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番外編 「PMstyle」は7つの「PM」で両利きの経営を目指す(2021/01/25)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆「PMstyle」の7つの「PM」

2004年に立ち上げたブランド「PMstyle」の会員制メールマガジン「PMstyle+」の発行を始めて15年になります。その主連載として継続している「PMスタイル考」も170回を数えます。

PMstyleでは今年から新しい分野を本格的にはじめるに当たって、そもそも、「PMstyle」とは何かという話をしておきたいと考え、この記事を書きました。

本連載「PMスタイル考」のPMをプロジェクトマネジメントだと思っている人は少なくないのではないかと思います。連載開始当時は、「話の範囲が広すぎる」とか、「もっとプロジェクトマネジメントの話を集中的にして欲しい」という意見を頂くことも多くありました。

実は、PMstyleを始めたときに「PM」に託した意味は実はプロジェクトマネジメントだけではありませんでした。実は、「PMstyle」の「PM」というのは以下の7つの総称なのです。

 Purpose Management
 Portfolio Management
 Product Management
 Program Management
 Project Management
 Process Management
 People Management

「PMstyle」を立ち上げるときに、事業を成功させるために必要なマネジメントは何かという議論を行ないました。ブレーンストーミングでは50個くらいの要素が出てきて、その中から本当に必要なものを絞り、最終的にプロジェクトの「P」にこだわり、整理したのがこの7つの「PM」だったのです。
「PMstyle」では、この7つのマネジメントエクセレンス(優秀さ)が事業を成功させると考えています。

時々、「PMstyleって何ですか」と訊かれてこの説明することがあるのですが、違和感があるという意見が多いのは、ビジョン、戦略、オペレーション、パフォーマンスが入っていないことです。当然、これらのマネジメントエクセレンスは事業の成功にとって不可欠なものですが、これは上の7つの中に以下の形で含めています。

ビジョン → パーパスに含まれる
戦略 → ポートフォリオに含まれる
オペレーション → プロジェクト、プロセスに含まれる
パフォーマンス → プロセスに含まれる

という整理をしているのです。

最近ではこれらに加えてシナリオをどう位置付けているのかという質問を受けることもありますし、また、組織文化をどう扱うのかという質問を受けることもありますが、これらは上の7つの「PM」を統合したものだと考えており、7つの軸を変えるには至っていません。


◆最後に残ったパーパスマネジメント

ということで、「PMstyle」では、この7つのマネジメントエクセレンスに関するサービスを提供してきました。もちろん、一斉に提供を始めたわけではなく、徐々に範囲を広げていきました。

このような中で、最後まで残っていたのがパーパスマネジメントでした。2〜3年前から情報発信ははじめていますが、今年から本格的に取り組もうと考えています。これが冒頭に述べた新しい分野で、7つの分野すべてでサービスを提供することになります。


◆なぜ、VUCAの世界ではパーパスマネジメントなのか

パーパスマネジメントとは、会社のパーパス(存在意義) をすべての起点として、それに沿った形での戦略立案や意思決定、社内外向けの施策を実行していくことです。その中で、プロジェクトや業務においては、パーパスから落とし込まれた目的が設定され、その目的の実現をしていきます。

このようなマネジメントが必要になっている背景には、VUCAがあります。

不確実性の小さい世界では、業務やプロジェクトの目的はあまり考える必要がありませんでした。目標と目標達成の計画を作れば、リスクはあっても計画を実行すれば目標を達成でき、それは成果に直結します。つまり、目標を達成することを目的として考えていればいいのです。

これは定常業務に較べると不確実性が高いプロジェクトでも同様でした。

例えば、ある製品を開発する際に、市場や顧客が求めるものが変わるといった不確実性はありますが、それは製品のスペックを変更すれば済む対応できるものであり、そのカテゴリーの製品を提供するという事業そのものを変えなくては対応できないような状況は滅多にありませんでした。簡単にいえば、その不確実性は現場のオペレーションに影響を与えるもので、経営に影響を与えるものではなかったわけです。

ところがVUCAな世界では、事情が変わってきました。不確実性が大きく、頻繁になるため、経営に影響が生じるためです。言い換えると、現場の不確実性の源泉が経営環境の変動にあるのです。


◆VUCAの時代で起こっていることの例

一つの例としてホームユースのパソコンを考えてみて下さい。コロナ以前にはパソコンはSNSに普及によって、急激にスマートフォンに置き換わって、どんなにすぐれた機能を提供しても、市場の衰退が止まらない状況でした。

それが、コロナで在宅で勤務し、オンラインでコミュニケーションするようになり、一挙に状況が変わりました。多くの人がオンライン環境としてパソコンを新しく購入しようとしたためですが、このような変動に対して、大手のパソコンメーカでも納入が3〜5ヵ月かかというった状況に陥っている企業があります。ホームユースのパソコンの提供の目的として顧客満足を目的としし、販売台数(収益)を目標を設定していたため、不確実性が大きくなる中で目標の達成をすればよいと考えていたため、顧客満足という目的の実現が出来なくなっているわけです。

