前回、業務要素という考え方を紹介し、そのカテゴリーを示した。一言でいえば、業務の性格から学べることを標準化しようという発想である。今回はこの点についてもう少し、掘り下げてみたい。
◆業務要素
さて、前回示した5つのカテゴリー
・業務内容が変わる
・変化を作り出す
・重責を負う
・ステークホルダに対処する
・多様性に対処する
に対して、実際の業務要素にはどのようなものがあるのかを少しだけ紹介しておく。
たとえば、「業務内容が変わる」というカテゴリーの中には、「なじみの薄い業務を経験する」という業務要素がある。前回紹介した営業マンAさんの事例をもう一度、思い出してみてほしい。この事例は、キャリアの初期に経験したことが、キャリアの中で思わぬ意味を持ってくるという例として紹介した。この事例と似たようなケースで、Bさんのケースを紹介しよう。
◆Bさんの例
Bさん(当時34歳)は大手のメーカー系SI企業でプロジェクトマネジャーを中心に活動していた。プロジェクトの中で上流工程を担当しながらプロジェクトマネジメントも担当するというケースが多い。お客さんとの接点はプロジェクトマネジメントを担当する以前から多く、いわゆる「客あしらい」もうまく、仕様の落としどころがよいということで社内でも一定の評価を得ていたし、お客様からの評判も悪くなかった。
ある日、Bさんは事業部内のナレッジマネジメントのシステムの構築を命じられた。当初、自分のいつものチームで自社開発をしようとしたが、急な受注プロジェクトがあり、そのプロジェクトを担当することになり、ナレッジマネジメントのプロジェクトはSI言葉で言えば、外部に「丸投げ」することになった。正しくは「顧客(エンドユーザ)の立場」にプロジェクトにかかわることになった。
このプロジェクトの中で、Aさんは顧客としていろいろな経験をし、「自分でシステムに手出しのできない顧客とはこういう心境になるのか」ということがつくづくわかったという。
◆Bさんは何を学んだか
この話をハッピーエンドだと思ったあなたは甘い!
Bさんはこの後、顧客の評価は以前と比べて格段によくなったが、社内の評価が悪くなった。もともと、客あしらいをしていた折衝スキルを社内に向け始めた。そうすると、顧客ばかり大事にして、自社の利益を考えていないというマイナス評価をされるようになってきたのだ。これが、人材育成が戦略と結びついていなくては意味のない理由である。
ただし、Bさんはこの経験から確実に「顧客の立場」というのを学んでおり、「顧客重視」の戦略をとる企業にいけば、プロジェクトマネジャーとして活躍できるだろう(この後の話は、本人の希望があり、省略する。特定される可能性があるためだが、いずれにしても今は、ハッピーになっている)
◆業務要素から何が学べるか
上のBさんの例は、「顧客の立場でのプロジェクト管理」という「なじみの薄い業務経験」からいろいろなことを学んだという例だ。これをもう少し、分析的に考えると、なじみの薄い業務から学べることには以下のようなことがある。
・技術やビジネスに関する新しい知識を単時間で習得する方法
・情報が不十分である、すぐに条件が変わってしまう、ゴールの見通しが立たないといったプロジェクトに対処する方法
・入念に分析し、新しい方法を適用することにより、問題解決策を見出す方法
・厳しさと同時に思いやりを持つ、他者をリードする一方で他社にリードさせるといった、一見相反する行動をとる方法
・ステークホルダとの関係を構築し、維持する方法
などである。
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好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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