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第6回 プロジェクトマネジメントが内部統制を救う! (2007/10/16)

株式会社プロジェクトプロ 代表取締役  峯本 展夫


内部統制の要素とPMBOKの知識エリアとのマッピングにより、内部統制を考えるこのコラムも今回で最終回になる。まずは、前回のつづきで、内部統制の要素「モニタリング」について考える。

モニタリング
内部統制が有効に機能していることを継続的に評価するプロセス。



まず、内部統制では「モニタリング」、PMBOKでは「モニタリング&コントロール」である。内部統制は、原文ではインターナル・コントロールであるから、各要素もこの「コントロール」することを前提としているはずである。もっとも、このコラムでも何回も書いているように、インターナル・コントロールの「コントロール」は、マネジメントと解することができるような広い意義を持っている。狭義のコントロールを、ここで一緒にしてしまうと混乱するので、単に「モニタリング」としているとも考えられよう。

いずれにせよ、マネジメント・システムの中で「モニタリング&コントロール」をひとつのまとまった仕組みと機能させることが重要である。PDCAサイクルでいうところのCheckとActionに相当する肝となるプロセスである。

PMBOKでは、9つの全ての知識エリアが、この「モニタリング&コントロール」と関連する。つまり、9つの全ての知識エリアが、「モニタリング&コントロール」のプロセスを持っているということである。何気なく見過ごしてしまいがちであるが、これは重要なことである。「コスト」や「スケジュール」、「スコープ」、「品質」といったベースラインが明確に示され、これを基準にコントロールするプロセスだけではなく、「人的資源」や前回のコラムで取りあげた「コミュニケーション」といった要素にも「モニタリング&コントロール」を考慮する必要があるということである。「人的資源」では「プロジェクト・チームのマネジメント」、「コミュニケーション」では「実績報告」と「ステークホルダーのマネジメント」がこれに当たる。

もうずいぶん前に『日経ビジネス』の「内部統制」特別編集版に寄稿した時に、次のように書いた。

『内部統制は「マネジメントシステム(経営の仕組み)」そのものであることを、経営トップが認識し、取り組みの方針を出す必要がある。経営の仕組みを作るのであるから、ゴールの設定や仕組みのデザインに当たっては、財務の視点だけで単眼的に見るのではなく、「組織」や「ヒト」(社員)の視点で複眼的に見なければならない。』

(この記事は、現在も日経BP社のサイトNB Onlineで見れますので、ぜひご参照ください。
⇒[SOX法 最新IT経営術]【第7回】失敗しない内部統制 5つの鉄則
⇒[SOX法 最新IT経営術]【第8回】失敗しない内部統制 5つの鉄則
 )

財務の視点やコンプライアンスは、もちろん経営にとって重要なことであるが、もはやそれは前提とすべきものである。ましてや制約と考えるものではない。中長期的に組織を持続していくためには、何より人的資源やコミュニケーションの視点・観点をモニタリングの仕組みの中に取り入れなけれならない。PMBOKのようなフレームワークは、このことを教えてくれるものである。ただし、PMBOKガイドに定義されているプロセスだけを考えればいいかというとそうではない。日本人の悪い癖として、「教科書」の如くPMBOKガイドを扱うというものがある。少し考えればわかることであるが、特に人的資源やコミュニケーションに関連するプロセスがすべての組織やプロジェクトに完全に適合するようには定義できるわけがない。PMBOKガイドはあくまでも「ガイド」であって、それを基に経営者やマネージャーが必要な手立てを考えることが求められている。

確かに、PMBOKガイドの「人的資源」や「コミュニケーション」の知識エリアは貧弱にも見える。この2つの知識エリアは、プロジェクト・チーム・メンバーやステークホルダーといった「人」を対象にするものだが、むしろ「対象」は、プロジェクト組織図や要員マネジメント計画書、コミュニケーション・マネジメント計画書といった文書そのものである印象は否めない。つまり、これらの文書を作り、それらが明確化できれば良しとするアプローチに偏っている。しかし、『マネジメント・システムとは、そんなもの』とあきらめないで欲しい。また、『だからPMBOKは使えない』と切り捨て、自ら考える責任を放棄してしまうのも困りものだ。

プロジェクトにおいて人的資源マネジメントのマネジメントの対象は、「人のパフォーマンス」であり、「チームのパフォーマンス」である。

ここでの「パフォーマンス」は、結果的な意味合いになる「成果」とか「実績」と捉えてしまうと成果主義のようなマネジメントとなってしまうので、これは違う。「パフォーマンス」は、「能力、腕前、仕事ぶり」そして「その能力や腕前、仕事ぶりを表す具体的行動」を意味する。他の英語で言うと「(立ち居)振る舞い、行動、態度、挙動」などを表す「ビヘイビア(behavior)」と同義である。この意義を認識することは非常に重要である。「パフォーマンス」には「(機械などの)性能」という意味もあり、目に見える合理的な事柄を考えてしまうが、「ビヘイビア」になると「(機械の)調子」になり、「調子の悪い機械が叩いて直ってしまう」というような不合理性も含んでいる。もちろん「人」であれば、なおさら「行動に不合理性を含んでいる」のは自分のことを顧みればわかることだ。このように本来、プロジェクト人的資源マネジメントでは人間の行動特性としての不合理性までも対象にするべきである。例えば、「役割や責任」を合理的に明確化することは大事だが、非合理であっても一緒に仕事をする人どおしの相性などを無視していては、チームとしてのパフォーマンスに影響するのは必然である。

内部統制という、とにかく窮屈なイメージのあるシステムであるが、やはり「対象」の見極めが大切である。対象は単に「財務諸表」なのか。「財務諸表」などしか扱ったことのない連中に任せておけるのか。プロジェクトという「人のパフォーマンス」の現場を知っているプロジェクトマネージャーが、その仕組みを作るのに活躍できるのではないだろうか。性悪説に基づく内部統制が、従業員のモチベーションを極端に下げるという事態は『すでに起こった未来』である。「モニタリング」を「監視」とだけ捉えるとまさに会社が監獄と化す。

プロジェクトマネジメントの成熟度の高い組織では、プロジェクトマネージャーにより様々な観点での継続的な改善が行われている。プロジェクトマネジメントの体系的フレームワークや、PMOといった組織的な機能もそれを助け、益々その重要性が増している。プロジェクトマネジメントが、内部統制を救うのである。

著者紹介

峯本 展夫 (みねもと のぶお)
株式会社プロジェクトプロ 代表取締役 / エグゼクティブ・コンサルタント

1963年 : 大阪生まれ
1989年 : 大阪大学工学部卒業後、大手信託銀行に入社

第3次オンラインシステム開発など、約12年間銀行における情報システムのプロジェクトに参画。邦銀初となるイントラネット・システムを立ち上げるなど、多くのプロジェクトを成功させる。
その後、コンサルティング業界に身を投じ、フリーのプロジェクトマネジャーおよびコンサルタントとして活動する。活動の中で、国内におけるプロジェクトマネジメント成熟度のレベルに問題意識を持ち、プロジェクトマネジメントに特化した企業変革コンサルティングとトレーニングをおこなうプロジェクトプロを設立する。

PMP (米国PMI 認定プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル)
CISA (米国ISACA公認情報システム監査人)
東京大学非常勤講師 (大学院MOT : 環境ビジネス論 プロジェクトマネジメント担当)

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