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【PMOコラム38】PMOが標準を提示する意味(2007.12.03)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


何のために標準化するのか

前回、問題提起だけしたが、みなさんの結論は出ただろうか?

前回述べたように、標準とは、メソドロジーが適切に適用されるためのルールである。目的とは、なぜ、わざわざ、そのようなルールを作りたいのか?という問題に他ならない。

論理的な答えは簡単だ。標準を作る目的は

 組織としてプロジェクトの成功を予測すること

に他ならない。標準は、組織としてのプロジェクトマネジメントの共通的なアプローチであり、メトリクスとして指標化されたり、あるいはマネジメントプロセスとして具体化され、それが標準としてドキュメント化される。

つまり、標準として決められたメトリクスを守り、決められたプロセス通りにメソドロジーを実施すれば、プロジェクトの成功は保証されるというのが標準なのだ。


◆PMOが標準を提示する意味

もっと正確にいえば、プロジェクトマネジメントの標準はプロジェクトの成功を保証するわけではなく、プロジェクトマネジメントの成功を保証するだけだ。そして、プロジェクトマネジメントの成功がプロジェクトの成功を生み出す。この因果関係が成り立つためには、メソドロジーが正しい(妥当な)ものであることが必要である。

たとえば、PMOが標準を示すということは、PMOとしてその通りにやればプロジェクトの成功を保証することに他ならない。それができるから、プロジェクトマネジメントのオーナーシップを持ちうるのだ。

しかし、現実にそう言われてみてももう一つピンとこないだろう。というよりも、プロジェクトを確実に成功させる方法などないとみんなが思っているといった方がよいかもしれない。では、何が適切ではないのか?メソドロジーなのか、標準なのか?


◆PMBOK(R)の価値

ここでPMBOK(R)を導入することの意味が出てくる。PMBOK(R)は膨大なプラクティス集である。つまり、うまくいったプロジェクトでやっているプロジェクトマネジメントのやり方を、9つの知識領域に分けて、プロセスとプロセスを実行するための手法ということで整理したのがPMBOK(R)である。

ということは、常識的に考えて、メソドロジーには問題はないと考えられる。現に、そう考えるからPMBOK(R)を導入しているともいえる。ということは、うまくいかないとすれば、それは標準の問題だということになり、ついては、PMBOK(R)を導入することは、導入先の組織のプロジェクトの特性に合わせて、PMBOK(R)に適用に当たって標準を策定するという作業を行うことを意味する。


◆現実的な標準化の考え方

実は、これがなかなかできない。つまり、メソドロジーを導入するのは簡単である。しかし、標準を策定するのは至難の技である。

そこで、よく行われるのが、アカウンタビリティというよりも、透明性、可視性を高めるために共通的なアプローチを決めるという方法である。この方法は、プロジェクトや問題を可視化することによって、PMOや上司組織、あるいは組織全体が知恵を集結することによってプロジェクトをうまく進めていこうという発想に基づいている。
このようなアプローチを標準とみなすべきかどうかは別にして、

 組織が常にプロジェクトにかかわっておくことにより、成功を予測できる

といえ、標準の目的を達成するひとつの考え方であることは確かだ。



◆なぜ、標準に対する抵抗があるのか

最後にこの問題について一言触れておきたい。ここまでの議論ではっきりしたと思う。

その標準通りにやったときに、プロジェクトが成功するということが保証されていないからだ。

ただし、プロジェクトマネジメントがマネジメントである以上、万人が納得するメソドロジーなり、標準を発見するのは難しいだろう。

そうすると、標準化のプロセスそのものについて考えなおす必要がある。それが、プロジェクトマネジメントの成熟度を上げることにもなっていく。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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