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第1話:プロジェクトデザイン(2009.10.13)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆プロジェクトデザインとは

第1話のテーマは「プロジェクトのデザイン」です。

プロジェクトのデザインというのは耳慣れない言葉かもしれませんが、大切な概念です。プロジェクトのデザインとは

プロジェクトで何を(広い意味での)顧客に提供したいかを明確にし、その方法の概略を決めること

です。簡単にいえば、プロジェクトの土台作りです。


◆プロジェクトデザインの留意点

プロジェクトのデザインにあたって、留意すべきことが3点あります。

(1)プロジェクトの成果物(プロダクト)とプロジェクト成果の関係(目的)
(2)不確実さへの対処(シナリオ)
(3)プロジェクト環境の設定(条件)

の3つです。

(1)は成果物と成果は違うということです。成果物は、システムであったり、商品であったりします。プロダクトと呼ばれるものです。一般には、これがプロジェクトの成果のすべてにはなりません。プロジェクトの成果は、プロダクトを通じて顧客や自組織に提供するもの、あるいは、プロダクトの開発を通じて自組織に提供するものといったケースがほとんどです。例えば、開発した商品でユーザに対して利便性(ベネフィット)を提供できた、開発した商品で自社シェアの拡大をもたらしたといったことです。

(2)はプロジェクトのデザインは、複数の選択肢を考えておく必要があるということです。プロジェクトのプロジェクトたる所以は、不確実性です。成果物の達成手段は計画で検討され、不確実性はリスクマネジメント計画として扱われます。しかし、成果達成の手段の不確実性は計画レベルでは扱うことができませんので、あらかじめデザインの段階で複数案を検討しておく必要があります。例えば、現有の自社技術では対応できない商品ラインナップを増やすという「成果」が期待される中で、商品を一から開発するのか、既存部品の組み立てで対応するのか、OEM提供先を探すのかといった選択肢は、デザインの中でそれぞれ、どのような展開が考えられるかを検討しておき、その上で、もっとも優先するアプローチを決める必要があります。

(3)はプロジェクトを実施する条件です。特に、選択したアプローチを実施する際には、どのようなことが「前提」になっているのかを明確にする必要があります。これは、(2)でどのアプローチをするかを決める際にたいへん重要なファクターになってきます。

◆プロジェクトデザインをしないプロジェクトは基礎工事をしない建物

このようなプロジェクトのデザインは構想計画と呼ばれることもありますが、プロジェクトの計画の土台になるものです。いくら完璧な計画を作っても、土台がしっかりとしていなければどこかで崩れてしまいます。また、計画変更を要するトラブルが生じたら、あっという間に崩壊してしまいます。

プロジェクト計画の充実に力を入れることは重要ですが、計画の基礎工事であるプロジェクトデザインに力を入れていくことが、特に大規模で不確実性の大きいプロジェクトでは求められます。
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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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