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イノベーションの風土づくりの中で、もっとも効果的かつ、現実的なのは「問い」であり、問いを生み出すのは好奇心である

第21話 (最終回)イノベーションの風土づくり(3)〜問いから始めるイノベーション(2013.08.02)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆問いと好奇心

イノベーションの風土づくりの中で、もっとも効果的かつ、現実的なのは「問い」である。問いを生み出すのは好奇心だ。好奇心はイノベーティブなリーダーのエンジンだといってもよい。好奇心のないところにイノベーションはない。

アップルのスティーブ・ジョブズやグーグルのエリック・シュミット、アマゾンのジェフ・ベゾスなどに関する書籍や記事を読んでいると、極めて好奇心が強く、常に何か「問い」を発していることが印象的である。

たとえば、グーグルでは戦略を策定するに当たって、まずは答えを出さなくてはならない「30の問い」を練り上げることから始めるそうだ。

◆好奇心を持ち続けるむずかしさ

問いを発し続けることは、好奇心を持ち続けることで、これが意外と難しい。たとえば、あなたが会社に入ったときにどんなことを質問したかったかを考えてみてほしい。自分たちはなぜ仕事をしているのかといった質問もあれば、なぜこの製品を作っているのか、自分たちの作っている製品はどのように世の中の役にたっているのかといったことを質問した(したかった)のではないだろうか。

会社に入って時間がたってくると、そんな初歩的な疑問を持たなくなる。よくいえば、仕事になれて成熟してくるわけだが、本当に理解したわけではなく、製品を作ることに対して好奇心をなくしてしまう。仕事だから当たり前だと思ってしまうのだ。このようなモードに入ると、なかなか、疑問を持つことは難しくなる。

◆うまく回らない組織は基本がぶれていることが多い

僕がコンサルタントとして組織に入るときに心掛けているのは、よそ者であり続けることだ。もちろん、クライアントを理解することは重要なので理解はするが、同調はしないようにしている。好奇心を保つためである。

そして、初歩的な質問がどんどん、出てくる。うまく回っていない組織や仕組みは基本のところ、つまり、初歩的なところがぶれていることが多い。たとえば、何 のためにこの事業をやっているかといったことで、もっともらしい戦略はあるのだが、なぜその戦略なのかというところが、ビジョンや顧客の常識とずれている といったことだ。ここに問題点があることが多い。

イノベーションにとってこの好奇心が生命線であるといっても過言ではない。したがってリーダーは組織が好奇心をもちづけるようにしなくてはならない。

◆改善とイノベーション

実は日本企業はこのようなメンタリティを持っているところが少なくない。改善である。改善もこれはなぜ、このやり方なのだろうという疑問から始まる。しかし、改善とイノベーションは少し異なる。改善における着眼点は問題点である。

改善という概念を考えた人はえらいなあと思うのだが、業務で行っていることすべてに疑問を持つようになると、オペレーションは回らなくなる。基本的には受け入れ、その上で問題点を変えていくという切り分けをしているのが改善だ。

これに対してイノベーションを目指す問いは、そのような制約がない。すべてが疑問を持つ対象になる。上に述べたように、業務に慣れてくるとこれが逆に難しいのだ。


◆問いを持つのが難しい3つの理由

なぜだろうか?いくつかの側面からの理由があるように思う。一つ目は、現状維持をしたいと思うことだ。現状維持をしたい理由は2つある。一つは、現状を変え るということは現状否定で、問題があることを認めることである。従って、成果に明確な問題があれば別だが、そうでなければこのような疑問は持たない。もう 一つはやり方に慣れてしまうと、そのやり方に従うことが楽で、変えたいとは思わない。

二つ目は、忙しいことだ。現状がどうだとか考えている暇はない。だから変革が必要だということで水掛け論になるわけだが、現実問題としては目の前の仕事をしているうちに日々が終わってしまう。

三つ目は、心理的な理由で、疑問を持つことは組織や上司の方針に逆らっていると思われるのではないかと思う。あるいは、そう思われなくても「あいつはまだ、そんなことを言っているのか」と馬鹿にされることだ。このように思う人は意外に多い。

コンサルタントとして入る場合にも、初歩的な質問をするとそんなことを知らないのかと言わんばかりの態度をとられることが少なくない。しかし、初歩的な質問を積み上げていると、問題がある場合には答えの辻褄が合わなくなってくるのだ。


◆リーダーの風土作りにおける役割と手法

リーダーの風土づくりでの役割は、まずはこの3つに対して手を打ち、問いが出てくる風土にしていくことだ。この3つの理由について理解しておく必要があるの は、この3つの状態は自然な状態であるということだ。つまり、やっていることに疑問を持とうといった掛け声だけでは変わらない。グーグルの例のように、仕 組みを作らないと変わらないということだ。

仕組みとしては、ホールシステムアプローチのような仕組みづくりが有効である。たとえば、

・ブレーンストーミング
・ダイアログ
・ワールドカフェ
・AI
・フューチャーサーチ

などの対話の仕組みを取り入れ、組織的コミュニケーションを活性化していくことが望まれる。


◆終わりに

本連載は今回で終わります。本連載では、アイデア出し、アイデアからイノベーションの実行へ、実行の管理、イノベーションの風土づくりという流れで、初歩的なことを説明してきました。

次回からは、応用編としてもう少し深く、プロセスなどに踏み込んだイノベーションマネジメントの方法を解説したいと思います。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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