第39話:コンセプチュアルなQC活動(2017.11.27)
◆QC活動の概要
QC(Quality Control)活動はさまざまな企業で行われています。ある意味で、日本の製造業の成長を支えてきた活動でもあります。QC活動は、同じ職場内で品質管理活動を、自発的に、QCサークルと呼ばれる小集団で行う活動ですが、基本的には
・人間の能力を発揮し、無限の可能性を引き出すこと
・人間性を尊重して、生きがいのある明るい職場をつくること
・企業の体質改善・発展に寄与すること
の3つを目的とすることが多いとされます。特に高度成長期の日本企業においては、三番目の体質改善に大きな成果があったと評価されることが多いようです。
◆QCからTQCへ
当初生産部門の活動として行われてきましたが、やがて、TQC(Total Quality Control)に発展していきます。TQC活動は、生産部門以外の設計部門、購買部門、営業部門、マーケティング部門、アフターサービス部門などにQC活動を適用し、体系化したものです。
TQC活動では、ある製品を企画設計する段階から、製造販売そしてアフターサービスまでの全プロセスで総合的に品質管理を行うことが目的となります。このため、TQC活動では作業プロセスや、各工程における品質への取り組みの規定などを改善していくことに主眼を置いた改善活動が中心になっています。
このようにTQC活動は企業の一部門だけが取り組むのではなく、部門横断的に企業全員(経営者、管理者、監督者、作業者)が取り組むことになります。このような形態のQC活動を行う集団は、QCチームと呼ばれることがあります。
TQCという形への発展と同時に、サービス業など製造業以外の業種へのQCの活動も行われるようになってきました。
◆QCは目の前の問題を解決する
QC活動の概要は以上のようなものですが、QC活動は目の前の問題を改善によって解決していくことを基本にしています。
問題は一つを解決すると新たに見えてくる問題があるのが普通です。よく改善を積み重ねるという言い方をしますが、積む重ねによってこのように見えない問題を見える化し、問題をなくしていくというアプローチだと考えることができます。
◆QCでは見えてこない問題<
ただ、このようなアプローチでは、見えてこない問題があるのも事実です。特に、TQCで扱う、部門間の問題にはそのような問題がよくあります。
例えば、製品品質の不具合があってに顧客が満足していないという問題(課題)があったとします。こういった状況では、不満足の根源になっているのは製品の品質の問題なのか、製品の仕様の問題なのか、サポートの問題なのかよくわからないことがあります。
品質の問題が起こっていることは事実です。これは見える問題です。ところが、他にも見えない問題として、製品の品質問題はきっかけになっただけで
(1)機能や性能に満足していない
(2)サポートに満足していない
といった問題かもしれまん。このくらいの範囲であれば、顧客満足度調査で分かっている(見える化されている)かもしれませんし、品質問題を解決すれば見える化できる可能性もあります。
ひょっとすると
(3)製品ブランドを好んでいない
(4)製品を提供している会社が嫌いだ
といった問題かもしれませんが、これだとほとんど見える化できることは期待できません。前者なら企画に問題があるのでしょうし、後者なら企業イメージに問題があるのかもしれませんが、具体的にどういう問題かということを明確にするのは至難の業です。
◆TQCの限界
このように(1)〜(4)のような問題は、起こった問題だけを一生懸命解決していっても見えてきませんし、解決できません。言い換えると見えない問題を解決しなくては広い意味での品質問題が解決できないことがTQC活動の限界を生み出しています。
この限界は、生産現場における品質改善を目的としたQCでは、ハードウエア的な問題を解決することがメインになりますので、あまり目立つこちはありません。しかし、TQCになり、部門間の問題を解決しなくてはならないくなったり、非製造業で起こる問題の場合にはソフトウエア的な問題が中心になることが多く、この種の見えない問題の解決が重要になります。
◆ソフトウエア的な問題解決にはコンセプチュアルスキルが不可欠
これからのTQC活動を有効に活用していくためには、このようなソフトウエア的問題を解決していくことが不可避ですが、そのためには見えない問題を見通して解決していく問題解決が不可欠になります。ソフトウエア的な問題の場合には、上の顧客満足が悪いという例で述べたように、非常に多くの可能性があります。そこで、最も重要になるのは
起こりうる問題を全体的に推察して、その中から本質的な問題を見出すこと
です。これは、コンセプチュアルスキル、コンセプチュアルな問題解決に他なりません。
QC活動は企業の競争力にとって非常に本質的な活動です。これは単に品質の高い製品やサービスを顧客に提供するだけではなく、
・広く製品やサービスを知らしめる
・顧客を満足させる
などを目的とする活動をライフサイクル全体で行い、改善していくことのよって達成できるからです。ただしそのためのは、いろいろな部門や時間で起こっている問題を統合し、問題解決をしていくような活動、つまり、コンセプチュアルなQC活動である必要があります。
そんなQC活動にして行くことによって、停滞しているQCやTQC活動を再び、効果のあるものにすることができるでしょう。
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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