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第17回 戦略的PMOの標準化への取り組み(1)~メソドロジーを理解する(2006.08.28)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


前回までは概論であったが、今回からは戦略的PMOの具体的な活動について考えていく。まず、最初のテーマは標準化である。

◆はじめに
プロジェクトマネジャー養成マガジンの読者の方は記憶があるかもしれないが、読者アンケートとして、

プロジェクトマネジメントプロセスの標準化は必要か?

というテーマでアンケートをとったことがある。結果は

こちら

に示すようになった。これから分かるように、標準プロセスの必要性や意味というのは人や組織によってまちまちである。

アンケートに応じてくださった方には申し訳ないが、この結果は、誤解に立脚している部分があるのではないかと思う。何を誤解しているかというと、標準化の対象になるメソドロジー(方法論)を非常に狭く捉えているように思う。メソドロジーが何かを正しく捉えていれば、おそらく、ベテランになるとプロジェクトマネジメント標準の必要性は余りなくなるというのは、5人に4人は答えが代わるのではないかと思う。

◆メソドロジーとは何か
そこで、最初にメソドロジーとは何かを定義しておく。メソドロジーという言葉は一部のIT系の組織を除くとなじみにくい言葉だと思うが、ここは標準化の議論をするときに基本になるので、ぜひ、理解しておいてほしい。

メソドロジーを一言でいえば、

あるコンセプトに基づいて、複数の手法、規則、ノウハウ(プラクティス)等を相互に関連づけて進めるプロセス

ということになる。

これではあまりピンとこないかもしれない。この定義のポイントは3つある。一つ目はコンセプトに基づいていること。例えば、PMBOK(R)を例に取ると、いくつかのコンセプトがありそうな気がするがやはり「プロアクティブなプロジェクトマネジメント(の実現)」であろう。その方向に向かって、必要なものが標準として選ばれている。第4版では400ページもの大作になったが、決して、何も考えずに手当たり次第知識体系の中に入れているわけではない。

2つ目は表現の多様性である。手法(理論)として表現されているものもあれば、ルールもある。ノウハウもある。要するにコンセプトを具現化するために必要なものを手法だとか、プロセスだとか、単一の様式で表現するのは難しいということだ。


◆メソドロジーはセットで使って初めて意味がある

そして、3つ目が相互関係があり、ばらばらに使ってみても意味がないことだ。例えば、PMBOK(R)の中で、「面白そう」、「便利そう」といった理由でWBSだけを使うといってもあまり意味がない。混乱するだけで終わるのがオチだ。なぜか。WBSはスコープ記述書、スコープ定義の手法などと関連付けながら使うことが想定されており、WBSだけを取り出すと、言葉が独り歩きした分かったような分からないようなスコープ定義になり、もう少し詳細な計画に落としていく際に混乱することが多いのだ。すべてがそうである。

これは、いろいろな手法やルール、プラクティスは、方法論として体系的に使わないと意味がないことを意味している。このようにいうと、使えるところを使えばよいのではないかという反論がある人もあるだろう。これはその通り。この点にはまったく異存はない。

PMBOK(R)と同じコンセプトを実現するために、あらゆる組織でPMBOK(R)の全てが必要だとは思えないからだ。

あるいは、PMBOK(R)とは異なるコンセプトに対して、PMBOKの一部を使うことだってありうる。現にPMBOK(R)の拡張の源泉はこのような使い方である。PMBOK(R)はこのような使い方を新たな標準として取り込み、成長している。


◆メソドロジーの要素

では、メソドロジーにはどのような要素があるのか?
 ・プロセス
 ・手法
 ・手続き
 ・ルール
 ・プラクティス
の5つである。

プロジェクトマネジメントプロセスとは、立ち上げ、計画、実行、統制、終結などに対して、自社のニーズに合わせてのテーラリングされたプロセスのことをいう。これには、プロジェクトプロセスだけではなく、アクティビティ、タスクとタスク間の関を含むこともある。

手法はWBSやスコープマネジメント、リスクマネジメントなど、いわゆるプロジェクトマネジメント手法である。

手続きやルールはガイドラインやチェックリストとして実現する。ガイドラインで一般的に設定されるものには、以下のようなものがある。
・プロジェクトカテゴリーに対するガイドライン
・プロジェクトチームの編成に関するガイドライン
・プロジェクトスポンサーからの支援の洗い出しに関するガイドライン
・ステアリングコミッティのメンバー決定と責任決定のためのガイドライン
・プロジェクトポートフォリオ選定、優先順位付け、および、プロジェクト中止に関するガイドライン
・メソドロジーのプロジェクトへの適用に関するガイドライン


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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