◆発明とイノベーション
ワイヤードのウェブサイトにIT業界の「スーパー・パパ」の異名をとるビル・ウォーカーの
「イノベーション」は「発明」ではない──飛躍を可能にする組織とは」
という記事が掲載されていた。この記事によると
発明は何か新しいものをつくり出すことだが、イノベーションはアイデアや手法の「使い方」に関する概念を提供するものだ
という違いがあるそうだ。さらに、発明はたいてい何らかの「もの」だが、イノベーションはふつう、行動や関わり方に変化を生じさせる発明を指すという。
発明それ自体がイノベーションとして成功することはめったにない。イノベーションは、(複数の)発明に基づいた既存のプロセスや使い方、または機能を、より良く進化させたものである。つまり、発明から進化が必要なのだ。
◆企業活動における発明とイノベーション
この整理に従って企業が日常行っていることを整理すると、新しい技術を開発し、特許を取得することは、発明の活動である。発明がイノベーションになるには段階があり、初期の段階では発明で作られたものは使い方に関する概念を含んでおり、従って、イノベーションになりやすい。
これは家電を考えてみるとよく分かる。日本の家電はずっと発明によって価値を保ってきた。新しい機能を発明し、価格を維持してきたわけだ。ところが、これができなくなってから、すごい勢いで失墜した。技術があっても売れないといっている状態になった。
負けた相手はイノベーションと低価格化である。たとえば、掃除機を例にとればダイソンやルンバにイノベーションで負けている。低価格化に負けている例は、そこら中にあるが、本題とは関係ないので、ここでは説明は割愛する。
イノベーションに負けた例では、2つのパターンがある。イノベーションに使う技術を持っている企業に負けた例と、イノベーションだけを行った企業に負けた例だ。
◆発明とイノベーションの結び付け方
前者の代表はダイソンである。ダイソンは自社で極めて高い流体力学技術を持ちながら、イノベーションに取り組んでいる。掃除機は分かりにくいかもしれないが、扇風機やファンなどになってくるとよく分かる。
後者の例はアップルだろう。iPhoneは市場に投入された当時は、成熟した技術を集めたと特に日本企業から言われていた。もちろん、その通りだったわけだが、発明では生まれない価値を生み出し、それが受け入れられたわけだ。
もちろん、発明とイノベーションにはダイソンのように同時並行で行われる例もあるが、主流になっているのは、発明のないイノベーションであり、日本企業が目指すのもその方向性だと思われる。
◆留意すべき点
ここで日本企業のやり方を見ていて明確にしておきたいことが2点ある。
一点目は、発明ではないだけで、技術的にレベルの低いものではないということだ。技術とイノベーションは別であるという考え方が出てきて、日本のイノベーションは技術と関係のないところで行われるものが増えてきた。いわゆるビジネスモデルイノベーションである。もちろん、その中に卓越したイノベーションはあるが、技術的な難易度を避けているとすればそれは見当違いだ。
高度な発明を組み合せて何か価値を作るには、技術力が必要である。
二点目は、イノベーションと中小企業が行っている自社技術を使った新製品開発の違いである。技術の初期の時代にはある意味で似ているが、異なるのはその範囲である。技術(発明)から何を作れるかを考えるのと、価値から考えるのではアプローチが変わってくる。
イノベーションで考えるべきことは、実現すべき価値である。実現すべき価値と使う技術(発明)を行き来しながら考えていくことがポイントになる。
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好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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