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マイクロソフトのPM情報ツール Project を使って、プロジェクトをうまくマネジメントしていく方法を解説し、その解説を通じて、MS Project の利用方法の解説します。第18回は、プロジェクト・スコープ記述書です

第18回 PMBOK(R)テンプレートの作成 その4(2008.07.25)

アイ・ツー・マネジメント 代表取締役 岡野 智加

今回のPMBOK(R)テンプレートの紹介は、3大文書である「プロジェクト・スコープ記述書」をご紹介したいと思います。

尚、ご紹介するテンプレートは、私が主査を行っております、PMI日本支部 PMBOK委員会 実用化ワーキング・グループで作成したもので、現在、PMI日本支部会員であれば、PMI日本支部のホームページより無料でダウンロードすることができます。

事前にダウンロードしてから解説を読んで頂くと、より分かりやすいと思います。

更に、9月22日に行われる「Microsoft Office Projectの標準化」セミナーでもPMBOK(R)テンプレートを配布します。

■プロジェクト・スコープ記述書の構成
プロジェクト・スコープ記述書は、プロジェクトのスコープを記述した文書です。

PMBOK(R)では、スコープは以下の2つがあります。

●成果物スコープ:プロジェクトが創出するプロダクト、サービス、所産に特有の特性や機能
●プロジェクト・スコープ:規定された特性や機能を持つプロダクト、サービス、所産などを生み出すために実行しなければならない作業

よって、プロジェクト・スコープ記述書とは、どのような作業を行い、どのような成果物を創出する必要があるのかを具体的に記述した文書なので、Whatを記述します。
尚、紹介するテンプレートでは、プロジェクト・スコープをわかりやすくするために、プロジェクト作業スコープと記述しております。

プロジェクト・スコープ記述書の章立ては以下の通りです。
Whatを中心に記述するので、「1.プロジェクト成果物スコープ」、「2.プロジェクト作業スコープ」、「3.除外事項」がメインになります。

また、それらの内容が、PMBOK(R)に記述されている項目にどのように対応しているかも以下に示しています。
PMBOK(R)には、プロジェクト・スコープ記述書に書くべき項目が以下のように色々書かれていますが、それらはすでにプロジェクト憲章やプロジェクトマネジメント計画書に記述されているので、今回のテンプレートでは、プロジェクト・スコープ記述書にはWhatにフォーカスして記述しました。

このように、PMBOK(R)では、3つの主要文書に書くべき項目が重複しています。
同じような内容が3つの文書にまたがって記述されていると、いざ参照する場合、どれを参照すればいいのか迷ってしまいますし、変更を行う場合、どの文書を変更すればいいのか迷ってしまいます。
したがって、今回のテンプレートでは、それぞれの文書は、メインとして何を記述するのかを明確にし、書くべき項目を絞ったのです。
つまり、プロジェクト憲章には「Why?」を、プロジェクトマネジメント計画書には「How?」を、プロジェクト・スコープ記述書には「What?」を記述することにしました。

プロジェクト・スコープ記述書を作成するにあたってPMBOK(R)では、以下のインプットが記述されていますが、今回のテンプレートの項目は、どのインプットを参照して作成したかの対比が以下の通りになります。
  
「プロジェクト・スコープ記述書暫定版作成」のプロセスとの対応しか表示されていませんが、実際の現場で、暫定版を作成するのか?という議論があり、今回は、暫定版を作成することを前提として考えないことにしたので、結局、プロジェクト・スコープ記述書を作成するためには、以下のインプットが必要であると2つのプロセスをまとめて考えました。

 1 組織のプロセス資産
 2 プロジェクト憲章
 3 プロジェクト作業範囲記述書
 4 組織体の環境要因
 5 プロジェクト・スコープ・マネジメント計画書
 6 承認済み変更要求

尚、「5 プロジェクト・スコープ・マネジメント計画書」は、どのようにプロジェクト・スコープ記述書を作成するのかを記述した文書なので、プロジェクト・スコープ記述書の内容には直接関係ありません。
また、「6 承認済み変更要求」は、「統合変更管理」で承認された変更要求がインプットとなるので、プロジェクト・スコープ記述書を変更する際に直接関係します

■プロジェクト成果物スコープ
まずは、プロジェクト成果物スコープを記述します。
つまり、本プロジェクトで創出する必要のあるプロダクト、サービス、所産を洗い出し、それらの特性や機能を記述します。

