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創造性のある人材を見つけ出し、イノベーションの精神とプロセスを叩き込まないとイノベーションはできない。イノベーションに人材育成が必要だと思っている人はあまりいない。偶然生まれるというイメージを持ちすぎ

第13話 イノベーションのエキスパートをどう育てるのか(2013.03.18)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人

◆「グローバル・イノベーション・バロメーター」

ゼネラル・エレクトリック(GE)が毎年、「グローバル・イノベーション・バロメーター」という調査をしている。これはイノベーション戦略に直接かかわっている経営者の意識調査で、2013年度は25か国、3100人の経営者が対象になっている。

日本にとっては、毎年、ショッキングが結果が出てくる調査だが、今年もあまり変わっていない。

グローバル・イノベーション・バロメーター

今年、話題になった調査項目をいくつか紹介すると、まず、この設問。

「会社にとってイノベーションは優先的課題である」
   →世界平均 91%、日本80%

この傾向は毎年変わらない。

◆企業がイノベーションを成功させるために必要な能力

次の設問は、

「企業がイノベーションを成功させるためにはいかなる能力が重要か」

で、複数回答可で、以下のような選択肢が並ぶ。

(1)長期的なイノベーションプロジェクトに投資する能力
   →世界平均59%、日本40%
(2)イノベーティブな人材の獲得と確保する
   →世界平均73%、日本57%
(3)イノベーションをもたらす環境と文化を作り出す
   →世界平均64%、日本43%
(4)リスクを取り、マネージする
   →世界平均60%、日本49%
(5)イノベーション活動に予算を配分する
   →世界平均54%、日本26%
(6)イノベーションを育成するプロセスや仕組みを作る
   →世界平均52%、日本34%

といった感じだ。世界に比べるとイノベーションを戦略課題と認識している経営者は少ないものの、それでも80%の経営者が重要だと認識している(実は、80%の内訳は、大変重要と、重要で、重要は世界平均より高く、大変重要が世界平均より15%低い)。

◆イノベーションは闇研究から偶然生まれる

にもかかわらず、能力に関する設問の結果を見ると、金をかけず、人材も要らない。環境もいらないし、リスクマネジメントも不要。育成プロセスも要らないという経営者がやまほどいるわけだ。

調査分析の監修を行った一橋大学イノベーション研究センターの米倉誠一郎先生が「イノベーションが闇研究から偶然生まれるというのは、スポーツ界の根性論と一緒だ」とコメントされたのが話題になったが、まあ、そういうことだ。

僕がお付き合いのある経営者の中にもこういう感覚の人が多いので、この結果は、よく分かる。

ついでにいえば、プロジェクトマネジメントについて経営層の無理解を嘆くプロジェクトマネジャーはたくさんいるが、イノベーションについて嘆く人にはあまり出会わないので、現場の意識も似たようなものだということだろう。

◆技術とビジネスモデルだけでいいのか

ちなみに、この調査で面白いのは、必要能力の設問に対して、日本が世界平均より高いものが2つあった。

新しい技術を開発する → 世界平均66%、日本69%
新しいビジネスモデルを開発する → 世界平均45%、日本51%

よくいえばあくまでも現実的であるが、もう、そういうレベルでどうにかなる時代ではないという認識不足のような気がする。

◆イノベーションのエキスパートをどう育てるか

「グローバル・イノベーション・バロメーター」の紹介が長くなったが、今回、話をしたかったのは、人材育成である。イノベーションに人材育成が必要だと思っている人はあまりいない。偶然生まれるというイメージを持ちすぎである。

しかし、ちょっと考えてみればそれは思い違いだと分かる。前回、模倣の話をしたが、模倣するにもスキルが必要だし、さまざまなスキルがある。

創造性のある人材を見つけ出し、イノベーションの精神とプロセスを叩き込まないとイノベーションはできない。その中で重要なのは繰り返し、やらせることだ。

イノベーションのスキルの源泉は成功ではなく、失敗である。エキスパートを育てるには失敗をさせることが重要である。ところが、日本の企業はさまざまな理由により、それを良しとしない。折角失敗を経験した人材を次のチャレンジでは外し、別の人に担当させる。これほど、もったいないことはない。失敗させることの重要性を分かっていないことの証明だ。

◆トレーニング

もちろん、そのような実践と絡めながらトレーニングも必要である。たとえば、

・問題分析
・問いを立てる
・さまざまな人の意見を傾聴する
・アイデアを提案する
・ブレーンストーミングをリードする
・アイデアを評価する
・プロトタイプを開発する
・プロジェクトを評価する
・プロジェクトをマネジメントする

といったトレーニングが必要である。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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