◆前回までの話
少し、間が空いたので、簡単に復習をしておく。
現在、プロジェクトマネジャーの成長に役立つ経験の議論をしている。その中で、
(1)業務上の課題
(2)他の人とのつながり
(3)修羅場
(4)そのほか
のカテゴリーを取り上げ、前回は(1)の業務上の課題について考えた。
◆他の人とのつながり
プロジェクトマネジャーの育成には、コミュニティ(PMコミュニティ)が欠かせない。PMコミュニティはオブジェクト指向などの技術コミュニティとは少し異なる面がある。
プロジェクトマネジメントのテクニカルスキルに関する議論や情報交換をし、テクニカルスキルを研鑽していくという点では同じだ。しかし、PMコミュニティには、これ以外に他の人とのつながりを作るという大きな役割がある。もちろん、技術コミュニティでもコミュニティにその役割がないわけではない。しかし、どちらかというと、技術コミュニティの場合には情報源や相談相手としての人脈作りという側面が大きい。
これに対して、PMコミュニティの場合は、プロジェクトマネジャーとしてのキャリア形成の上で役立つ人脈作りという側面が大きい。といっても、転職のときに役立つ人脈作りといったものではない(結果としてそれもあるかもしれないが、、、)。
キャリア上のつながりとは、大きく分けると2つある。ひとつは、ロールモデルである。もうひとつは自分自身のキャリア上の価値観を確立するために必要な議論、共感などをできる相手である。
これらの人との出会いはプロジェクトマネジャーの成長にとって欠かせないものである。
◆ロールモデル
プロジェクトマネジャーが成長するには、手本となる「ロールモデル」を持つことは不可欠だといえる。どのようなプロジェクトマネジャーになるかを抽象的にイメージするのは難しく、特定の人を手本とするのが現実的だからである。また、現実に存在する人を目標にする場合、その人とのコミュニケーションにより成長動機が得られる場合も少なくない。その点でもメリットがある。
ところが、日本の社会というのは、ロールモデルというとすぐに「社内」となる。現に、米国に比べると、名前で仕事をしているプロジェクトマネージャーは極端に少ない。これがプロジェクトマネージャーという仕事の魅力をなくす一因となっており、延いてはそれが組織のプロジェクトマネジメント力の低下につながっている。
背景には日本ならではの価値観があり、本当に有能な個人を表に出したくないという企業文化が根強いようだ。プロジェクトマネジャやマネジャーは特にその傾向が強い。単にロールモデルだけであれば社内コミュニティだけでも十分かもしれない。しかし、後に述べるように価値観の醸成という問題もあり、外部にもロールモデルが持てるに越したことはない。
◆IPAプロフェッショナルコミュニティ
余談になるが、ITスキル標準には、IPAがイニシャティブを取るプロフェッショナルコミュニティというものがある。2004年末現在、3つのコミュニティがあり、そのひとつがプロジェクトマネジメントである。
この活動は、ITスキル標準というスキルモデルに合わせて、ロールモデルを提供しようとしているようだ。注目に値する。
◆価値観をめぐる葛藤
仕事やコミュニティ活動を通じて多くのプロジェクトマネージャーにお会いして、強く感じるのは、明確な価値観を持つ人が少ないことである。もちろん、顧客を大切にするとか、技術を重視するとか、利益を大切にするといったビジネス的な面では明確な価値観を持っているプロジェクトマネージャーはたくさんいらっしゃる。
ところが、ここに個人的な問題が入ってくると、意外なくらいあいまいというか、価値観を持つことを逃げている人が多い。大方の考え方は仕事優先、あるいは、プライベート優先といった二極的なものである。
これも一種の価値観には違いないが、あまりにも稚拙である。著者はプロジェクトマネジャーというのはキャリア(職業)としないとできない仕事だと常々主張している。これは原体験があるのだが、要するに、そのプロジェクトは一度任されてしまえば、もう放りだすことはできない。一方で任される仕事はメンバーの力を借りない限り、目的は達成できない。かといって、プロジェクトというのは性格上、組織横断的であり、プロジェクトマネジャーがメンバーに対して持てる権限は限定的である。
プロジェクトマネジャーの仕事というのは矛盾に満ちている。
このような状況で、明確な価値観がなく、目先の状況を乗り切るために、仕事を優先しろというタイプでは持たないのだ。ここには必ず「価値観」が必要である。なおかつ、バランスを取るためには、ざまざまな価値観の人との出会いが必要だ。
その意味で、プロジェクトマネジャーにとって価値観はスキルと同じくらい重要であり、育成する、あるいは成長という観点からは、同じ価値観、異なる価値観を持つ多くの人とのつながりを持つことが不可欠である。
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