2)と(3)は相互調整をする必要があるが、(1)とは無関係に行う。ここの依存関係は極めて重要である。ここに、妙な前提を置かざるを得ないようだと、計画時点でプロジェクトは失敗しているといえる。たとえばよくある失敗は、所要期間に併せて実行順序を調整することだ。これを品質問題を引き起こす可能性が高まる。もう一つは実行順序と所要資源を調整する。これは資源不足をもたらす。

そして、(1)と(2)の結果を併せて、つまり、実行順序と所要期間から、「プロジェクトスケジュール」を作る。一方で、所要資源からすべきことは2つある。一つは、「資源のレベル決定」である。資源レベルは、スケジュールと調整をする必要がある。もう一つは「コスト見積もり」である。そして、コスト見積もりに基づいて「予算」を「決める」。コスト見積もりと予算は違うことに留意しておく必要がある。予算はコスト見積もりに、あとで説明するリスク予備費を加えたものになる。

このようにして、「予算」、「リソースレベル」、「プロジェクトスケジュール」の3つに配慮して、制約のマネジメントと計画の最適化を行う。


◆リスクマネジメントのプロセス

さて、もう一つのプロセスがリスクマネジメントである。こちらのプロセスでは、WBSに基づいて、WBSの各要素に対してリスクを識別し、対応していくことが基本になるが、その前に、枠組みを決める。枠組みの重要な要素は2つある。一つは、リスク予備費である。リスク予備費をリスク対応策に併せて決めるというやり方をするプロジェクトマネジャーがいるが、これは好ましくない。リスク予備費を不用意に膨らませるだけだ。リスクの取り扱い方針のおおもとになるのは、プロジェクトとしていくらのリスク予備費を取れるかに他ならない。つまり、枠組みのもう一つはリスク予備費に基づくリスクの取り扱い方針である。たとえば、リスク定義の考え方や、リスクの評価方法である。その上で、「リスク識別」を行い、「定性的リスク分析」、「定量的リスク分析」を行い、その上で、「リスク対応計画」を決める。

このようにして実行した2つの計画プロセスを統合するのが、プロジェクトマネジメント計画である。


◆主観的な決定と、論理的な決定

プロジェクトマネジメントの計画策定はこのように非常に整然と体系化されている。ただし、勘違いしてはならないのは、これらのすべてが論理的に決定できるものではないということだ。論理的な決定と主観的な決定が混じっている。

(1)プロジェクト要求<主観>
(2)スコープ定義<論理>
(3)アクティビティ定義<論理>
(4)アクティビティ実行順序<論理>
(5)アクティビティ所要期間<主観>
(6)アクティビティ所要資源<論理>
(7)資源レベル<主観>
(8)プロジェクトスケジュール<論理>
(9)コスト見積もり<論理>
(10)予算<主観>
(11)制約マネジメントと計画の最適化<主観>
(12)リスクマネジメント計画<主観>
(13)リスク識別<主観>
(14)定性的リスク分析<主観>
(15)定量的リスク分析<論理>
(16)プロジェクトマネジメント計画<論理>

プロジェクトマネジャーの本分とは、<主観>の部分を自らの持論に基づいて決定することであり、プロジェクトマネジャーの能力とは決定が結果としてどれだけ妥当だったかによって決まるものである。

そして、形骸化とは、主観的に決めるべきところを、何らかの形で逃げていることである。勘のよいプロジェクトスポンサーは計画のレビューをするときに、主観のところの理由を聞く。それに対して、自説を曲げてはならない。レビューで自説を曲げることは、そのプロジェクトの当事者から降りるということである。言い換えれば、やらされプロジェクトになるということだ。主観があるので創意工夫が生まれ、厳しい条件のプロジェクトを最後まで投げずにやっていけるのだ。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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