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【PMOコラム6】プロジェクトマネジメントの成熟とは(2006.07.11)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆はじめに

PMOリーダー養成講座の第3回はプロジェクトマネジメントの成熟度に関するセッションです。

セッション3 PMナレッジマネジメントと組織成熟度の向上(2006年07月20日) 
   ⇒現在は実施しておりません

そこで、今回は、プロジェクトマネジメントの成熟に関するコラムをお届けします。


◆プロジェクトマネジメント能力

プロジェクトマネジメントの組織成熟度の議論というのは、プロジェクトマネジメント全般に渡す話ですが、その中でもとりわけ重要なのが、リスクマネジメントとプログラム統合マネジメント(マルチプロジェクト統合マネジメント)だと思われます。

まず、最初に「成熟度」の向上というのはどういうメカニズムにで起こるかを考えてみたいと思います。プロジェクトマネジメント能力を持つのは3つあります。プロジェクトマネジャー、プロジェクトチーム、そして、組織です。PMI(R)方式のプロジェクトマネジメントでは

 プロジェクトマネジャー PMCDF(PMコンピテンシー)
 組織、チーム OPM3

で成熟度を向上させるようになっています。


◆プロジェクトマネジメントを成熟させるスパイラルメカニズム

ここで、注意しなくてはならないことは、プロジェクトマネジャーのPMコンピテンシーの向上、チームのPM能力の向上、組織のPM能力の向上は互いに深く関係していることです。

まず、組織の能力向上から考えて見ましょう。組織の能力が向上するために、さまざまなツールやテンプレートを作り、メトリクスを設定し、パフォーマンス評価をすることで、ノウハウが蓄積されていきます。

一方でプロジェクトマネジャーはトレーニングで最低限の知識やスキルを身につけます。これだけですと、プロジェクトマネジメントを実行するには四苦八苦するのですが、組織として準備されたツールやノウハウ、テンプレートなどの資産を活用することによって、スムーズにプロジェクトマネジメントを実行することができます。特に、キャリアの浅いプロジェクトマネジャーの場合ですと、自分の実力以上のプロジェクトマネジメントを行うことも可能になります。

と、同時に、プロジェクトマネジャーはこれらのツールを使ってプロジェクトをマネジメントする中で、成功や、トラブルの経験をします。これらの経験を通じて、さらにノウハウが蓄積され、また、ツールの改善がなされます。

ツールが改善されれば、プロジェクトマネジャーもより強力な武装をすることになり、対応できるプロジェクトの範囲も広がってきます。

このような一連の流れとは別の流れとして、プロジェクトマネジャーのPMコンピテンシーの開発をすることがあります。これはプロジェクトマネジメントに限らず、いろいろな経験をしたり、あるいはものの見方、考え方のトレーニングをするといった中で開発されていきます。

PMコンピテンシーが開発されていくことによって、ツールの使い方が変わってきます。より適切に使えるようになります。言い換えますと、ツールがより効果的に使えるようになるわけです。また、ツールに対するフィードバック、ノウハウの蓄積に対してもポジティブな影響を与えることはいうまでもありません。


◆チームからのビュー

この際のもう一つの視点はチームです。プロジェクトはどちらかというと既にある「タレント」の行動を引き出し、成果を生み出していくイメージが強いですが、マネジメント一つの視点に「育成」という視点もあります。これは主にチームワークを芽生えさせ、チーム力を向上させるという視点が中心になるわけですが、この中にはマネジメント的な要素が含まれるものもあります。プロジェクトマネジメントにはメンバーが中心になって進めていくものがあるためですが、その代表はリスクマネジメントです。計画としての取りまとめはプロジェクトマネジャーの役割ですが、実際にリスクを識別したり、あるいは、モニタリングをするというのはメンバー一人ひとりの役割になります。このようなメンバーのリスクマネジメントの能力を向上させることは、チーム育成の重要な部分です。リスク以外にも、スケジュールマネジメント、品質マネジメントなどはメンバーに権限委譲をし、メンバーが中心になって取り組んでいく必要があります。


◆複数のプロジェクトの調整

以上が、単一のプロジェクトで見た場合の話ですが、組織の成熟度を考える際に忘れてはならないのは、複数のプロジェクトの調整能力です。例えば、複数のプロジェクト間におけるリソースの調整、複数のプロジェクトのスケジュール調整などです。マルチプロジェクトマネジメントの能力ということになりますが、組織の成熟度を上げる場合には、この視点が重要になってくる組織もあります。PMI(R)では、マルチプロジェクトマネジメントの方式をまずは複数のプロジェクトを束ねる「プログラムマネジメント」、そして、プログラムを束ねるポートフォリオをマネジメントする「ポートフォリオマネジメント」と位置づけています。

この体系化の進展具合と、マネジメント改善の4レベル(標準化→測定→コントロール→継続的改善)の組み合わせで成熟度を表現しようとしています。マネジメントレベルは単一のプロジェクトに対するプロジェクトマネジメントのレベルをあらわし、複数のプロジェクトのマネジメントの体系化の度合いを表しているわけです。

つまり、組織におけるプロジェクトマネジメントの成熟度の向上は、個々のプロジェクトのマネジメントが改善され、同時に、複数プロジェクトの捉え方が適切になることを意味しています。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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