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第7回 上司を協力者にする(2008.09.26)

インフルエンス・テクノロジーLLC  高嶋 成豪


 プロジェクトリーダーに限らず、組織で働く人たちの多くは、上司に手を焼いていると思います。リーダーシップを発揮しない、責任をとらない、指導してくれない、調整してくれないなど、上司がやるべきことをやらない。なかには、上司に自分が関わるプロジェクトの足を引っ張られたことのある方もいらっしゃるのでは?

<必要な人材の獲得を拒絶されたM氏>  X社、イメージ処理ソフト開発チームのサブリーダーM氏は、締め切りのプレッシャーに追われていました。今度のバージョンアップでは、これまでにない機能を加えて、競合するZ社の製品に先んじなければなりません。この分野は有望な市場を抱えており、デジタルカメラや携帯電話のカメラなどに競争力をもたらしてきました。すぐれた製品を提供するため、事業部では優先順位を高めて取り組んできたのです。それゆえ納期が近くなると事業部長みずから現場に足を運ぶほど、緊張感が高まります。今回はイメージ認識のプログラムを開発するため試行錯誤してきましたが、ここにきて行き詰まりを感じます。メンバーの経験と知識だけでは限界があるようです。連日泊まり込みが続き、M氏はいよいよ応援を要請することにしました。この件で助けてもらえる人材は、同じイメージ技術開発チームのO氏をおいて他にありません。O氏に引き受けられそうかどうか探りを入れてみたところ、O氏も今関わっているプロジェクトで手が一杯とのこと。そこでM氏は、M氏とO氏の直属の上司でもあるSマネジャーに、O氏にプロジェクトを手伝ってもらえるように依頼しました。ところがS氏は、M氏の話にいい顔をしません。Sマネジャーもこのプロジェクトの重要性は認識しているはずです。M氏のチームではO氏が欠かせない人材であること、納期に間に合わせるためには、今O氏の協力が必要であることなどを説明しました。しかし、今いる人材で対応するように、必要であれば以前協力を仰いだ協力会社の技術者を使うようにとのこと。「それでは期待されるレベルに達することはできない・・・」立ちつくすM氏でした。

 多くのリーダーたちが、上司の無理解と非協力的な態度に阻まれて、妥協を強いられています。しかし、それだけに上司に影響をおよぼし、味方につかられるかどうかが、プロジェクトに関わる私たちに厳しく問われているとも言えます。一方で、上司を動かし仕事を進めているリーダーも少なくないからです。では、どう考えて対応するのが効果的なのでしょうか?


上司は万能ではない

 まず第一に、「上司なら何でもできる」あるいは「上司は部下のために何でもすべきだ」という考えを捨てるべきでしょう。「そんなのあたりまえじゃないか」と思われるかもしれません。しかし、私が会ってきたプロジェクトリーダーのうち、少なくない人数の人たちが上司が自分の期待に応えるまで黙って待っていました。また何人かのリーダーは、期待に応えてくれないといって、上司を面と向かって責めたてました(彼らの共通点はまじめな正義漢ということ)。その結果会社に居づらくなって会社を辞めた人もいます(彼にとってそれでよかったんだろうか?)。私は上司への過剰期待で自滅する人は、少なくないと思います。これは日本だけの問題ではないようです。『影響力の法則 現代組織を生き抜くバイブル』の著者、コーエン・ブラッドフォード両博士も、部下による期待のしすぎに警鐘を鳴らしています。現代は、テクノロジー、顧客、経済環境などの変化が早く、上司がすべてを知ることは難しい。上司になんでも期待することは現実的ではないと。その代わりに、上司をパートナー(共同経営者)と考えられないか。両博士がコンサルティングしてきたすぐれたリーダーたちは、上司をパートナーのように考える傾向が強かったそうです。

"上司はパートナー"と考える  上のM氏が、Sマネジャーをパートナーと考えたら・・・M氏にはS氏の目標をともに達成していく責任がある。パートナーが外から見てよく見えるように手助けする必要がある。S氏の協力者として、相談に乗ったり、みずからの専門知識で貢献することができる。したがって、少なくともS氏の目標、抱えている問題や課題、幹部から期待されていること、他のマネジャーからのプレッシャーなどを知っていることが望まれます。  また、自分の知っていることで、上司の役にたちそうなことは、どんどん知らせること。プロジェクトの進捗。クライエントの期待。現場で起こっている問題など、上司が欲しがる情報を、部下側が握っていることは少なくありません。以前、ある大手のメーカーの社長にうかがったところ、部下にもっとも求めるのは、現場の情報を自分のもとにあげることだといっていました。これは、すべての上司が多かれ少なかれ求めていることと考えてよいでしょう。上司にとって、意思決定のための情報が少ないことがほとんど最大の不安要因です。ですから、あなたが正確な情報源であると思えば、上司はあなたを信頼します。ここにカレンシーの交換のチャンスが生まれます。逆に、何か隠していると思えば、その部下を遠ざけておきたいと思うでしょう。気がつくと仕事が進まなくなっているのです。  上司との関係がギクシャクしている、と感じたら、そのことを率直に話し合ってみるのもよいはずです。「私はマネジャーと上手くやっていきたいと思っています。協力して、いい仕事をしたいのです。しかし、最近うまくいっていないような気がします。気になることがあったら、教えていただけませんか?」腹を割って話すことで、きっかけがつかめるかもしれません。もちろんこちらにその気があれば、です。こんな恥ずかしいことまで言って、このプロジェクトを成功させる価値があるのか?あるいは、ベストの状態でないままに妥協してもよいのか?少しの時間、考えてみる価値はあると思います。

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5.ステークホルダーと良い関係を作る・WinWinの関係
 ・信頼を得る
 ・チームを結束させる
 ・(演習5)期待と要求のロールプレイ
6.まとめ
 ・(演習6)カレンシーを再考する
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著者紹介

高嶋 成豪    インフルエンス・テクノロジーLLC マネージング・パートナー

人材開発/組織開発コンサルタント。インフルエンス・テクノロジーLLC.マネージング・パートナー。ゼネラル・モーターズ、ジョンソン・エンド・ジョンソンなどで人材開発に従事。現在リーダーシップ、コミュニケーション、チームビルディング、キャリア開発のセミナーを実施し、年間約1000名の参加者にプログラムを提供している。ウィルソンラーニング・ワールドワイド社によるリーダーシッププログラム、LFG(Leading for Growth:原著はコーエン&ブラッドフォード両博士の共著“Power Up”)のマスター・トレーナー。2007年『影響力の法則 現代組織を生き抜くバイブル』(原題“Influence without Authority”)を邦訳。コーエン&ブラッドフォード両博士から指導を受け、「影響力の法則」セミナー日本語版を開発。日本で唯一の認定プロバイダー。筑波大大学院教育研究科修了 修士(カウンセリング) 日本心理学会会員 ISPI(the International Society for Performance Improvement)会員 フェリス女学院大学講師

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