第105回 イノベーションはPDCAでは回らない(2016.11.16)
◆PDCAはイノベーションの阻害要因?
イノベーションのマネジメントにPDCAを取り入れようとしている組織が多い。組織のルールがあるところでイノベーションをしようとするとある意味で当たり前なのかもしれないが、これがイノベーションの阻害要因になっていることが少なくなくない。今回の戦略ノートはこの話題を取り上げたい。
そもそもPDCAとは何かという話もある。PDCAは、もともとは生産管理や品質管理などの管理業務を円滑に進めるための手法として、エドワーズ・デミング博士らが提唱した考え方で、決まっていることは計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Action)の順番に仕事や作業を進めていくことだけだ。
それぞれのフェーズをどのように考えてすべきかについてさまざまなノウハウはあるが明確に決まっているわけではなく、もっとも基本になると思われる計画をどのくらいの期間にとって行うかも決まっているわけではない。
◆イノベーションにおけるPDCAの適用
したがって、イノベーションのように不確実性が大きい仕事では、たとえば、
(1)機会(ニーズ)の定義
(2)アイデアを見つけ出す
(3)アイデアの実現
(4)価値の創造
といった全体のPDCAを作り、各フェーズでPDCAを回す、あるいはさらにフェーズを細分化した作業でPDCAを回すといった階層的なPDCAの運用をしているケースもある。
問題はイノベーションでどこまで計画ができるかである。ゴールに不確実性がある限り、どこかの段階では計画はできなくなる。つまり、ある階層まではPDCAを回せるが、そこから先はPDCAでは回らないので、PDCAではうまくいかないという認識ができているのだ。
◆イノベーションには計画しないマネジメントが不可欠
この問題は難しい問題であるが、基本的にはたとえば、上に述べたような全体は
PDCAで回し、それより細かなところはPDCAを使わない、つまり、計画をしないという考え方が必要だ。
その際に、計画をしないのでマネジメントをしなくてよいとは考えにくい。計画をしないマネジメントが必要である。
◆注目されるOODA
そこで最近注目されているのがOODAという方法だ。OODAは米国空軍パイロットのジョン・ボイドが提唱したもので、
Observe(観察):とにかくよく相手を観察する
Orient(方向づけ:過去の経験や知識を総動員して、何をすべか状況判断をする
Decide(決心):決心する
Act(実行):実行する
の4ステップからなる思考法、意思決定理論である。戦闘の現場をPDCAでマネジメントすることはできないので、PDCAに代わるマネジメント方法として考えられ、米軍では空軍に関わらず使用されるに至っている。
詳細は
【PMスタイル考】第115話:PDCAからOODAへ
を参考にしてほしい。
◆PDCAとOODAを統合する
組織におけるイノベーションにおいては、PDCAとOODAを統合してマネジメントすることが現実的であろう。
その際に問題になるのが、OOの部分である。これは、センスメイキングという名称で従来から組織心理学者のカール・ワイクを中心に発展してきたもので、日本語に訳すと「意味付け・納得」と呼ばれている。OODAをイノベーションにうまく適用するには、センスメイキングがポイントになると考えられるようになってきた。
この話は次回したい。
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2.PDCA再考
3.OODAの概要
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6.OODAとアジャイルプロジェクトマネジメント
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「
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コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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