一般的に言えば、環境が変われば、目標を達成してもそれによって目的を実現し、成果を得られるとは限りません。パソコンの例のように、いくら販売目標を達成できても、販売予想を前提としている目標である限り、目的が実現できるとは限りません。もちろん、目標をアップしているメーカもあるようですが、設備投資を控え、目標をそのままにしているメーカは大幅に納入遅れを出して、顧客満足が実現できていません。


◆VUCAの時代に対応するには

この問題を解消するためには、常に、この仕事(オペレーション)の目的は何かということを考えながら、環境の変動に合わせて、目標を変更していく必要があります。

例えば、パソコンでいえば、ホームワークに適するよう通信機能を高くしたパソコンを1ヵ月に〇〇台提供するという目標に変更し、達成するだけでは、状況は変わりません。そこで、パソコンを提供するための目的は何かというところに立ち返って考えてみる必要があります。

目的が顧客満足を得ることであれば、例えばオンラインコミュニケーションを簡単に行うことのできるプラットホームを提供することを目標とし、そういうデジタル機器の提供に切り替え、これによって、パソコンよりは簡単に組み立てることができ、出荷台数を増やすといったことをする必要があるのです。


◆VUCA時代のマネジメントに必要とされる「統合」

このようにVUCA時代のマネジメントでは、パーパスを明確にし、それをプロジェクトの目的、プロダクトの開発目的、プロセスの目的に落とし込む。一方で大局的には、事業規模や売上げを計画通り確保していくために、ポートフォリオマネジメントを精緻化する。さらに長期的には、VUCAに対応できるマインドやビジネススキルを持つ人材を育成するといった統合的なマネジメントが不可欠です。

この統合の方法として、PMstyleでは「両利きの経営」が適していると考えています。

両利きの経営とは、

「探索」:自社の既存の認知の範囲を超えて、遠くに認知を広げていこうという行為
「深化」:探索を通じて試したことの中から成功しそうなものを見極めて、磨き込んでいく活動

の2つの活動をバランスを取りながら両立させながら進めていくことです。両立の源泉にあるのは、パーパスであり、そのためにはパーパスと両方の事業を整合させるための組織文化が必要です。


◆経営の視点と現場の視点を統合して、経営レベルのリスクを取る

PMstyleの7番目の「PM」であるパーパスマネジメントは、基本的には両利きの経営を目指す企業のために活用する方法を提案します。そのための具体的な方法はプロジェクトを本来の位置づけに戻すことです。

本来、プロジェクトは新規性の高い業務を実施するためのものでした。そして、繰り返し行い、やり方の安定した業務は定常業務として深化させながら、製品の機能改善や品質改善により競争力を保ち、またプロセス改善によりコストを削減して、トータルで収益性を大きくしていきます。

ここで注意しておく必要があるので、従来のプロジェクトの新規性はオペレーションとしての新規性であり、経営的にリスクが案件は見送るというのがプロジェクトマネジメントの正しい判断です。

これはプロジェクトをオペレーションとして見做しているためですが、VUCA時代には経営とオペレーションが直結して迅速に変更が行われる必要があります。つまり、現場で経営環境の変動に経営的な影響も考えて対応する必要があります。これをいわゆるオペレーションマネジメントとしてのプロジェクトマネジメントで行うことは困難です。これが日本ではイノベーションが生まれない一因にもなっています。

そこで、オペレーションのリスクしかないプロジェクトは定常業務の一部として考えます。その中で、プロジェクトマネジメントはできる限りリスクを削減するといういう方向に深化させ、収益率を高めていきます。これは今、普通に行っていることです。

その一方で、探索を目指す活動、つまりイノベーションを経営レベルのリスクを取れるプロジェクトとして行うようにしていく制度変革をしていきます。そして、新しい組織文化を構築し、新しい行動様式を作り、チャレンジしていきます。

そのような両利きのマネジメントを7Pフレームワークを使って取り組んでいく予定です。

◆関連するセミナーを開催します◆
━【開催概要】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ◆コンセプチュアルなプロジェクトマネジメントのポイント   ◆7PDU's 
   日時・場所:【Zoom】2024年 05月 23日(木)9:30-17:30(9:20入室可)
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        ※ナイトセミナーは、2日間です
        ※ハーフセミナー、ナイトセミナーは、事前学習が3時間あります。
       ※少人数、双方向にて、演習、ディスカッションを行います 
  講師:鈴木道代(プロジェクトマネジメントオフィス,PMP,PMS)
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  主催 プロジェクトマネジメントオフィス、PMAJ共催
 ※Youtube関連動画「コンセプチュアルスキルとは(前半)」「コンセプチュアルスキルで行動が変わる
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  【カリキュラム】                     
   1.VUCA時代に必要なコンセプチュアルなプロジェクトマネジメント
   2.プロジェクトへの要求の本質を反映したコンセプトを創る
   3.コンセプトを実現する目的と目標の決定
   4.本質的な目標を優先する計画
   5.プロジェクトマネジメント計画を活用した柔軟なプロジェクト運営
   6.トラブルの本質を見極め、対応する
   7.経験を活かしてプロジェクトを成功させる
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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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