第7回 コンセプチュアル思考とイノベーション(3)〜主観でアイデアを考え、間主観性を得る(2015.09.16)
◆意思決定をしない/できない
日本企業でイノベーションが生まれない理由というのはいくつもあるが、その中の一つに意思決定の問題あるように思う。今回はこの話をしよう。
日本人ビジネスマンは意思決定をしないとよく言われる。明確に意思決定をしないままで実行してしまう。あとは、調整をしながら進めていく。国立競技場の建て替えや、オリンピックエンブレム問題といった大きな課題でも同じやり方がされているのは驚きだ。
こういうやり方とアジャイルを重ね合わせる人もいるし、米国流のやり方とは違うがこのようなやり方が一概に悪いとは言えない部分もある。ただ、本当に意図的にそうしているのかというと怪しい部分もある。意思決定しないのではなく、できないと指摘する人もいるし、確かにそういう側面もある。
◆意思決定は主観から始める
なぜ意思決定できないのかと考えたときに、真っ先に思い当たるのが意思決定の責任を畏れているからなのだが、そもそも、意思決定というのは、主観から始まる。この点を理解していない人が多いような気がする。
意思決定のスタートは決定されるべき選択肢を決めることから始まる。イノベーションの選択肢はアイデアそのものこともあるし、やる/やらないという選択肢のこともある。
極論すれば選択肢が決まってしまえば数々の意思決定手法があり、比較的、客観的に決めることができる。これに対して、選択肢はいくら情報を集めても客観的に決めることはまず、難しい。最後は主観的に決めなくてはならない。
だから、そのあと、客観性を持たせるように、意思決定手法を使う。これは、コンセプチュアル思考の主観/客観の軸を使った思考そのものである。
イノベーションにおける意思決定の始まりはテーマに関するものである。アイデアを得たときにそれを実行するかどうかの意思決定である。ここが客観的になり過ぎている。
◆データやロジックからはイノベーションは生まれない
なぜ、客観的になるかというと責任を取りたくないからだ。つまり、全員が一致してそのテーマをやろうと決めたという状況を作りたい。だから、データとロジックに基づいて提案をする。実はここに矛盾がある。
データとロジックに基づいて意思決定できるものであれば、そんなテーマはイノベーションにならない。イノベーションには不連続性が必要であり、データとロジックで必要性を説明できるものは改善のテーマに過ぎない。イノベーションのイノベーション足る所以は、やる人の想いにある。これは極めて主観的なものである。場合によっては理解されないだろう。
データやロジックから一旦離れ、テーマを決めるので不連続性が生まれる。
ただし、そのようなテーマを手掛けるときに、客観性がどのようにして生まれてくるかに留意する必要がある。不連続なテーマをテーマ設定をした段階で客観的になることはあまりない。
◆必要なのは間主観性という客観性
あまりと書いたのは客観性とは何かという問題に依存するからだ。客観性の中には間主観性と呼ばれるものがある。その場にいる人たちが賛成すれば客観的だと考える。テーマが主観的な想いであっても、間主観性という客観性は成り立つ可能性がある。データをねつ造することはできないが、主観的なロジックを共有できればいい。
ところが本当の客観性を求めてしまうとほぼできない。そして、「そのテーマはまだ時期尚早だ、引き続き情報を集めよう」とか、「自社には適さない」という判断になって、消えていく。
そうならないようにするには主観的に考え、間主観性という客観性を確保するように考えればいい。
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
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