PMBOK(R)では、プロジェクトでは、プロダクト、サービス、所産の3つを創出すると記述されています。それらの定義は以下の通りです。

●プロダクト:生産され、定量可能な、それ自身で最終生産物あるいはその構成要素の生産物となる人工品。
●サービス:遂行される有用な作業で、実態のあるプロダクトまたは所産を生み出さないもの。生産や流通をサポートするビジネス機能の実施など。
●所産:プロジェクトマネジメントのプロセスとアクティビティを実行して得られるアウトプット。
所産には、成果(訓練された要員など)と文書(プロジェクトマネジメント計画書など)がある。

よって、プロジェクト成果物スコープには、上記3つについて本プロジェクトで創出するものは具体的にどのようなものかをもれなく記述する必要がある。



■プロジェクト作業スコープ

プロジェクト作業スコープには、「1.プロジェクト成果物スコープ」に記述した成果物を創出するためにどのような作業を行うのかを記述します。
これは、WBSの基になるので、WBSの主要な構成を記述します。



本テンプレートでは、「1.プロジェクト成果物スコープ」、「2.プロジェクト作業スコープ」については、プロジェクト憲章に要求事項を記述しているので、それを基に詳細を明記します。

■除外事項
本プロジェクトで除外する事項を明確にして記述します。
特に境界線上にあるあいまいなものを特定し、本プロジェクトに含めるのか含めないのかを決定して記述します。


本テンプレートでは、除外事項についてはプロジェクト憲章にも記述しておりますが、プロジェクト・スコープ記述書にて最終決定をして明記します。

■成果物受入基準
完成した成果物の受入プロセスとその基準を定義し、受け入れ検査の方法と検査基準をはじめに合意しておきます。


成果物受入基準についても、本テンプレートではプロジェクト憲章に記述しておりますが、プロジェクト・スコープ記述書が最終決定事項となります。

■制約条件、前提条件
プロジェクト憲章に記述されている制約条件、前提条件を基に、最終的な制約条件、前提条件を明確にしてプロジェクト・スコープ記述書に明記します。

プロジェクト憲章は、プロジェクトを承認した上位管理者から発行される文書ですが、プロジェクト・スコープ記述書はプロジェクト・マネジャーがこれから実際にプロジェクトを実行するために基とする文書なので、実行者として追記するべきことを付け加えていきます。

尚、制約条件や前提条件は、計画のプロセスの一環として随時識別を繰り返していきます。

今回のテンプレートでは、プロジェクト憲章とプロジェクト・スコープ記述書で重複する部分は、プロジェクト・スコープ記述書が最終決定となるので、変更は、プロジェクト・スコープ記述書を変更するようにしました。
 

次回のコラムでは、プロジェクトマネジメント計画書に添付される各知識エリア毎のマネジメント計画書のテンプレートを紹介します。

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 4.プロジェクト活動計画書の書き方
 5.予算計画書の書き方
 6.リスク計画書の書き方
 7.ステークホルダー計画書の書き方
 8.コミュニケーション計画書の書き方
 9.プロジェクト計画全体の整合と各計画書の調整
 10.プロジェクト計画書の使い方と段階的詳細化
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著者紹介

岡野 智加    アイ・ツー・マネジメント 代表取締役

大手ISベンダーなどにてOracleをはじめとするソフト・トレーニングの講師経験を経て、現在、Microsoft Office Projectセミナーに特化した教育事業経営を行っている。
1998年に日本初の、プロジェクトマネジメントの世界標準であるPMBOKTM(Project Management Body of Knowledge)に準拠したMicrosoft Office Projectセミナープログラムを独自開発。これまでの単なる操作方法を習得するセミナーではなく、プロジェクトマネジメントプロセスに従ったMicrosoft Office Projectの実践的活用ノウハウが習得できるセミナーを開発。
開発当初からこの今までに無い実践的な内容のセミナーは、当時、プロジェクトマネジメントをいち早く導入しようとしていた日本の最大手企業から高い評価を得る。
マイクロソフト社からも評価され、、2002年には日本初の米国マイクロソフト社公認Microsoft Office Project Official Partnerに認定される。
2002年に出版した書籍は、これまでの単なる操作方法を解説する書籍ではなく、プロジェクトマネジメントのプロセスに従ったMicrosoft Office Projectの活用方法が解説されているということで、大ベストセラーとなり、売れ続けており、その後の書籍及び日本中のセミナー企業へ多大なる影響を与える等、Microsoft Office Project講師として日本におけるリーディングパーソンである。

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