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アジャイル開発マネジメントからアジャイルプロジェクトマネジメントへ

第1回 開発マネジメントとプロジェクトマネジメント(2011/06/18)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆開発マネジメントからプロジェクトマネジメントへ

1990年代後半から2000年代前半にかけて、ウォーターフォール型の開発マネジメントがプロジェクトマネジメントに発展したように、2000年代後半から、2010年代前半にかけて、アジャイル型の開発マネジメントはアジャイルプロジェクトマネジメントに発展していくだろう。アジャイルプロジェクトマネジメントは、今、やっとドミナントデザインが確立されたような時期で、いくつかの方法の代表的な方法が考案されている。

開発マネジメントがプロジェクトマネジメントに進化をした理由は、「戦略価値」の追求と安定性である。より、戦略に貢献できる成果を、より安定的に生み出すためには、開発マネジメントだけでは不十分だった。

なぜ、不安定になってきたのだろうか。理由は戦略の高度化によって、戦略実行のプロジェクトが大規模化、複雑化したためである。このため、開発は安定したスケジュールでできなくなってきた。それに伴って、品質が不安定になり、結果としてコストが暴れるという現象が起こるようになってきた。

そこで、プロジェクトマネジメントによって安定したスケジュールを取り戻し、品質を安定させ、コストを予算内に収めようとした。そのためのヒーローは、リスクマネジメントと、コミュニケーションマネジメント、および、統合変更管理(統合マネジメント)である。


◆アジャイルの構図
アジャイルにも同じような構図がある。アジャイル開発がアジャイルプロジェクトマネジメントに進化すると思われる理由は、「顧客価値」の追求と安定性である。戦略価値の追求と、顧客価値の追求の違いが、プロジェクトマネジメントとアジャイルプロジェクトマネジメントの違いだといってもよい。一方で、安定性を求める点では、同じだ。

アジャイル開発が不安定になってきた理由は、顧客価値の高度化を背景にした顧客要求の複雑化したことだ。結果として、アジャイルにも、構造的・体系的に開発を進めていく必要が生じた。実は、この道は、ラピッドプロトタイピングが通ってきた道でもあった。違う点は、プロトタイピングは開発手法を複雑性に対応しようとした。しかし、アジャイル開発にプロジェクト管理の要素を取り入れればよいと考えた。そして、アジャイル開発に「バリュードリブン」と「ライフサイクル」を導入した。これがアジャイルプロジェクトマネジメントである。

このように考えてみると、アジャイルプロジェクトマネジメントに対するニーズは2つある。一つは、アジャイル開発を「安定化」させることである。もう一つは、(戦略的)プロジェクトマネジメントを顧客中心に変化させることである。

この連載で議論したいのは、主に後者の視点であるが、必要に応じて前者の視点からも議論をする。


◆アジャイルはリードタイム短縮とイコールではない

イントロダクションの最後に、アジャイルという言葉の意味に触れておきたい。よく知られているように、アジャイルは「機敏な」、「すばやい」という意味の英語である。この言葉と、ラピッドやスピーディーという言葉は異なることに注意をしておいてほしい。アジャイルは機敏であることであって、迅速ではない。つまり、アジャイルプロジェクトマネジメントは必ずしも、プロジェクトのリードタイムを短縮することは目的としないことだ。

アジャイルが議論される中で、短納期化という効果が言われることが多い。しかし、これは、納期そのものが短くなることではなく、延期と投機の議論である。アジャイルは基本的には延期のプロジェクトマネジメントである。

そして、延期戦略をとることによって、結果として納期が短くなることは珍しいことではない。この議論はこの連載の中で別途したいと思っているが、今のところは、こちらの記事を参考にしておいてほしい。

プロジェクトの補助線「延期戦略のプロジェクトマネジメント」

第148回(2007.06.19) 「プロジェクトにおける延期と投機」

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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